誰もが皆
「誰もそんなアテンダントに居るのが電脳人間だとは言ってない。それなら研究員だってウォーリアなはずだよ」
「いや、ずっと思っていたけど、アテンダントって電脳世界じゃん。矛盾まみれで駄目じゃん」
駄目じゃん。だって、言ったけどアテンダントは電脳世界。生きていられるのはウォーリアオンリーだよ?
「じゃあ君は実際にアテンダントを見たことがある?」
「テレビでしか見たことがないよ」
東京の中央にある箱の様な形をしていてまさに要塞。『attendant』と大きく書かれていた。あれ単体が機械だと思った。
「実際に中を見たんだ。予想を遥かに凌駕していた」
「何があったの?」
蜂鳥はコロンを見る。コロンは固唾を飲む。何かの覚悟を決めている表情だった。
「巨大なサーバと沢山の人間が居た。アテンダントが電脳世界なのは嘘だった」
「えっ!?」
「そもそも、アテンダントが電脳世界というのに、ウォーリア達が同じ次元に居ることが不思議に思っていたんだ」
ちょいちょいちょい!!話が分からないよ!!要は、アテンダントは電脳世界じゃなくてウォーリアは電脳人間じゃない。ってことは今までの辻褄が全てパーだよ!
「じゃあ何で人間がウォーリアなの!?明らか機械じゃないの!」
「死体を使うからだよ。死体に直接データチップを埋め込み、機械で動かす。君は1度見ただろう?あの世界の中身を」
確かに沢山のウォーリアを1度目の当たりにはした。でも、彼処がアテンダントではない。証拠は私のお得意様な電気から。あの部屋本体からは電磁波を感じなかった。
「だからと言って死体の人間だけとも限らないらしい。噂では本物の人間から魔法使いまで紛れているらしいしね」
「もう駄目だ…頭が回らないよ…」
助けて下さい、皆さん。もう私は何が何か分かりません。
「まとめると、アテンダントはただの同じ世界で、ウォーリアも同じく電気の人間ではないということ。死体を燃料の信号から使うから動いて、機械的部分を多くすることで、再生が可能になるということよ」
はあ……なるほど…。だから現実世界に今、立体として存在するのね。
「てことはあのUSBメモリには?」
「ウォーリアに渡してはいけないものが入っているわ」
「ウォーリアなんてもうほぼ良いもの手にいれた気もするけどなあ…」
「心が無いの」
コロンはキッパリと言い切った。心が無い、感情が無いってこと?あるように見えるけど…。蜂鳥も流石に分かりきってないよう。眉間に皺が寄ってる。確かに、奴には感情関連は通じづらいよね。
「感情はあるように見えるけど?」
「あれは彼等に内蔵されたデータチップのせいよ。彼等自身が感情を持っている訳ではないの。だけど、あのUSBには自分が感情を持つ為の情報が入っている。そうなれば…」
「ほぼ不老不死の人間が完成する、と」
蜂鳥は急に不機嫌な顔をする。何じゃ、タブーでも踏んだのかいな。てか、コロンは結局USBの中身を言っちゃったね。
「じゃあ捨てたりすべきだと思うけど…」
「駄目なの、それは。既に精霊騎士団は私が持っていることに気づいてる。捨てればこの国の命が……」
ああ、おじゃんね。もう、研究員は面倒いよ!そんな職業まっぴら御免だ。
と、突然、大きなプロペラ音が空気を支配し出す。凄い振動に目が回った。
蜂鳥、コロンは立ち上がり、私は土下座の姿勢をする。いや別に謝りたい訳じゃないんだよ、安全な体勢を取ったまでだよ。
「舞姫、」
蜂鳥が指を鳴らすと、舞姫ちゃんと琥珀が同時に何も無い場所から現れる。2人共、修行中だったのかぼろぼろだ。特に琥珀に関しては、着物の着方がなってない…。
「ああ、貴方何てそんな力を……」
「誰もそんな宝塚風なんて求めてないよ」
えっ、普段こいつ外国に居るのに宝塚知ってたの?いや、今は関係無いけども。
「大惨事だね…ちーちゃん…」
「そんな哀れな目で見ないで!」
「分かってるよ。ウォーリアだよね?」
琥珀が敵を目前に、珍しく目を輝かせる。私はゆっくり顎を引いた。のに関わらず、私は急いでドアを開けて外に出た。ブラジル人は皆、血を流してバタバタと倒れていく。口から、目から、………鼻から。世界観、散々だな。って、これは!
「マズイよ!」
即座に私はドアを閉める。ヤバイよヤバイよだよ、だって!
「人間に効くウイルスが撒かれてる!!」
「「わーお、バイオハ○ード」」
琥珀と舞姫ちゃんはお互い見合わせる。口を揃えて、それかいな。てか、舞姫ちゃんもバイオハ○ードとか知ってるんだ…。
「へえ、そう来たか」
蜂鳥お得意、鼻で笑う。私はどうするか、勿の論、ウイルス除去だ。だけど、ウイルスが何かも分からないし、私の魔法で全員を救うのも無理だし…。
「で、八重樫はこの状況で人間救出するとか言わないよね?」
あっ、ごめんなさい。もう考えてましたよ。そんな視線を送ると、蜂鳥は溜め息を吐いた。これは奴には頭に来るぞ………。だけど、昔から決めていたから。
「承知の上だよ、私1人でもやるから」
「生憎だけど、はいどうぞ、ってもう言えないんだよ。おまけに君は人間の何を知ってるの?」
「何も知らぬ」
さらに、蜂鳥は鋭い目で私を見る。ただ、語尾をぬにしただけなのに、私の背筋は凍りそうだ。
「人間と魔法使い。もとから交わるなんて不可能なんだ。もとから人間とは無縁なのに」
「………何が言いたいの」
逆に私が蜂鳥を睨み返す。蜂鳥は窓を横目に言葉を吐く。
「人間なんて、救う意味無い」
駄目だ、頭に血が上る。冷静になろうとも時既に遅し、私は蜂鳥の頬を平手で叩いていた。大きな破裂音みたいなのが、部屋に響く。皆不安気に私達を見ていた。
「そんなんじゃない。道徳心に従うとかじゃない。私は、柚葉姉の意志に従うだけ!貴方には、関係無いかもしれない……。だけど私は柚葉姉が愛した世界を残したいの!」
「そんなことは分かってるよ」
蜂鳥は吐き捨てるように言い、私を睨む。だけど、何で………
何で貴方は泣いてるの……?
「だからって、何処かで落とし前着けなきゃ駄目だと分かってるだろう?もう、過去なんて切り捨てるしかないって!」
「分かってるよ!誰よりも分かってるよ…。だけど、自分勝手だけど、我が儘だけど、私は捨てたくないよ……」
結局、混血だったからかな。私は感情にずっと引き摺られて生きてるんだ。分かってるけど、そう簡単に感情捨てれるほど私達は簡単な生物じゃないんだ……。
「私は柚葉姉を忘れたくない。過去も捨てない!落とし前なんて、私が魔法で延ばしてやる」
その瞬間、突然目眩が起き、そこで視界は暗くなってしまった。