思い出を抱いて
世界が、宇宙が、渦を巻いて私の視界で暴れまわる。その中には、色褪せたフィルムも混ざり、宙を舞っていた。私の、今まで生きた記憶だ。1枚拾うと、私と柚葉姉が出会ったきっかけが動画の如く動き出した。
『お嬢ちゃん、どうした?かなり荒れた姿をしているよ』
『無くした……』
『無くした?何を?』
『それは………
家族を………』
私が、両親を無くした頃。誰かが放火して、私は救われたのに、両親は遺体で焼け跡から見つかった。今も犯人は見つかってない。それがとても悔しい。
『悲しむな。それじゃ、天国で父ちゃん、母ちゃん、泣いてんぞ』
『でも………私、これから……』
ふうん、と目の前にある焼け跡を見つめる柚葉姉。甘い香りがしたのを今でも覚えている。
『分かった。お嬢ちゃんが立派な大人になるまで私が育ててあげよう』
『いっ、いいの…?』
『勿論さ。まあ、仲間がどう言うかは正直、何とも言えないけどねえ』
柚葉姉は、太陽のように明るかったな。とても綺麗だったし、魔法も強い。自慢の師だよ。そして、私は今の7人の内、いろりちゃんを抜いた5人に出会った。別の写真を拾い、そこに映っていた。
『何だ、このちんちくりんは?』
『暫く私が匿うよ。どうせ、後継者を探す良いきっかけだったし。黒十も探せよ』
『ああん?俺はケッコーだね』
チッ、こいつは昔からこんな腹立つ奴だったのかよ。しかし、昔と何一つ容姿が変わらない黒十が不思議だ。
『はあ、子供ですか……』
『白音、子供無理か?』
『いや……あの……ちょっとありまして』
『許してくれ、可哀想だったんだ』
昔の白音さん、やはり今より若いな。少し大人しかったんだ。言葉が敬語でも、何か覚束ない。
『お前と、年近いんじゃないか?』
『やだよ。何で人間なんか』
『おーい、白音と琴音。ここに人間嫌いが居るぞー』
『あっ、嘘。人間様、好きですよ』
柚葉姉に鷲掴みされると、途端に真面目ぶる蜂鳥。何か、こいつも昔は童みたい。背も小さいし、髪の毛黒いし。
『人だったら私と一緒だね。良かった、また仲間が増えるのね』
『もう琴音も立派な魔法使いだけどねえ』
『あら、でも私はまだ人間臭いから』
照れる御坂さん。何でこう周りの顔面偏差値高いんだろう……。1人でいいから何かおっさん出てこいよ。
『おい、彩奈。何してるのさ』
『二次会じゃあ……』
『ここで寝るなよ…』
ん?何だ、彩奈姉が……今より老けてるのは気のせい?こんなこと言ったら彩奈姉に殺されるね。1枚の紙はハラリと手からこぼれ落ちた。まだまだフィルムが舞っている。だけど、何枚かは色の付いたフレームの写真が降っていた。試しに、緑色のフレームの写真を手に取ってみた。相変わらず、動画のように走り出す。
『魔法使いにならないか』
『まっ、魔法使い?こんなご時世に魔法なんてある訳無いのに?』
『あるよ。僕はそれを知っている』
『どうしたの?頭をぶつけたの?』
誰だ、この小学生達は……って、この女の子のほう、誰かに似てると思ったら、まさか……!再び別の色のフレームの写真を捕まえる。今度は橙色だった。
『ママ、ワタシは本当に良い子なの…?』
『どうしたの?言ってごらんなさい』
『さきちゃんの髪を燃やしちゃったの』
『そうかい、さきちゃんには謝ったの?』
『うん…』
『大丈夫、アナタは素直な良い子よ』
はい、八重樫の脳はピーンと来ました!このフレームの色の意味は、7人皆の過去を描いていたって訳だ。つまり、今見たのは御坂さんといろりちゃんの過去。プライバシー侵害みたいで少し嫌だな。だけど、此処まで来たんだ、何か知らないけど。私はきちんと、正面向いて皆と話す。皆の過去を目が覚めるまで、見届ける!
『おとーちゃん、人間ってどんなんなん?』
お社に裸足で駆け抜ける少女が叫ぶ。走るたびに、青い着物が揺れた。物凄い音を出し、大木が描かれた襖を開ける。お社の中心で座っていた父親は、静かに羽衣を落とした。
『何や、風子。人間に会いたいんか?』
『会いたい!おとーちゃん、知ってんやろ!?』
父親は口を膨らまし、風子と呼ばれる少女に思い切り風を吹き掛けた。その父親の姿はまさに、風神。風子は唖然とした。
『あかん、御前じゃあんな邪心には勝てん』
『そんな危険なものなん?』
『危険どころやあれへん。御前やったらすぐに心が腐るわ』
『じゃあ、おにーちゃんとは?』
『彼奴は信じられん。何せ血の繋がってないさかい、尚更や。おまけにな………』
風子は話を無視してお社を走り去った。そして、風子は森までただ走った。辿り着いた森の中で、兄と慕われる者が大木の枝に座っていた。逆光で姿は影にしか見えなかった。だが、目は光っていた。
『おにーちゃん!風子、下界へ行きたい!連れてってやー』
男は高い所からでも平然と降り立ち、ゆっくりと目を細める。静々としていて、風子も見とれるほどだった。男はゆっくりと風子の頭を撫でた。
『如何にしても足を止めないか?』
『うん!もう向こうで暮らしてもええ!』
『承った、暫くしたら私も向かうよ。それまで……』
男は指を鳴らした。すると、下は既に空の中で、ただ風子は雲を切っていた。重力を初めて感じる風子は、体が少し重く感じた。
『すんげー!下界だあー!!』
風を巧妙に操り、スカイダイビングさながらでも体勢を崩すことなく落ち行く。興奮して仰向けになっていた時、不意に何か堅いものにぶつかった気がした。
『いったいなあ!何じゃ、人間か!?』
体を起こすと、そこには箒で宙に浮く男子がいた。凄く鋭い目で風子を睨んだ。
『何?何で空から人間が降ってくるの?』
『はあ!?何抜かしよる童、風子は立派な風神よ!』
『えっ、何言ってんの?』
『主こそ人間やろう!?何故にこんな風神の楽しいひとときを…』
『………人間じゃないけど』
『人間じゃない?じゃあ主は何だ!?獣か、化け物か、幽霊か!』
こう言い合いをしている間も、2人が重力に従い、落下に気付く様子は全く見られなかった。暫くすると、男子は重い口を開けた。
『魔法使いだけど』




