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使い魔は使い魔使い  作者: 壱弐参


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快進撃

 純太と雫の拍手がおさまる頃、俺はもたれかかる嵐山を塚本講師に任せた。

 だが、講師である塚本すら、俺への奇異の目をやめる事はなかった。

 確かにそうだろう。使用したのは拳力(マーシャルクラフト)。しかし、その存在を知る者は少ない。

 この超人的な動きについて、見る者は皆全原会長と同じく、剣士の力。剣力(イスパーダクラフト)だと思うだろう。

 他士族の力を使った召喚士学校の生徒。それを見て同学年、いや、召喚士学校全員の視線が変わると言ってもいい。


「今の……やっぱりアレだよな?」

「召喚なしの徒手格闘で倒すとか、聞いた事ないぜ?」

「あぁ、この学校ではな(、、、、、、、)……」


 蔑視ともとれる冷たい視線が両サイドから突き刺さるようだ。

 皆が行く道は王道だが、俺の道は邪道も邪道。召喚力(サモンクラフト)も、魔法力(マギクラフト)拳力(マーシャルクラフト)も使うんだからな。

 あ、そういえばまだ魔法力(マギクラフト)は見せてないんだった。もう一回こんな視線たちを浴びなければいけないのか。

 ……うぅ、いやいや。メンタルも鍛えられると思えばいい。

 今までの方がよっぽど辛かったんだ。力を扱えるようになったのなら、それは有効に使うべきだ。


「よーよー! すげぇじゃねぇか! あの叫んでたの? 拳力(マーシャルクラフト)だっけ? あんなの俺テレビでしか見た事ねぇよ!」


 どうやら純太は珍しい考えをお持ちのようだ。

 いや、そもそもそういった分け隔てなさがない限り、俺とつるんだりするはずもないか。

 そしてそれは――――、


「すっごいです! ずんって鳴って、どんって入りました!」


 やたら大袈裟なジェスチャーで俺と嵐山の試合を再現しようとする雫も、一緒って事だよな。


「ヘイ!」


 そして聞き慣れない声が俺の背中を叩く。

 振り返るとそこには、あのジェシー・コリンズが立っていた。


「ナイスファイト、風土ー!」

「あ、あぁありがとう」

「あぁいうのをイッセンっていうんでしょ? 凄いなー! アタシにも今度教えてヨ!」

「そ、それじゃあ暇な時は八王子スクエアにいるから――――」

「――ノンノン」


 そう言ってジェシーはスマホを取り出し、隣にいた純太のポケットをまさぐり、純太のスマホをも取り出した。


「ちょ、おいジェシー! 何勝手にいじってんだ。おい返せって!」

「オーケー。純太、そのグループ消したらダメよー!」


 はて? どういう事だろう?


「何を……って、そういう事かよ。それならそうと先に言えってんだよ」

「アハハハ~、それじゃまた後でねー!」


 きゃぴっと消えて行ったジェシーをポカーンと見送る俺。


「一体何がどうなったの?」

「俺のスマホで、俺と風土のチャット画面からジェシーを招待したんだよ。後で確認しておけ。そこから友達の追加が出来るから」

「そういえばそんな機能もあったな」

「それにしても何だよ風土? 八王子スクエアに行ってるのかよ?」

「ん? あぁ。週に三、四回は行ってるかな。学割利いたから親に頼んで年会員になっちゃったんだよ」


 そうじゃないと俺の財布が死んでしまうからな。

 幸い両親共働きで俺の微妙な将来に期待しているからな。有難い事に、こんな迷惑を親は喜んでくれたんだ。

 そのためには、出来るだけ頑張らないといけないな。


「マジかよ、それなら俺もとっちゃおうかな、年パス。二人以上で行けば個別スペースとれるんだよな、あそこ」

「うぅ……私もとろうかなぁ」


 確かにあのスペースを使うなら俺、ナイア、翔、楓を入れても後二、三人は余裕だろう。

 問題はあの楓が、二人の参加を許すかどうかなんだが、まぁそこは公共施設だし、許してくれると思いたい。


「次、高山!」

「おっと俺だ。今はまだ応援しとけよ~?」

「相手を応援しとくさ」

「なにーっ? ってはははは、んじゃ行ってくらぁ!」


 小走りの純太の背中を見送る。

 グラウンドに入り、相手の顔を見た純太の顔は、既に戦闘の準備が万端だった。

 相手の中山は純太の威圧にもう飲み込まれているな。


「始めぃ!」


 ファーストサモンの段階で既に勝負がついている。

 速い……!

 後方に下がりながら描いた召喚陣(サモンスクエア)から出現したのは――ショートボウ。

 純太が構えたところで中山の召喚が完了する。出したアイテムはブロードソード。

 相手が離れた時点で召喚するアイテムを変更しなければいけなかったんだが、慣れない試合形式故か判断をミスったな。

 中山が追い駆け始めようとした時、既に純太の一射目は放たれていた。

 中山はブロードソードを使ってその矢を弾く。

 しかし――――、


「高山さん、凄い!」


 雫の言葉通り、純太の凄さはここからだった。

 二射目が速い!


