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エピソード6 アイドル

Episode6

登場人物

加地 伊織:主人公

池内 瑠奈:危険な匂い?の 女刑事


その日の放課後、自分は瑠奈と二人きりで学校の近くの喫茶店にいた。 通学の度に前を通っていてよく見知っている店だったが、実際に入るのは初めてだった。 所謂チェーン店ではなくて、個人経営のおしゃれで落ち着いた雰囲気の店である。 カウンターからコーヒーの良い匂いが漂って来ていた。


店には他に一組の客しかいないようだった。 夕方の喫茶店って空いてるんだな、等と どうでも良い事を考えつつ。 自分達は店の一番奥の窓際の席に座った。 どっから見ても不釣合いなカップルである。 男は頼りなさそうな身長160cmあるかないかの学生服。 女は雑誌の巻頭グラビアに出てきそうなモデル体型の美女。 周りの目には一体どういう関係に見えているのだろうか。


伊織:てっきり取り調べなら警察の事務室に連れて行かれると思っていたんだけど。 この人、本当に刑事なのだろうか?


瑠奈:「おごって上げるから、気にしないで何でも好きなもの頼んでいいのよ。」

自分は遠慮がちにコーラを頼み、瑠奈はカプチーノを注文していた。


瑠奈:「それじゃあ、まず 最初に、見て欲しいものがあるんだけど、いいかな。」

伊織:「え、あ、はい。」


年上の女性の照れた様な表情に少し戸惑いを覚える。


瑠奈:「あの、テーブルの下、見て…くれる?」

伊織:「えっ、テーブルの下、ですか?」


そっと、テーブルの下を覗き込む。 当然、正面に座った女性の脚が見える。 膝丈のスーツスカートからすらりと伸びたストッキングのふくらはぎ、形の良い足首、踝、踵の低めな黒のパンプス。 確かに綺麗な脚だが、それ以外には何も見当たらない。


その時、ウエイトレスがタイミング良く?コーラを運んできた。 一体この二人は何をしているのだろうか、と怪訝そうな表情で伊織を見下しながら、事務的にコーラのグラスをセットして、無言のまま立ち去る。


伊織:「何も、…無いみたいですけど。」


姿勢を戻して、どうしてだかささやき声で告げる。


瑠奈:「おかしいな? もう一度、よく…見てみて、」


何故だか彼女もささやき声になってる。 なんだか、いけない事をしている様な気分になってくる。


伊織:「本当に、…いいんですか?」


瑠奈が小さく頷く。 


瑠奈:「その方が、これからの二人の関係にとって良いと言うか。 色々わだかまりがないって言うか、 最初にクリアしとけば、…気が楽って言うか。」


瑠奈は、目を逸らしながら更に小さな声でささやいた。


瑠奈:「…早く、人が来ちゃう。」


意を決するというか、ええい、ままよ! というか、いよいよテーブルの下に潜り込む。 綺麗な膝が見える。 少しだけ開いた両膝の奥は、、、、


伊織:「…暗くて、よく見えないです。」

伊織:「もう少し、脚を開いてもらえれば、」


瑠奈:「えぇっ、、開かないと…駄目?」


瑠奈の頬が自然と赤みを増す。 勿論テーブルの下を覗き込んでいる自分には実際そんな表情は見えないのだが、 少し裏返った声が、そんな情景を確信させた。


瑠奈:「し、しょうがないよね。 …これで、どうかな?」


瑠奈の潤いを帯びた唇が一文字になって少しゆがむ。 いや、実際には見えないのだが。

少しだけ膝が開いて、太ももの内側にかすかな光が届く、伊織は殆ど椅子に寝転がるようになって覗き込んでいた。


伊織:「もしかして、…グレー、ですか?」


暫しの沈黙、


瑠奈:「グレー? へっ?」


突然瑠奈が、手で両膝を押さえる。


瑠奈:「違う! そこじゃなくて、もっと下、足元の方!」


事態が飲み込めないまま、視線を下に移す。 ストッキングのふくらはぎから、生暖かな甘い匂いが見える様な気がする。 その足元、両踝の間に、…何か陽炎のように揺らめくものが見えた。 


明らかに別の本能が、動悸を激しくする。 それは、かすかに赤っぽい半透明の実体の無い幽霊の様な、雄鶏?


