表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/13

エピソード7 共同絶交

Episode7

登場人物

加地 伊織:主人公

吾妻 碧:パッと見は体育会系女子な 幼馴染み

三船三十郎:パッと見はまじめな会社員な 武術の師範

難波 優美:パッと見でゴスロリな 高飛車少女

室戸 達也:パッと見は韓流俳優な 長身のイケメン


伊織:「実はこの間、凄く強い人を見たんです。 警官が二人がかりで全然歯が立たなくって、なんか、一寸触れただけで警官はうずくまっちゃって、後で聞いたら背骨と内臓にダメージを受けて全治数ヶ月の重体だったんです。」


その日の朝は拳法の練習日だった。 練習とは言っても、そのほとんどは 未だに 立ち方、姿勢の矯正である、


三船:「世の中には強い奴はいっぱいいる。 悪事に手を染めているのは残念な事だが、」

伊織:「触れただけで相手にダメージを与えるなんて事どうすれば出来るんですか?」

三船:「骨や内臓にダメージを与えるには、それなりの力を伝えなけりゃ無理だ。 触れただけのように見えてたとしても同じ事だ、」

三船:「打撃に使うのは上半身の筋肉だけではない、むしろわき腹の筋肉、上半身を回転させる腰の筋肉。それに地面で掌を支える脚の筋肉だ。 地面に向かって発した力の反発力と言い換えることも出来るかな。」


三船:「掌を相手に触れた状態で腕や肩を動かさないように見えても、これら全身の力を発すれば、相手に十分なダメージを与える事は可能だ。」


三船の掌がそっと伊織の胸の上に触る。 何が起こるかと身構えた瞬間、衝撃が身体の奥の方に入った。


伊織:「ぐふぅっ、、」


何のモーションも見えなかった、それは、とても不思議な感覚だった。 身体の表面にそれ程の痛みは無い。 ただ、波紋の様な衝撃がしばらく経った今も体内を反響し続けている。


三船:「大事なのは、力を他所へ逃がさない事だ、力の流れが途切れたり、折れ曲がったりすれば、相手に十分な威力を伝える事は出来ない。」「だから、姿勢と間接を固めない事が大事なんだ。」


三船:「それに、自分の力だけで相手にダメージを与えることは難しい。 相手が強ければ強いほど、その相手の力を利用する事を考えるべきだ。ボクシングで言うカウンターだな。」


三船:「更に言えば、打撃を受ける事を意識している相手、踏ん張って気合の入っている部分にいくら撃ち込んでも、ダメージを与える事は難しい。 相手が意識していない、こらえていない、もっと言えばこらえられない処に打ち込む方が、ダメージを与えやすい。」

三船:「こらえられない状態というのは、つまり崩れた状態だ。 だから打撃の前段階で重要な事は、敵を崩した状態にする事だ」


再び三船の掌が伊織の胸の上、肩口に触れる。 流石に先ほどの体験があるから筋肉が強張り、自然と衝撃に備えようと身構える。 今度は、三船の掌はそのまま肩口を上の方に押し上げる、胸を逸らされるような感じで、気がつくと自分は後ろに押されている? 思わず押し返そうと踏ん張るが、一方で肩口は胸を 踏ん反りかえらされる程に押し上げられている。 もはや腰は後ろに折れ曲がり今にも倒されそうな状態。 何とか後ろにのがれようとする、というか転びそうになるのを防ごうとあとずさるが、 何時の間にか三船の掌は、肩口からスーッと胸をなぞるように下に、、、自分の身体は前に九の字に折れ曲がって、その場に尻餅をついていた。


三船;「相手の踏ん張りにくい部分をずらしてやる、そうすれば相手は崩れてくれる。 そうして意識が離れて踏ん張れなくなっているところに打撃を加える。 あくまでも撃って効果のあるところを撃つんだ。」

三船:「これを相手が自分を打ち続けている間にやる、 そうすれば敵の力と自分の力の両方で相手の急所にダメージを与える事が出来る」


三船:「実際にやってみた方がわかりやすいだろう。 一つ一つやってみよう」

伊織:「いや、無理です。」



登校すると、明らかにいつもと雰囲気が違っていた。 幾ら本音で付き合える友達がいないとは言え、これまで周りは普通に接してくれていた。 それが、今日からいきなり、誰一人としておはようの挨拶にさえ返事してくれない。 


