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金色の吸血姫  作者: 杞憂
二人のエピローグ
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夢のかけら

「まず初めに言っておきますとね~」

 この物語の主人公である榊原優介の幼なじみ、大場このはが語り始める。

「これは夢なんだよぉ~。だって、本編では最も影が薄い私が進行役なんだもん~」

「このは…涙目になってるよ…」

 切実だ。そして痛切の極みだ。


 どうやらここは僕が見ている夢の中らしい。夢を夢として認識している状態だ。

 ここには真っ白い空間しか存在しない。僕とこのは以外には誰もいなかった。

「私ねぇ、誤解してたの。聞いてくれる?」

「う、うん」

「幼なじみってだけで、ヒロイン役だ~、わぁーいって思ってたら、全然出番ないんだもん」


 あくまで夢の中の話である。現実の彼女がそんなことを思ってるのかは分からない。

 でもなんだか本当のことのように聞こえて、すごく返答に困る。

「最近忙しくて、このはとは基本的に学校でしか話せなかったもんね」

「本当だよ~。しかも展開的に学校に居る時間より家に居る時間の方が長くってさ~」

「"学園"ってなってるのに、学生らしいことほとんどしてないよね」


 出ましたメタ発言。さすがは夢の中、何でもありです。

「しかもゆうすけと紗織ちゃんの雰囲気がなんだか怪しいし…」

「え、怪しいってなにが?」

「とぼけるならそうすればいいともさぁ」

「??」


 全く分からない。でもやましいことは何一つないので思い当たらなかった。

「…あたしは一生片思いで終わるのよ、きっと」

 横にはいつの間にか紗織がいた。ため息混じりにそう呟く。

「逆に両思いになっちゃったらそれはそれで問題でしょ~?」

「禁断の愛だなんて分かってるわ。それでも好きなんだもん……だから、あたしは側に居れればそれで良いの」


「…紗織ちゃんて、なんか大人~」

 このはが勝負に負けたように言った。禁断の愛って何のことだろう?

 気が付くとその場にはさらにエリーゼとラウラさんが増えていた。

 二人とも難しい顔をしている。

「…この話で終わりにしては、なんか消化不良ではないかの?」

 またもやメタ発言。少しは自重してください。


吸血姫(我ら)と吸血鬼の関係がどうしてあんなに悪いのかとか、そもそも何が違うのかとか、あまり触れられておらぬしな」

「全く完結した感じがしません」

 僕に言われても困る。そういうのは、もっとこう…メタ世界の…

 僕たちの"親"にでも言ってもらわないと。


「おーい、聞こえておったら返事をするのだっ!」

 エリーゼが天に向かって叫ぶ。すると、天から本当に声が返ってきた。

「何でしょう?」

 居たんだ……。さすが僕の夢。

 ここでは暫定的に"天の声"と名付けておこう。


 エリーゼは"天の声"に不満をぶちまけた。

「おぬしのせいで中途半端に終わってしまったではないかっ! 責任取らぬかっ!」

「ええ!? す、すみません…」

 天の声、弱いな。

 少し考えたようで、天の声は解決策を出す。


「一旦ここで締めて、より"学園"色の強い続編を書きましょう………気が向いたら」

 これ、あくまで夢ですから。実在する人物、団体、組織名とは……

「気が向いたらってなんだーっ! その一言が余計なのだーっ!」

「まあまあエリーゼさん。今は私が進行役だから私に任せて?」


「むぅ? ではおぬしに任せたぞ」

 エリーゼからこのはにバトンタッチ。何を言うのかと期待していると、

「次はもっと私の出番を増やせーーーーーーっ」

 このはの絶叫で、僕の夢は一度途切れる。



 ここが本当に夢の世界であるならば、突如として場面転換したり通常では起こり得ないことも起こる。

 僕は再び世界を捉える。

 いま僕は自分にとって複雑な心情を思い起こさせる場所にいた。

 ……保健室だ。

 僕はベッドに上半身を起こした状態でいた。


 何故ここにいるのかは自分でもよく分かっている。

 これは、かつての僕自身の記憶だ。

 よく見る悪夢だった。

 辛かった頃の記憶をフラッシュバックさせるような夢なのだ。

 この夢を見るのを、僕は何よりも恐れていた。


 ……でも今は不思議と、恐怖や不安を感じなかった。

 僕は、当時に蛭賀くんとこのはが言ってくれた、救いの言葉を思い出す。

『優介、怖がらなくていい。逃げなくて良いんだ。お前は一人じゃない、俺たちがついてる! だから、ここから出るんだっ、前に進むんだっ! 俺たちと一緒にっ!!』

 ……僕は一人じゃない。いつも周りには皆がいてくれた。


 その時、エリーゼが目の前に現れた。ラウラさん、紗織、このは、蛭賀くん、母さんに父さん。

 次々に僕の大切な人たちが現れる。

 皆は静かに微笑んで、僕を保健室の扉、夢の出口へと招く。

 僕はもう、ここに束縛される必要はない。

 前に進もうという意志次第で、鎖はいとも簡単に断ち切ることが出来るのだから。


 扉の向こう側には、もう一人の少女が待っていた。

 吸血姫と化した状態の、女の子になった僕自身だ。

 彼女は手を広げて僕を呼ぶ。

 過去の僕は、現在(イマ)の僕へと統合されていく。

 ……それで構わない。その全部が、僕なのだから。


 ――――さあ、共に行こう。もっともっと光り輝く、僕たちの未来(あした)へ――――


 僕達は終わらない夢を見る。

 いつの日もいつまでも、幸せになることを願い続けて。


 End

長かったような短かったような……とにかく、何とかこの作品を一区切りさせることが出来ました。読み返すと、話が破綻しているところがちらほらと…

作者の力不足ですので、大目に見てやってくださいm(__)m

気付いたら楽しく書いていました。なので作者の趣味丸出しです。

続編は、今の所考え中です。もしかしたらあるかも。

こんな拙作をここまで読んで下さった方々に、深くお礼申し上げます。

お気に入り登録してくれた方、ありがとうございました。励みになりました。

それでは、またの機会が来ることを祈って……

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