魔法少女 6
「魔法少女……?」
黒ネコ……自称エージェントを語る彼女(“彼”だと思っていた真那は心中で謝った)の説明は、にわかに信じがたいものだった。
帚木こころは魔法少女であり、先刻の化け物を退治していたところをタイミング悪く真那が目撃してしまったらしい。
といっても、普通ならばコスチュームを身につけた魔法少女や先の化け物の類は一般人には認識できず、なにが起きているか知ることはないとのこと。
なぜ真那が魔法少女を見、認識することができるのかは謎だが、こうして知られたからには吹聴して回るようなことは控えてほしいと。
「ちなみに言いふらす、って言ったら……?」
「そっ、そんな……! そうなったら私、源くんのことを……っ」
先程化け物を滅多切りにした剣をぎゅっと抱き締めてそう言われると、真那としても間違っても言いふらすわけにはいかなかった。
「ま、“口止め”が叶わないのなら“口封じ”するまでさ。それだけ知られては困ることだっていうのは、特別聡くなくても理解頂けると思うけど?」
黒ネコの追撃に、真那は脇目もふらずに首を振った。(もちろん縦に)
「あの……それで、その……もっと詳しく聞かせてもらうことは……?」
恐る恐る訊ねると、黒ネコのエージェントは瞳を煌々と輝かせて睨めつけた。
その迫力に首をすくめていた真那だったが、降ってきた声は存外に穏やかでやさしげだった。
「あの化け物を見て、そしてここまで執拗に釘を刺されてなお首を突っ込もうとするとは、その肝っ玉は称賛に値するな」
黒ネコの言葉を皮肉ととらえた真那は委縮してしまう。
「その、ダメだったらおとなしく身を引きます」
「いや。こちらとしても、キミのことはすごく興味を惹かれる。詳しいことを知りたいと望むならば、そうだね、もっと落ち着けるところで、キミのことを調べながらでもよければゆっくり語らせてもらうけど」
「あっ、えと、近くに私の家があります……ケド」
黒ネコの提案に、こころが場所を提供するという。
ふたり(ひとりと一匹?)はもう腹は決まってあるのか、真那の顔を覗き込んで問うている。
学校の後で大層なことに巻き込まれてくたびれているのが正直なところだが、答えはすでに決まっていた。
「それじゃ……案内、お願いします」