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お調子者の王様

今回は王様の視点です。

 私の名前はリジウス。

 アスラ王国の国王である。


 まさか私の思いつきがこんなことになるとは思いもしなかった。

 部屋から出ない魔法使いラグールと過保護に育てすぎた娘をちょっとでも変えようと思っただけなのだ。

 ≪勇者を召喚して冒険に連れ出そう大作戦≫がこんな結果になるなんて。


 ラグールとは小さいころからの幼馴染で、よく一緒に遊んだものだ。

 彼は、5歳になるころには一般の魔法使いよりも優れた魔力を有している天才だった。

 5歳にして王宮魔法使いになったのも、私が推薦したからである。

 そのことは本人もいまだに知らないだろう。


 周りの反対を押し切って推薦した結果がラグールの引きこもりである。

 ラグールの才能を妬んだ魔法使いの陰湿なイジメが主な原因らしい。

 これは大分後になって知った、彼には悪いことをした。

 私がもっと配慮していればこんなことにならなかったのに。

 

 ラグールのことが気がかりでたまに魔法の研究室に乗り込んでは昔のように遊ぼうとした。

 しかし彼は魔法の研究が忙しいといわんばかりに無言で圧力をかけてくる。

 私のせいでラグールは人間不信になってしまったというのか。



 それからしばらくしたある日。

 せめてもの罪滅ぼしにと、今回の計画を思いついたのだ。


 娘に関しても同様だ。

 私は、魔族や魔物を恐れるあまり、かわいいかわいい娘を愛するあまり、城の中という限られた場所のみでの生活を強いてしまったのだ。

 娘が勇者に憧れを抱いているのは知っていた、利用するようで気が引けたが致し方なかった。


 そして、勇者。

 彼にも多大な迷惑をかけた。本当は勇者などではない、ただの異世界人だということは私だけの秘密である。

 だって、『予言の書』自体が私のでっちあげた作り話なのだから。


 魔王討伐などと大それたことをするような力はない。

 途中で投げ出して帰ってくるだろう、そう安易に考えていたのだ。

 少しでも外の空気に触れてもらえればそれだけで良かった、そう思っていたのだから。

 最近は、魔族をあまり見かけないという噂も聞いていたし、危険は少ないだろう。


 それが本当に、魔王のもとへいくなどとは思いものしなかったのだ。

 



---



 しばらくして、3人は帰ってきた。

 出発当日の頼りない少年少女とは違い凛々しい大人びた顔をして帰ってきたのだ。

 娘も今回の旅でいろいろと言葉に言い表せないさまざまなことを学んできたようだった。


 それに加えてさらにとんでもないことを言っいてた。

 魔族が食糧危機で大変だとか、魔族と友好関係を結ぶであるとか。

 難しい話は私にはさっぱりわからなかったが、私も覚悟を決めよう。

 なにせ私が発端なのだから、私がしっかりと締めねばなるまい。


「あい、わかった。魔族との敵対関係は今日で終わりじゃ、魔族と友好条約を結ぶぞい」


 ほかならぬ娘の願いでもある、今回ばかりは甘んじて全てを受け入れよう。


「お父様、あとバースも再び兵士として働かせますので」


 今なんといったのだ、娘よ。

 いくらなんでも盗みを働いたものを再び雇うなど……。


 いや、全て受け入れるといったばかりだ。例外中の例外だが認めるとしよう。

 バースは娘の面倒をよく見てくれていたしな。

 きっと理由があったのであろう。




 こうして、旅の話やこれからのことを夜遅くまで語り合った。

 冗談交じりにルシアの婿となってこれからも魔族との友好関係の維持につとめてくれるように頼むと、


「今回の旅でも仲間に助けられてばかりでしたし、何の役にもたてませんでした。それに俺は異世界の人間です、あれこれと口出ししていい立場ではないです。俺は勇者なんかではなく平凡な高校生です、元いた世界に戻り平凡に暮らします」


 割と真面目に返されてしまった。

 そうだな、勇者は平凡なただの異世界人であるということは私とこの勇者本人しか知り得まい。

 このことは胸にしまっておくとしよう。

 それにこれ以上この世界のことに巻き込むのもかわいそうである。

 

 けれど、これだけはいっておきたい。


「勇者よ、ありがとう」


 そして、正直すまんかった。

 でも結果よければ全て良しっていうから良いよね。

名前:リジウス

職業:国王

年齢:42

好きなもの:ルシア、散歩

嫌いなもの:勉強

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