鉛の世界
近未来の世界には似合う光のサーバーのドアが開く。入ってきたのはアマネとソラだ。
「ああ、もう!!苛立ちが収まりませんわ!!」
「仕方ないだろ……。全部あいつの指示だから…」
そう言ってソラはある男を指した。アイマスクを付け、大きなソファーで口を開けて寝ているようだ。
「ライド!起きなさい!」
「ぅおわっ!びっくりしたー…って何だ、アマネか」
ライドと呼ばれる男はアイマスクを外し太陽のように明るい笑顔をした。金髪以外あまり特徴を感じ取れない男だ。手にはルービックキューブがあった。
「貴方、何故戦闘許可を出さなかったのよ!?お陰で私の力は老いぼれていくばかりですわ!!」
「ソラ、魔法使いに会ったのか?」
ソラは静かに頷く。ライドは色の揃ったルービックキューブを動かし始めた。
「そもそも今回は戦いをメインにしてないからな。魔法使いを見てソラが止めに入ったのは正解だ」
「それにしましても、結局最後には7人の魔法使いを全滅が目的じゃないですの!それに今回出会ったのは朱の魔法使い。これは最高の機会でしたわよ!?」
「朱の魔法使いは悪いが侮れない。少なくとも山吹の魔法使いか翠の魔法使いでない限りはな」
「だから………」
アマネの憤りぶりにソラはアマネに肩を置いた。これにはライドも小さく溜め息をついた。
「いいか?」
「ちょっとおー!」
「はあ……常識が貴殿方にはないのですか?Yes or No?」
ライドがアマネに何かを言おうとした瞬間、新たな2人が歩みかかってきた。特に隣の桃色の髪をした女はやたらと不満げな顔をしていた。
「うるさいのよおー!貴方達こんなに可愛いエルちゃんを何で寝かさないの?」
「貴方が可愛い以外は全て同意見です」
「ひっどーい!少なくともアマネっちには勝つよね?」
「黙りなさい、エル!!」
ダン、と雷が落ちたような音が響く。ライドの震脚が床に大きな亀裂を作った。
「いずれにしろ俺達の目的を忘れるなよ?それまではしばらく戦力は温存すべきなんだよ」
ライドは笑っている。だが、周りは鋭い顔つきをしていた。油断すれば仲間でも殺される。そう、思っていたからだ。それでも何とか話をしようと頑張る周囲だった。
「にしたって誰だっけ?誰か朱の魔法使いに喧嘩を吹っ掛けにいったわよ」
「テイルーでしたね。彼は朱の魔法使いには負けないと自信満々でした」
ああ、と周りは頷く。それでもライドは微妙な顔をした。
「まあ、あいつに朱の魔法使いの首は取れないだろうな」
「何でー?」
「自分で考えろ。ヒントは精霊」
エルは口を不満げに膨らませる。すると、隣にいた眼鏡の男は何かを解釈した。
「ロイ、分かりましたの?」
「答えを知りたいならば自分の目で確かめるべきです」
アマネは思い切り舌打ちをする。隣でライドは大きく笑った。
「どっちにしろあいつはもう帰ってはこないな。まあ、な」
「やん、冷たい♪」
ライドの頬をつつくエル。アマネは興が冷めたのか、ソラを連れて何処かへ行ってしまった。
「どう足掻いたって俺達は廃棄物だ。だったらそれらしく役目を果たしてまた別に帰ってくるんだな、テイルー」
ライドは再びアイマスクをしてソファーに寝転んだ。