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エピソード5 不良グループ

Episode5

登場人物

加地 伊織:主人公

吾妻 碧:もはやバカップルな 幼馴染み

古城 隼人:やけにお節介な 幼馴染み

鳥越啓太郎:何処か裏のありそうな 刑事

池内 瑠奈:外見は美人女優のような 刑事


夕方近かった、鉄屑と化したハッチバックのむき出しの鉄板に西日が反射してまぶしい。 現場には立ち入り禁止の黄色いテープが張られていた。 その中に居る自分が何だか現実の事とは思えなかった。


昼間に警察で会った鳥越という刑事が来て、事情を聞いてきた。 碧は、別のところで他の刑事と話をしている。


鳥越:「超能力少女と化け猫が、車をスクラップにして、警官二名を全治3ヶ月の重体にした犯人だって言うのか。」

伊織:「いえ、警官に怪我させたのは一緒に居た男の方です。」


その男は長髪の痩せた長身で妙に姿勢がよく、嫌味なくらい美形で、耳に十字架のピアスをしていた。


鳥越:「後、ピストルの砲身を切断したっていうのもあったな」


刑事が、そんなオカルト話を黙って聞いている事の方が、不思議といえば不思議だった。


鳥越:「現時点で分かっている事は、君らが得体の知れない術を使う連中に狙われているって言う事だけか、何でだ?」

伊織:「分かりません。これと言って身に覚えは無いです」

伊織:「でも結局彼らは、僕たちには何もしていきませんでした。 どうしてでしょう?」

鳥越:「さあな、分からん。」



その夜、碧から携帯に電話がかかってきた。 最近、伊織との夜の携帯連絡は二人の日課になりつつある。


碧:「確かに猫みたいなモノがいた、それにトカゲみたいなのも。 目の錯覚とかじゃなくて、映画みたいだったけど、トカゲが私の頭の上に乗った時に、触れた感じがしたんだから、確かに実在する何かよ」 


何かを見たのは確かだ、しかしあの猫だかトカゲだか分からないものは、自分の身体をすり抜けて行った。 それは実体を持ったものにはありえない事だった。


伊織:「あいつら、また来ると思うか?」

碧:「分からないけど、誰かが怪我をするのは、もう御免だわ。」

碧:「それよりさ、この警護もう沢山! 自由に出かけらんないし、学校や塾に行くのだって刑事がついてくるし。 今度は一日中警察に監視されてる気分よ。 あんたん処も同じ?」

伊織:「いや、今のとこ、うちには警護はいないみたい。 夜の見回り位かな? お前は誘拐されかけてんだから、仕方無いんじゃないの?」

碧:「あんたさあ、もっと親身になってかまってくれてもいいんじゃないの? 同じ危険を乗り越えた仲間としてさ、」


仲間なんだ。 俺達、何時の間にか仲間に昇格していたのか。


碧:「篭りっきりじゃ、身体腐っちゃうよ」

伊織:「ネットでもしてればいいじゃん。 俺なんか一日8時間はネットつないでんぜ。」

碧:「そんな根暗な事しないわよ、健康なんだから、どっか遊びに行こうよ。」


何だか、しらっとデートに誘われたのだろうか? もしかして。


伊織:「無理に決まってんじゃん、だいたいお前 何時また襲われるか分かんないんだろ?」

碧:「つまんないなぁ! 仕方ないからあんた 何か面白いもの持って家に来てよ。」


えっ、今度は家に誘われた? いや、伊織。勘違いしちゃ駄目だ。


伊織:「や、やだよ、なんで女の家になんか行かなきゃならないんだよ。 誰か他の友達に頼めばいいだろ。」

碧:「あら、嫌とは言わせないわよ。」

碧:「あんた、こないだドサクサ紛れに私の胸揉んだでしょ! この落とし前はキチンとつけてもらうからね」


覚えてたのか、、

きっと今自分は、これ以上ない位赤面しているに違いない。 顔が、熱い。


伊織:「落とし前って、、あれは、不可抗力じゃん、」

碧:「そんな言い訳が世間一般に通用すると思ってんの? あんたの人生終わるわよ?」


何かキャラ変わってない? 碧さん。。。


伊織:「お、おまぇ、それ脅迫? 落とし前って、一体、どうすりゃ良いんだよ?」

碧:「そうだな、先ずは同じ事やりかえすとか、かな。」



次の日の昼休みに珍事が起こった。 これまでしゃべった事も無いクラスメイトから、昼食の誘いがあったのだ。


級友1:「一緒にお昼食べないか?」

級友2:「ほら、加地っていつも一人で食べてるじゃん。 たまには俺らと一緒に食べるってのはどうかな?」


何で今更? 自分なんかを誘うのだろう。 事件の被害者で、色恋沙汰の噂があったりするからか? どうせ興味本位に決まっている。 色々根掘り葉掘り話をさせられた後、他の皆だけで集まってまた馬鹿にするんじゃないのか? ここは体良く差し障り無く断った方が良いに決まっているのだ。


