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一匹狼の盗賊

今回は盗賊の視点です。

 俺はバース。

 アスラ王国の北東部の荒野で暮らす盗賊だ。


 貧しい家庭で育った俺は、いつしか金に執着するようになった。

 金さえあれば、兄弟で少ない食べ物を奪い合うことも母が病でなくなることもなかったはずだ。

 アスラ王国の兵士になって間もなく王家のお宝に手を出してしまう。

 しかし、盗みは失敗し国を追われることとなった。


 俺にはまだ小さい妹がいた。

 年が離れた妹は俺のことを慕ってくれていた。

 それなのに俺は……。

 もし俺が一時の気の迷いで盗みなんてしなければ、今でも兄弟たちと仲良く暮らしていただろうか。


 それからというもの無法者の俺が働ける場所などなかった。

 当たり前の話だ。

 しかし、働かねば食ってはいけない。

 俺に道は残されていなかった。


 盗賊になるしかなかったのだ。


 盗賊となった俺はもう普通の町では暮らすことなどできない。

 もし見つかって捕まりでもしたら、城の牢屋でその生涯を終えることになるだろう。

 

 だから俺は、魔物もでる荒野でたまにくる冒険者から金品と食糧を奪わなくてはならないのだ。


 常に死と隣り合わせの危険な仕事だ。

 だか生きるためには手段を選ぶことなどできない。

 こうなったのも自分で撒いた種だ、文句などいうまい。


 俺に仲間はいなかった。

 盗賊の自分がいうのもなんだが、盗賊は信用できないからな。


 最近は冒険者が激減している。

 なぜかここ数年は魔族が現れなくなったからだ。


 冒険者は魔族から町を守るのが主な仕事だ。

 守るかわりにお金をもらっているのだ。

 だが肝心の魔族がいなくなってからは冒険者も必要がない。

 お役御免である。


 そうなってしまうと、俺も盗む相手がいなくなる。

 このままでは生きてはいけない。

 ちくしょう、このまま俺は飢えてしんでしまうのだろうか。



---



 腹を空かして横になっていると、岩陰の向こうから話し声が聞こえる。

 どこかで聞き覚えがある声だ。

 

 声のしたほうを見つからないようにそっとみてみる。

 あの顔は……そうだ、ルシアだ。王女ルシア、間違いねえ。

 

 何たる幸運か、久々の獲物がこんな上物とはな。

 こいつを誘拐して身代金を要求すれば一生遊んで暮らせるだろう。


 だがさらに眺めていると男が二人いる。

 一人は黒いローブに身を包んだ魔法使い風の男。

 もう一人は、白いシャツに黒ズボンという冒険にはあまりにも不向きな服を着た少年だ。


 一国の王女だもんな、当然護衛もいるだろう。

 少年のほうは剣をもっているが、強そうには見えない。

 問題になるとすればあの魔法使いだろう。


 仲間などいない俺は、複数相手にできるほど強くはない。

 いつもなら冒険者が一人になるところを狙って襲うことが多い。


 正攻法では無理と判断した俺は先回りして罠をしかけることにした。

 王女以外の二人は意外にもあっさりと罠にかかった。

 運も味方してくれてるようだ。

 この二人は金も持ってなさそうだし用はない、王女だけで十分だろう。


「まぁ、勇者様、どうなさったのですか」

「み、見たらわかるだろう捕まってるんだよ」


 ロープに宙吊りにされながらなんとものんきなやりとりだ。

 勇者とか聞こえたがきっと気のせいだろう、勇者ならこんな単純な罠にかかるわけがない。

 このロープは特殊な魔法がかかっており、一度捕まれば簡単に外すことはできないし縛られたものは魔法も使えない。

 以前に俺が襲った冒険者がもっていたものを使ったのだ。


「悪いが王女様、一緒にきてもらうぜ」

「あなたは、バース……バースでしょう、なぜこんなことを……?」


 城の兵士をやっているときに、退屈そうな王女はよく俺にあそんでくれとせがんだものだ。

 王女は俺の妹にも似ていた、だからよく俺は妹のようにかわいがっていたのだ。

 だがあの頃の俺とは違う、今は盗賊だ。

 何を言われても覚悟を決めろ、俺がこの先生きのこるためにはこうするしかないのだ。


 俺はもうあの頃には戻れないのだから。

 バースと久々に名前を呼ばれた俺は、少し動揺しながらも王女を連れてその場を後にする。


 本当にもうあの頃には戻れないのだろうか。

名前:バース

職業:盗賊(元兵士)

年齢:25

好きなもの:お金、妹

嫌いなもの:貧困

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