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世間知らずのお姫様

今回は姫の視点です。

 私の名はルシア、アスラ王国の王女。

 勇者と共に魔王を倒す旅の途中だ。


 私は、この日を待ちわびていた。

 幼い日に今は亡き母に読んでもらった絵本『勇者の冒険』をきっかけに勇者と共に冒険することを夢見てきた。


 私はいつも一人ぼっち、お城の外にでくることも許されない。

 王様である父に頼んでも


「外は魔物や魔族がいて危険だから」


 という理由で外出させてはもらえなかった。


 父は私のことを心配してそうしてくれていることはわかっていた。

 けれど、毎日毎日お城の中で過ごすのはあまりにも退屈だった。


 それもあって私は剣の修行に勤しんだ。

 

 強くなれば外出を許可してくれるかもしれないということはもちろん、いつかくる勇者と共に旅に出られるように強くなりたかった。

 勇者なんて所詮伝説、本当にくるかどうかなんてわからない。

 でも私はなんだかいつか私をこの鳥かごから解放してくれる勇者があらわれる、そんな気がしていたのだ。


 だからあの日、勇者が召喚されたと聞いたときは本当にうれしかった。


 これで、やっと、城の外に行けるかもしれない。

 でも父のことだ、そうやすやすと認めてはくれないだろう。

 そう思っていた。


 けれど違った。

 私が勇者と共に行きたいと申し出ると、無言で頷き承知してくれたのだ。


 うれしかった。

 それと同時に不安でもあった。


 でもきっと大丈夫、私のそばには勇者がいてくれるのだから。




---




 町についた私たちはすぐに宿屋で眠りについた。

 私も含め、みな初めての冒険で疲れていたのだろう。

 

 翌朝、宿屋の窓から眺める町の景色で心を躍らせていた。

 城の窓から眺める景色とは何か違う、住民たちの笑顔やのどかな風景がそこにはあった。


 魔物との戦いのことなど微塵も感じさせない平和なひと時だ。


 こうして、いつもと違う景色を眺められるのも連れ出してくれた勇者のおかげだ。

 感謝してもしきれない。

 

 絵本のような強き勇者というわけではなかった。

 昨日はずっと魔物と戦おうとせずに見ているだけだった。


 それでも私は勇者に感謝する。

 勇者がいなければこうして外にでることもできなかったのだから。


 だから勇者は私が守ろう、たとえ何があっても。

 そのための剣でもある。

 

 頭がよくなかった私は魔法を使うことはできなかった。

 ラグールは覚えてないかもしれないが、私は一度魔法を習いにいったことがあるのだ。

 そのときも彼は無言だった。

 無言で一冊の魔法書を渡したのだ。


 私にはその魔法書は全く理解できなかった。

 才能がないのだと、そう思った。


 だからこそ剣の腕を磨く必要があったのだ。

 魔法が使えないのであれば勇者と共に旅立つには強さが必要だ。

 それで退屈な時間を忘れるかのごとく私は剣術に没頭した。


 そんなことを考えてると勇者が目を覚ましたようだ。


「おはよう、ルシア」

「おはようございます、勇者様」

「勇者様、か……やっぱり夢じゃなかったんだな」


 どことなく頼りない少年は、眠たそうに瞼をこすりながらどこか寂しげな笑顔を見せていた。

 私は、勇者がどういう経緯で召喚されたかを知らない。

 異世界からの召喚ということは知っていた。


 彼にも、勇者にも自分の生活があっただろう。


「勇者様はこの世界に召喚されたのは……その迷惑でしたか?」

「いや、そんなことはない、不安もあるけど俺が召喚された意味がきっとあるはずだから」

「そうですか、あの勇者様の世界のこと、少し聞いてもいいですか?」


 少しでも知っておきたかった、興味もあった。

 でも話に聞いても不思議なことばかりでよくわからない。

 魔法のない世界、デンキ? クルマ? ガッコウ?

 わからないことだらけだったけど、私は楽しく話を聞いていた。


 そうしていると、ラグールも起きてきて出発することになった。


 昨日に引き続き見知らぬ外の世界が待っている。

 不安でいっぱいだけど、それ以上に期待がいっぱいだった。

 きっと勇者も同じなのかもしれない。



「さ、勇者様、参りましょう」


 そういうと、私は笑顔で勇者の手を引っ張り町の外へと赴くのだった。

名前:ルシア

職業:王女

年齢:18

好きなもの:勇者、冒険

嫌いなもの:退屈な日々

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