伊織:またか。


別にはじめての事ではないからそれ程ショックは無いけれど、何だか気分が悪いし、居心地も悪い。 面倒くさい。 こそこそと、皆が自分の事を話している様な気がする。 何か、急に避けられるような事を自分はやったのか? 例の昼食を断った件だろうか? まさかと思い隼人の席を見るが、見当たらない。 どうやら休んでいるらしい。 


その日は結局、一日誰とも口をきかなかった。 ちょっと声をかける様な場面でも、偶然か、意識的にか、皆の方から自分を避けるように離れていく。



次の日は更に状況が悪化していた。 移動教室の教室変更が伊織にだけ伝えられなかった。 誰も居ない教室に一人残されて、子供じみた苛めに思わず吹き出してしまう。 もはや、クラス全員から避けられている、無視されている事は明白だった。 このままいけば、いずれ持ち物に悪戯されるとか、机を隠されるとか、より直接的な被害にエスカレートしていくかもしれない。


相変わらず隼人は休んだままだ。



それでも前の時よりも深刻にならなくなったのは、もしかすると学校以外の付き合いが増えたからかもしれない。 拳法を教えてくれる三船や、何故だか毎晩の様に電話をかけてきてくれる碧が自分とつながっていてくれる事で、学校では空気のように扱われていたとしても自分を見失わずにすんでいるのかもしれなかった。


碧:「それでさ、排気ガスが多いと鼻毛の伸びが早いんだって言うの、…ホントだと思う?」


その晩は、何故だか鼻毛の話になっていた。


伊織:「どうでも良いけどさ、女が男に電話かけてきて、普通、鼻毛の話なんかするか?」

碧:「別にいいじゃん。 あんたに恋愛シチュエーションなんか求めてないって…、」


碧:「あっ、それとも、あんた もしかして、私のこと、」

伊織:「なんだよ。」


勿体つけたように一呼吸置いて、しかも声色まで変えて、、


碧:「あんたさ、彼女いるの?」


伊織:「なんでそんな事聞くんだよ? お前はいるのかよ? いや…いたら、毎晩俺になんか電話してこないよな」

碧:「ちょっと、今の失礼じゃない? これでも私結構もてんのよ? それよりあんたの話よ!」

伊織:「いるわけ無いじゃん。 俺は、…色々と忙しいんだよ。」


電話の向こうでニヤニヤ笑う碧の顔が目に浮かぶ。


碧:「そっか、そうかそうか、、さびしいねぇ」

伊織:「お互い様だろ。」


電話の向こうで勝ち誇ったような碧の顔が目に浮かぶ。


碧:「じゃあさ、可愛そうだからイベントには 義理で 相手したげよっか。 クリスマスとか、バレンタインとかさ、何にもなかったら悲しいでしょ。 …あっ、勿論こっちが暇だったら、だけどね、」


何だか上から目線なのが腹が立つが、正直そうしてもらえると嬉しいかも、


伊織:「くれるってなら、もらっておいてもいいけど。」

碧:「無理すんなって、 それじゃあさ、、、」


ぷつんと通話が途切れた。


すかさずかけ直してみる。 つながらないと言うアナウンスが流れる。 

3分程経ってからもう一度かけなおす。 やはり同じ。


伊織:「何か、変だよな」


いつもの通り、後先考えずに真夜中0時過ぎの町を自転車で走り出していた。 碧の家まで行って、それでどうするつもりだと言うのだろうか? 自分自身に問いかけながら、それでもとにかく行ってみずには居られなかった。


やがて、何時の間にか自分が異様な風景に遭遇している事に気が付いた。


伊織:「何だ、ここだけ停電?」


家々の電気も街灯も、信号機さえも消えている。 何台かの車が止まったまま道路の真ん中に放置されていた。 本当に真っ暗だ。 腕時計は、あれから20分が過ぎた事を示していた。


暗闇の中、一箇所だけまばゆい光を放っている処が見えた。 街灯でも車でもなく、何故だか、地面が光っている。

ろうそくとか、花火とか、そういうレベルの明るさではない。 地面そのものがサーチライトの様に閃光を放っている。


その光の両側に対峙する影が見えた。 それが知った顔だと気付いた時、自分でも無意識のうちに立ち止まっていた。 これ以上近づく事は危険だと、何故だか分かっていた。


一人は瑠奈らしい。 一方の凸凹コンビは、恐らく十字架ピアスと化け猫の使い手。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