紅白魔法合戦
ロシア、モスクワ。津軽海峡でなくても雪景色が堪能できる、こんな場所に白音さんは住んでいたのか……。今度は至高寒いよ!なのに、何なの!?どうして、白音さんと鷲爪は平気なの!?おまけに琥珀も普通にしてる…。
「着きましたよ、朱の魔法使い」
外見は案外普通な感じだった。だけど、何故此処にトナカイの毛皮がぶら下がってるんだ…。
「白音さん、これ……」
「ああ、それは戦利品ですよ」
何の戦利品なの!?白音さんは、相変わらず真顔だけど、流石に私と琥珀は困惑中だよ。鷲爪のエスコートでドアが開く。おお、玄関がまさかのビッカピカの大理石とは……。とんだ金持だ。一歩踏み出しくないが、仕方無く踏み出した。が、
「ああ、そこトラップあるんで」
「え?」
カチ、と妙なスイッチが入る音がする。そして、何かが頭上に向けられる。黒くて、筒状のもの。そうこれは、
「マシンガンだああああ!!!!」
点々と足を貫こうとする機関銃。ダダダダ、と鳴り止まぬ弾丸の雨。ヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!だが、これは恐らく私を試しているな!
「だったら金属なんてこうとでもなれえええ!雷弾!」
電気で作った弾丸を筒の穴にドーン!筒からは黒い煙が上がり、暫く静止する。しかし、機関銃はそんなんでへこたれないタフなボディで再び私を襲う。
「ちなみに、それは雷属性が効かないよう仕掛けられています」
「何で雷オンリー!?私、何かした!?」
「いいえ、特には」
えええ!?白音さん、何の逆恨みも特に無しでそう来る!?いや、まてまて。ここは別の属性でいける魔法を探すしかないかな…。目には目を。歯には歯を。マシンガンには、マシンガンを。でも、マシンガンは無いっ!
「ならば作るまでだ!」
すると、右手に何か黒い物体が集まりだす。みるみるうちに右手には小さな銃が出来上がり、手にしていた。……………は?
「ななな何じゃこりゃあ!」
とりあえず、私は乱れ撃ちでマシンガンに対抗する。だが、これ………白音さんの家を破壊しかしてない気がする。ごめんなさい、白音さん。ってこれ、もしかして私の魔法と融合させて、ぶつけたら…!
「浮遊雷の弾丸添え!」
狙いを定め、次こそドーン!機関銃はモーターに物が詰まったような音を立てて、やっと静止した。きっ、九死に一生を得た気分だ…。心臓が痛い…。
「朱の魔法使い、貴方は判断に遅れを取りすぎです。確かに、蒼の魔法使いも音を上げる訳ですね」
胸に今の言葉が突き刺さる。何の誉め言葉も無しかいっ!
「しかし、今の銃の精製は……」
小さく白音さんが呟き、顎を擦る。確かに、私は雷オンリー。だけど今、別の属性が完全に混ざった。強いて言うならば、
「灰色の魔法使いの技では無かったのでしょうか?」
だっ、誰だ!?その灰色の魔法使い!私達にはそんな色はございません!何なの、白音さんと言い、蜂鳥と言い、魔法使いは他にも居るってことを何故に言わない!
「灰色って……」
「ああ、独り言ですよ」
しれーっと白音さんはかわす。もうっ、何の恨みがあるの!そこは、まあ置いといて、私達は地下にやって来た。そこはただ純白の空間。
「此処で貴方の修業をします」
「はいっ!」
「して、使い魔。貴方は音属性だと伺ったのですが」
「はい、おかげさまで」
暫く静止する白音さん。ふと、鷲爪を見つめると、ゆっくりと目を閉じて頷いた。琥珀も舞姫との修業で、ついに属性デビューって訳だ。
「鷲爪は基本、全ての属性に対応出来ます。折角ならば、私達が魔法を修業中、見てもらっては如何でしょうか」
「すっ、全ての属性!?」
「まあ、種族の影響でな」
いつまでも穏やかな表情ばかりするな、こやつは。種族の影響ってかなりすごい種族なのかな?訊きたいけど、ちょっと訊きづらい気迫してるよ……。
「では朱の魔法使い。早速修業をしましょう。明日までには完成させなければならないので」
「はいっ!」
白音さんは、まず何故か箸を出した。持ち方も綺麗だ。
「宮本 武蔵をご存知でしょう?」
「あっ、蚊を箸で捕まえた人だ!」
「まずは“蚊”を捕まえます。先程の魔法を私に当ててください」
よおし、白音さんと言えど容赦無しだ。私は手を前に出し、そこから魔方陣を展開させる。
「雷弾!」
幾つもの雷の銃弾が白音さんへ発砲される。白音さんも流石に参ったか、左手をポケットに入れて、何かを出す。って、また箸かいっ!だが、二刀流でも華麗なる捌き、白音さんは雷弾を巧妙に捕まえていく。それも全て、電気なんてなくなるはずなのに、なくならずに。
「どういうメカニズムで電気が消えないの?」
「考えてみなさい」
まあ、魔法でしょうな。だけど、何の命令式を使ったのだろう?魔法を成り立たせるものが命令式と言います。命令式は、パッと思ったものも全部命令式にあたる。属性とかもこの段階では、関係無し。更には、どれだけ常識を覆しても、命令式になるのだ。まあ、魔法ですしな。簡単に例えれば、今私がカレーが食べたいと思って、カレーを出します。その魔法には、無いものから姿を作る式、普通のカレーを作る式、人参は抜く式………など。馬鹿みたいな思考からの命令式でも、れっきとした式になるのだ。実際に、カレーを出すだけで50くらいの命令式はいるけどね。高燃費だね、魔法使い。
「例えば、摩擦を空気中で起こし続ける命令式とか?」
「いいえ、そんな面倒なものは抜きです」
あら意外。白音さんも案外大雑把なのね。じゃあ、大雑把には雑な感じの命令式か。
「捕まえたものを離さない式とかは?」
「近いですが、私はそんな肉食系女子ではありません」
……………………きりがないわっ!命令式なんて無限だからね。
「正解は、錯覚を利用した魔法です。これは、実際に私が捕まえた訳ではありません」
「じゃあ私が発射したあれは?」
「全てを奪う魔法を使用しました。玄の魔法使いの魔法なので、正直嫌でしたが」
そして、白音さんは箸を直す。それ、宮本 武蔵の意味あった?
「というか、白音さん。そんな余興を見せられても、嵐起こせないよ」
「この愚か者が」
めっちゃ罵倒された。