伊織:「これって、」


急いで椅子に座り直してみると、 テーブルの上の瑠奈の頬は真っ赤だった。


瑠奈:「見た?」


恥ずかしそうな上目遣いの表情が、やっぱり可愛い。 年上なのに。


伊織:「す、すみません! つい。」

瑠奈:「じゃ無くって! 鳥!」


瑠奈の顔が更に真っ赤になった。



瑠奈:「先日の事件のときに貴方たちが見た動物というのも、これと似てたかな?」


カプチーノを運んできたのは店のマスターだった。 瑠奈の顔をさり気に見回して。 一言挨拶してからカウンターに戻っていった。 どこかの芸能人か わざわざ確かめに来たらしい。


伊織:「はい、この前見たのは、猫とトカゲでした。 これは鳥なんですね。 でも、透明で幽霊みたいなのは同じです。 これって何なんですか?」

瑠奈:「詳しくは分からないの、ただ、この鳥は何時でも私の傍にいて、普段は姿が見えないんだけど、私が呼ぶと、こうして姿を現すの」


瑠奈は左手の掌を開いて見せた。そこには十字の傷跡があった。


瑠奈:「私はある事件の捜査中にある組織につかまって、多分、ここに卵みたいなものを産み付けられたの。 それ以来この鳥が現れるようになった。」


碧の傷と同じだ。と言う事は 碧にも何か幽霊みたいなものが憑いているのだろうか。


伊織:「組織…って?」


碧を襲った、黒衣の女? あれって、確かタイガーウルフとか言う不良グループ?


瑠奈:「ごめんなさい、その事に関しては、未だ言えないの。」


瑠奈:「この幽霊動物達には、超能力みたいなものがあって、普通では信じられないような事が出来るの、例えば、この子は、何でも触れたものを熱する事が出来る。 その気になれば、鉄でも熔かせる位。」


そう言った瑠奈の顔が、一瞬、今までとはまるで別人の様に妖しく見えた。

確かに、あの幽霊猫やトカゲがいた現場では、鉄板がひとりでに変形したり、目の前で雷が発生したり、常識では考えられないような現象が起きていた。


伊織:「どうして…僕に、そんな事を話すんですか? それって、普通 捜査上の機密だったりしないんですか?」


瑠奈:「勿論とても秘匿度の高い情報だから、警察の中にもこの事を知る人間は極わずかしかいない。 貴方にも、全てを話せるわけではない。 でも、どうしても貴方の協力が必要なの。 だから、キチンと状況は知っておいて欲しいんです。」

伊織:「協力って、僕には大したことは出来ませんよ。 知ってる事はもう全部話しましたし。」


瑠奈は暫し沈黙し、考えを整理しているようだったが、やがておもむろに口を開いた。


瑠奈:「貴方達を襲ってきた連中は、必ずまた吾妻さんに接触してきます。 何故なら、吾妻さんにも同じ幽霊動物が憑いているから。」


伊織:やっぱり、…そういう事なんだ。


瑠奈:「そして、今の警察力ではこの幽霊動物の超常現象による犯罪を止められない。 でも、もしかしたら、私と吾妻さんの幽霊動物なら、対抗できるかもしれない。」


伊織:「吾妻、さんには、この事は話したんですか?」

伊織:「…それに、だとしたら、余計に僕なんか、何の役にも立てないですよ。」


瑠奈:「先日の事件で起こった事、その目で見た不思議な現象の全てをもう一度詳しく教えて欲しいの。」

瑠奈:「後、この件で吾妻さんの力になれるのは、多分、加地君だけだと思うから。」



喫茶店での密談?の後、瑠奈と分かれて一人帰路につく。 何時の間にか空は曇、今にも雨が降り出しそうだった。


瑠奈:「吾妻さんには時期を見て話をします。 それまでの間は、この事は二人だけの秘密にしておいて下さい。」

瑠奈:「何かあったら、直ぐにこの番号に連絡してくださいね。」


自分の携帯には、幽霊動物関係のアドレスが着々と増えていった。

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