「くっ! 嘘だろ!? これは……召喚循環サモンサーキュレーション!?」


 ここの三年生が習うような召喚の高等技術。

 通常、弓を出現させたら同時に召喚出来る矢は一本だ。

 それを純太は弦を引くだけで召喚している。これは予め召喚陣(サモンスクエア)の中に特殊な印を入れ、複数発射が出来る弓をイメージしなければならない。

 召喚循環サモンサーキュレーションは本来、一定時間で召喚されるアイテムが変わる技術を指すが、これはそれの応用みたいなものだ。

 入学したての一年生がやる技術じゃないぞ、ホント。

 普通なら、ちょっとしたチャンバラごっこになるのだが、流石に驚くなぁ。

 中山のライフバーもしっかり削れて、あっけなく終わったな。


「お疲れー」

「おーう! どうだったよっ? はは!」

召喚循環サモンサーキュレーションはずるいだろう?」

「それ、お前が言うかー?」

「俺は俺、純太は純太だ」

「ははははは、ひっで~! ……おっと、雫ちゃんの試合が始まるぜ?」


 雫は大丈夫だろうか?

 顔には緊張が見えるが、相手は谷のやつか。

 あまりいい噂を聞かないギャルだ。短めのスカートはとてもいいと思うが、前にカツアゲをしていたとか誰かが噂していた気がする。いや、張りのある太腿は素敵なんだけどな。

 ふむ、攻撃自体は基本に忠実という感じだな。だが、その基本は短い期間だがナイアが指導したものだ。

 一手一手を確実に行い、ミスらなければ地力で勝ってる雫が……負ける訳がない。


「それまで!」

「さっすが生徒会。堅実って感じだったな?」

「正に召喚士の王道って感じだよな」

「まったく、羨ましい限りだよ。そろそろ二試合目か。風土次の相手誰だっけか?」

「昨日あれだけ煽っておいてよく忘れられるな? 丸中だよ丸中」


 俺がそう言うと、純太はおでこをパチンと叩いた後ニカリと笑った。

 まぁ、純太も純太で自分の戦いに集中したいだろうからな、仕方ない。


「火水さーん! 高山さん! 勝ちました!」


 勝って当然ではあるが、最近まで勝負の世界とは無縁の中学生だったと思うと、喜んで然るべきだよな。

 そうだ、嬉しい。うん、俺も嬉しかった。


「おめでとう、雫」

「雫ちゃんおめでとー!」


 俺と純太の言葉にご満悦そうな雫様。


「……そういや純太?」

「あん?」

「あん? じゃねぇよ、あん? じゃ。純太、雫の事呼び捨てじゃなかったか? 何で急に変わったんだ?」

「ふっ! 仲良くなった相手が皆呼び捨てになると思ってるようじゃまだまだだな!」


 ぬぅ、つまり純太の場合は逆って事か。

 確かにちゃん付けで呼ぶのは純太らしいかもしれない。


「……なるほど」

「はははは、お前もそろそろ雫ちゃんの事、名前で呼んであげたらー?」

「た、高山さんっ。それはシーッです!」


 大体、というか全部聞こえた。

 ラインかなんかで二人の密談があったようだな。

 うーん、言われてみれば確かにそうだよな。

 雫って名字も名前みたいだから気にしてなかったけど、やっぱりそっちの方がいいか。


「次、火水!」

「んじゃ玲、純太、行ってくるわ」

「れっ!? は、へ?!」

「ははははは、軽〜いヤツだなホントに」


 失礼な。必然的な流れだと訴えたい。

 さて、またさっきみたいな嫌ーな視線を浴びているが、丸中の目は本気のようだ。

 多分この段階でナイアとか呼び出したら、後で翔に拳骨を頂く事になりそうだなー。

 丸中は優等生とはいえまだ一年生。俺もそうだが身体は完全に出来ていない。

 ならば――――、


「始めぃっ!」


 正面から詰めるのみ。


「くそ、また肉弾戦か……!」


 拳力(マーシャルクラフト)を足先に込め、間合いだけ埋める。

 召喚士の弱点は召喚陣(サモンスクエア)を描く瞬間。指でなぞるその腕さえ止めてしまえば……!


「く、離せ! この!」


 闇雲に振る腕の力を流し、俺が加える方向さえ間違わなければ……!


「っ! ぐぁっ!?」


 こうやって腕を取って組み伏せられる訳だ。

 飛び道具であろうと肉弾戦であろうと、そしてこういった関節系の技であろうと、ライフバーは減っていく。

 背を踏み、片腕を人質にとられた丸中は動く事も、召喚陣(サモンスクエア)を描く事も出来ないだろう。

 やり過ぎはよくない。さっきの嵐山の一戦は過度な力のせいで嵐山のライフバーを一気に削ってしまった。

 それによって、肉体的なダメージを負い気絶してしまったんだ。

 むー、やはり召喚士が統一杯に出場し、好成績を収めるためにはそういった肉体訓練が必須項目になってくる訳だ。

 翔には感謝しなくちゃいけないな。


「それまで!」


 塚本講師の合図により、俺は難なく第二戦を終えた。

 さて、問題は端の方で俺をギリギリと睨んでいる、あの一部(いちべ)君なんだよなぁ。


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