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スターダスト オブ ジ アース~Volume 7 magicians~  作者: 抹茶スクロース
第1章 山吹の魔女と翠の魔女
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出発

「何の真似かしら、ソラ」

「目的を忘れるな…、アマネ。今ここでしにきたのはある程度の人間を捕らえることだ。魔法使い駆除は対象外だ…」


アマネという女子は舌打ちをして、窓から飛び降りた。どうやら物わかりはいいようだ、良かった…。

あまり香苗の前で魔法を使う姿を見せたくないから。


「また会うことになる」

「ごめんなさい、嫌です」


首を横に振る。

本当にこんなものが続くのはごめんだよ。


「だけど君が無事で良かった…」


(わず)かに今、ソラという男子が笑った気がした。

ウォーリアにも感情ってあるの?






一旦ウォーリアが帰ったのは良かった。

けどこの学校の人間、大きく言うとこの町の人間は私達2人を残して忽然(こつぜん)と消えた。


「ちーちゃん…この先どうするの?」

「私は仲間に会いにいくけど」

「私はどうすればいいんだろう」


ここにいる人間はいなくなった。

香苗もここにいればまた奴らに連れ去られるかもしれない。

それは、私よりも香苗が可哀想。私が初めての友人なんだったら私が何とかしないといけない。


「香苗がここでできることはもうないと思う」


私はあえて香苗にきつい一言を浴びせた。

現実逃避だけはごめんだから。


「代わりにできることは私と旅に出ることと、死ぬこと」

「えっ一緒に旅に出ていいの?」


おっ、何か反応が予想と違ったぞ。しかも死ぬこと放棄とは…。


「誰が駄目だと言うの。だけど条件がひとつ」


それでも香苗は一生懸命話を聞こうとしている。私も応えなきゃ駄目だ。


「『使い魔』になること」

「使い魔…?」


あ、香苗はまだ魔法使いとかも知らないのか。仕方ないよね。


「そもそも、こうなったから言うけど、私は魔法使いなのね」

「うん、アマネっていう子が言ってたね」

「魔法使いは世界に結構いるけど、その中でも私は『7人の魔法使い』っていうのに分類されてるの。7人の魔法使いは世界の秩序(ちつじょ)を古くから正す仕事があるけども…」

「どうしたの?」

「皆働かない。あっでも琴音(ことね)さんは働くなあ。それでもって、私達には色が付いてるの」

「ちーちゃんは何色?」

「私は(あか)色。他には、山吹(やまぶき)(みどり)(だいだい)(あお)(しろ)(くろ)がいるよ。そして、その直属に『10人の使い魔』がいるの」

「あれ、でも私が入ったら11人になっちゃうよ」


この子、好奇心旺盛だな。感心、感心。


「ああ、私には使い魔がいなかったから今は9人なの。だから香苗が入って10人」

「そうなんだ!それで、使い魔ってどうやってなるの?」

「早くしたい?」

「うん!」

「ヘヘーイヘーイ」


よっしゃ。あ、今変な笑い方してしまった。

私は窓ガラスを思い切り割ってその衝撃で出た血で魔方陣を描く。

でもこの魔法初めてだから成功するかな。


「ちーちゃん!血が…」


と、心配そうに香苗はハンカチで丁寧に私の血を拭いて包帯を巻く。

自然治癒力に頼っていた私には初めての出来事だった。


「あっありがと」


そして私は香苗を魔方陣の中央に立たせる。


「我が名は八重樫 千里。7人目の魔法使い、朱の魔女である。(なんじ)の名は杯 香苗。ここに朱の魔女と使い魔琥珀(こはく)(ちぎ)りを交わす。さあ、精霊たちよ。聞き届け(たま)え」


血で描いた魔方陣が神々しく輝きだす。その光を浴びて香苗にも変化が訪れだした。

香苗の耳は犬のように毛が生えて(とが)る。茶色い尻尾が生え、服装も制服から(はかま)のような着物に変化する。

これが使い魔特性の変化だ。

使い魔とはここでは『魔法使いや魔女が使役する絶対的主従関係に当たる精霊、動物など』を指します、はい。

要は人間じゃなければいいってこと。いや別に人間でもいいだろうけども…。


「ちーちゃん、これ何?」


魔方陣の光が消え去り、私のほうへ来る香苗。というよりも『琥珀』にあたるかなあ。


「それはそういうものです。そして、香苗」

「なあに?」

「今日から杯 香苗という名前、禁止ね」

「えっ!?」

「使い魔たる者、実名を名乗ることを禁じられてるの。だから代わりに今日から貴方は『琥珀』」

「偽名ってこと?」

「違うよ…。どっちかというと歌舞伎役者や落語家の類いかな」


なるほど、と納得する琥珀。対して嫌がらないのか、こやつは。


「まあ、これで使い魔もできた訳だし旅に出ようじゃあないか。まずは彩姉(あやねえ)とこから」

「彩姉?」

「うん。山吹の魔法使いで……何だろう。直接見たほうが早いね」


「そ、そうなんだ…」


少し怯える琥珀。まあ、特別怖い魔法使い……ちょっと怖いかな。

これは私の主観だけども。


「家族に会わなくていける?」


とりあえずこんなことを聞いてみるけども、琥珀には家族がいるのだろうか?


「あっ、大丈夫…大丈夫」


少し悲しい表情をする琥珀。何かあるみたい…。

彼女が打ち明けるときが来たときにきちんと聞こう。身近な存在に秘密事があるのはこっちがたまったもんじゃないから。


「よし、じゃあ早速だけども出発しよっか」

「うん!」


こうして私達は仲間に会いにいく旅を始めた。のはいいけども、


「ちーちゃん……ここどこ?」

「ちょうど日付変更線をとこ」

「じゃないよ!ちーちゃん!!」


どうやら琥珀にはまだ未体験の世界が広がるようだ。魔法使い定番の交通手段、(ほおき)

彩姉は北アメリカのなんちゃら山脈の(ふもと)に住んでいるから、只今太平洋を絶賛飛行中。太平洋、流石は海7割の星だ。遠すぎる……。瞬間でシュビュビューンっていう魔法が使えたらよかったのになあ…。何で雷系統の魔法使いなんだろうかな。




結構昔の話。まだ千里が幼い頃だったとき。そして、千里がまだ魔法使いでない頃。


『いいか、千里。雷はすごいんだぞ』

『雷怖いよう……』

『ハハハ、怖がるな。お前だってすぐ雷系統の魔法が好きになるぞ。何せ、幅が広いという利点があるからな』

『利点って?』

『良いところだ。雷は炎も起こしたり水を気体に分解とか色々できる。な、便利だろ?』

『水って分解しても水じゃないの?』

『お前はまだ若いから何も知らないよな…………』


千里の過去の物語はまだ終わらない。

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