これが全ての始まりってわけで
二人の女の子がキスしようとしているところを見てしまった僕。
もうね、メモリ不足です。頭で読み込みエラーが発生しました。
「やばいやばいやばい、見つからないうちに逃げなきゃ…」
僕はとっさにその場を離れようとして、だけど失敗した。
慣れないスカートでバランスが崩れ、転んでしまったのだ。
当然音があちらまで聞こえるわけで……
「誰だっ!」
エリーゼの鋭い声が響く。
しまったと思えど既に遅く、うつ伏せで倒れている僕は呆気なく見つかってしまった。
キャーと叫びながら逃げて行くもう一人の女の子。見られているとは思わなかったのだろう。
可哀想なことしちゃった、かな?
「むぅ、逃げられてしまった。おぬし何奴だ」
「し、死んだフリ~…」
「あほか」
僕の目の前に来て、無理やり起こさせるエリーゼ。
彼女と目が合ってしまい、僕は急に恥ずかしくなった。
「ふむ、あほの子にしては、意外と可愛いの」
(そういえば、僕まだあの格好を……)
自分の状態を思い出し、なおさら赤面する。もう茹でだこのようだった。
「あ、あの、悪気はなかったんです。たまたま見ちゃって…」
「おかげで失敗したではないか。おぬし、責任を取れるな?」
「は、責任…?」
「逃げたあやつの代わりになってもらおう。それで許してやる」
そ、それってキスしろってことだろうか? そんなの無理だ、いきなりすぎる!
「か、勘弁してください。僕、心に決めた人が……」
いないけど、今は嘘でもつくしかない。
「ん、僕とな?」
「あ…しまった」
「……おぬし、よーく見ると、見たことある顔だのぅ」
「何のことでしょう、オホホホ…」
「ていっ」
エリーゼが僕のウィッグを取り、ぼろが出てしまう。
「あうっ…」
「ほう、よぉく似合っておるな。男のくせに」
金髪少女は黒い顔で笑っている。正直倒れそうです、僕は。
「我がクラスの同朋であったか、これから脅すことになるのはいささか忍びないな」
「脅されるんですね、僕」
「無論、このことをばらされてもいいというなら別だぞ」
「嫌ですお願いです許してくださいそれだけは」
「うむ、ではさっそくおぬしに命ずるとしよう」
何を命じるというのだろう。パシリだろうか。
「おぬしを我の、吸血姫エリーゼ=アマーリア=ミュンヒハウゼンの下僕に任じてやろう!」
「………………はい?」
こうして僕は、予期せずして金色の吸血姫の下僕に就任してしまったのだった。
続く?