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スターダスト オブ ジ アース~Volume 7 magicians~  作者: 抹茶スクロース
第2章 橙の魔法使いと蒼の魔法使い
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千里が千里でなくなった日から約3日が過ぎようとしていた。


「八重樫」

「何でしょうか、都熊様」


何も表情に表さない千里を目の前に茅緒はただ命令を出すのみだった。


「昨日は一気に3ヶ所も拠点を制覇した。今日は5ヶ所だ。行くぞ」


ウォーリアよりも効率が良くコストも掛からない。魔法使いが利便性に長けていることを知りながら茅緒は千里と共に拠点を落としていくのみだった。


「かしこまりました」


ただ普通に。何も思わず。




ある地点に着いた。そこは閑としていて、いたのは2人。少女を猫のように掴んでいる男のみだった。


「Ladies and gentlemen.忙しい時こそたまには遊ばない?」

「蒼の魔法使いか」


微笑する夏彦。周囲に全く人の気配は無い。恐らくは魔法で何かしでかしたのだろう、と茅緒は予測する。千里は2人を見ても微動だにしない。


「生憎、俺はそれを返してもらう為に来たわけだ。悪いが都熊 茅緒君、いや織幡 茅緒君と呼ぶべきか。少々付き合ってもらうよ」

「なっつんのバカっ!」


隣で喚くいろり。夏彦は蛇のように鋭い目つきでいろりを睨んだ。いろりは一瞬で黙ってしまう。スッと刃物が夏彦の喉元に突き付けられる。


「マスターには一歩も触れさせない!」


ユリアが短剣に精霊を込め、一気に突き刺す。だが、夏彦は一瞬で消えてしまった。いろりは地面に投げ出され、顔面から落下した。


「ふぎゃあっ!!ちょっとなっつん!!」

「五月蝿い、この惨事を誰が招いたんだ?」


再び夏彦が隣へ現れる。いろりは目を大きく開き、黙りこんだ。夏彦の背後に千里が迫る。


「雷々風雅」


千里の魔方陣が夏彦の足元へ映る。前掛けとして魔方陣から電光が散らされる。しかし、夏彦は何も感じていないようだった。


「ふーん、少しは成長したんだ」


夏彦は冷笑する。そして、雷々風雅の全貌が明らかにされる。電光が激しく散り、視界は段々と眩しくなり、焦りを覚えさせるようになる。流石に少し思ったのか、夏彦は手を器用に動かし始めた。


「飾風よ、近づきし邪念を打ち払え」


瞬時に先程の電気が空中を舞い、消えていく。いろりは夏彦がまだ誰も使ったことのないような魔法を使ったことにただ驚いて見ていた。


「なっつん、今の魔法って小魔法…?」

「いや、違うけど?」


服の埃を払う夏彦。その姿は余裕という言葉しか似合わない。


「もう1回見たい?」


いろりは大きく頷く。夏彦は辺りを見回した。周りの敵は丁度同じくらいの距離に位置している。それを見て何か閃いたようだ。


「丁度良い、こいつを使おう。……時の運び、不遇の運命を先導せよ」


その瞬間、周りにいた全て…計5人は此所から忽然と消えてしまった。別の2人を除いて。


「パパ、皆消えちゃったよ」

「そうだね、小暮。ライド氏に報告しにいこうか」


幼き少女、小暮は隣の男の手をキュッと握る。結局は謎の2人も何処かへ行ってしまった。




5人は今度砂漠の上に立っていた。アフリカが生んだサハラ砂漠。近くには夏彦の家があるのだ。今は関係ないが。


「古都橋、君はやりすぎた。黒十の魔法を使うとはいい度胸をしているね」

「でも……」

「でも?いつもじゃないか」


ぐさり、といろりの心に刺さる。氷のように冷ややかな夏彦の言葉は、普段から周りを脅かしている。そして夏彦がいろりが使った魔法が黒十の魔法だと知っているのは、黒十の魔法の性質を知っていたからだ。


「味方に話す暇があるなら………」

「いや、あるけど」


上から襲ってくる茅緒を軽く避ける夏彦。


「風切鋏」


茅緒、ユリア、千里の足元に目に見える風が円を描くように吹き出す。ただの風なら良いが、魔法となれば変わる。茅緒の触れた手からは鮮血が滲み出ていた。まさに風が切るということである。


「八重樫が敵に回った所で俺は何も思わない。だけど、古都橋が禁忌を犯したから言ってんだ。悪いがただじゃおかないよ………」

「ちっちゃんに何するの…!?」


涙ぐむいろりの声が響く。夏彦は何も聞かずして魔法を解こうとする千里へ歩み寄る。


「文明が生み出した契り…。風が今、契りを断つ刃となり再び汝、八重樫 千里に今一度…………」

「待って!!!」


夏彦の魔法をいろりが遮る。いろりは立ち上がり、茅緒のもとへ行った。


「……………ごめんなさい」


小さく呟き謝る。茅緒は何も言えなかった。そして、夏彦のもとへ行く。


「ワタシが……やる。間違えた…ちっちゃんに酷いこと、したんだ…。お願い、ワタシにさせて……」


夏彦は不服ながらも自分の立っていた位置から退いた。いろりが再び立つ。


「文明が生み出した契り。火が今、契りを断つ刃となり再び汝、八重樫 千里に今一度旧きあの光をもたらし給え!」


千里の脳裏に一筋の光が過る。その途端、千里は激しく叫びだした。




昨日は、何をしたっけ…?ハヤシライス食べて確か、都熊様と……様?あれ、あの男は私を従えていて……従うって何で?だって彼奴はウォーリアじゃなかった?敵対関係にあたるのにどうして仕えているの……!?誰か、誰か教えて……!!


『千里はいつもお人好しだな、ホントに感動するよ』


「ゆ…ずは…姉…?」


『いっつもお前は自分の道に至難まみれだ。もう私はお前に朱の魔法使いにして良かったか今でも迷うわ』


「何を言ってるの…?」


『弱さが自分を邪魔してんのか?いや、確かに千里は弱い。強くなる見込み0パーセントは確実だ。だけど、忘れるなよ?……………自分には仲間がいることを…………』


待って……柚葉姉……!!……………誰!?


「原点を定めし汝よ、聞きたまえ。運命を導きし力は果てしなく大きい。だから調べをもたらす。聞き届けよ………………」




頭痛が消えた。柚葉姉の声も謎の声も途絶え、目の前は砂漠。都熊様と呼んでいた都熊 茅緒とユリア、更にいろりちゃんと………奴がいた。


「あっ…」


ずきん、と片頭痛がする。太陽の光を生で見たのは久々だから強すぎたみたい。


「やあ、八重樫」

「…………っはっつぁん……」


うわ、向こうも地味に馬鹿にするように笑いやがった。くっそ…。


「さて、と。織幡君、君にはまだ話がある。星の間まで来てもらうよ」


織幡……やっぱり都熊は嘘じゃなかったのか……。


「構わない、ユリアは先に戻ってくれ」

「………承知しました、お気を付けて…」

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