伊織:「あっ、ゴメン、今日 昼休みにやらないといけない事があって、本当にゴメン。」

級友1:「ああ、なら良いんだ。 別に無理にじゃないから。」

伊織:「ゴメンな、又誘ってな。」


そう言って、元から計画していたかのようにいそいそと教室を出て行く。 当分は戻れないな。 お陰で昼飯を食べ損ねてしまった。


級友3:「何だよ、せっかく誘ってやったのにさ、」

級友4:「いい気になってんじゃねえの?」


陰口が聞こえたような気がした。


こんな自分が嫌いだ。 でも、皆の輪の中に入っていくのはやっぱり怖い。 もしかしたら碧も自分をからかっているだけなんだって疑っている自分が心底嫌いだ。 だけど、どうしようもない。


世の中には自分の思った通りに世界を回していける人間と、誰かが回した世界に翻弄される人間がいる。 自分は後者で、隼人は前者だ。 人気を避けたはずの部室棟裏の空き地で、きっと必然的に隼人に捕まった。 相変わらず柄の悪い取り巻きと一緒である。 タバコを吸ってる奴もいる。 


隼人:「おう伊織! 珍しいな、お前がこんなとこ来るなんてさ。」


不良達がニタニタ笑いながら伊織の事を値踏みするように眼つけて来る。 そうは言ってもうちの学校の不良達は自分には絡んでこない。 隼人の仲良しだからだ。 お陰で1年生の頃からこんなにターゲットにされやすいキャラにもかかわらず、比較的平穏な高校生活を送る事が出来ている。 その点だけは、本当に隼人に感謝していると言っても良い。


伊織:「ああ、ちょっと散歩したくなってさ。」


さっさとこの場を立ち去りたかったが、そういう訳には行かなかった。


隼人:「待てよ、伊織、お前に言っときたい事があるんだ。」

隼人:「この間言ってた学習塾跡に出入りしてた連中の事、ちょっと分かったぜ、コロウ、虎と狼って書いてコロウ、タイガー&ウルフって呼んでる奴もいる。 最近出来たグループで、売出し中って訳でかなり派手な暴力もやってるらしい。」

隼人:「伊織の指の仇、俺が取ってやるよ。」


不良連中の顔が、心なしか引きつって見えた。 やっぱり揉め事は嫌なんだろうな。


隼人は、どういうつもりでそんな面倒な事に首を突っ込みたがるのだろうか? ただ単に暴力沙汰が好きなのか、学校の生徒がやられたのを放っておくのは不良グループのトップとして面子が立たないからなのか、本当に自分の事を思ってくれているからなのか。


伊織:「いいよ、もう。 それよりもうあんなゴタゴタには巻き込まれる事のほうがゴメンだ。」

隼人:「お前さ、誰かを助けようとしてやられたってのは、本当か?」


やっぱりその話題に持っていくか。 最近学校で話題になっている事といえばこの事である。 もてない三枚目の加地が、女を助けようとして無様にも逆にボコボコにされた。 笑いどころ満載のネタなのだろう。


伊織:「ああ、中から叫び声が聞こえて、それで見に行ったら、、、やられた。」

隼人:「それで、その女の子はどうしたんだ?」

伊織:「騒ぎが大きくなって、人が集まって来て、それで奴らは逃げていったから、それ以上酷い目には合わずに済んだみたいだ」

隼人:「じゃあ、伊織がその娘を助けたも同然って事だよな、その後 その娘とはどうなったんだ?」


お前はいつからそんな色恋沙汰に関心が行くようになったんだ??


伊織:「別に、、どうにもならないよ。」

隼人:「駄目だって、伊織はただでさえ目立たないんだから、こういうチャンスは積極的に活かさなきゃ。」


その娘が碧だと知ったら、隼人は一体どうするだろうか。 今でも碧の事が好きとか そういうのは無いと思うが、自分がただの可愛そうな奴と思えなくなったら、昔のようにまた自分の事を仲間はずれにするのだろうか。 そうしたら、とたんに今度は学校中の不良からターゲットにされたるするのだろうか。


伊織:「とにかく、あの一件とはもう係わり合いたく無いんだ。」

伊織:「どうせ俺なんか、 …何やったってもてる訳が無いんだし。」

隼人:「…そうか。」


隼人が、少し寂しそうに見えた。 隼人の事が分からない…何を考えているのか分からない。 いや、隼人だけじゃない。 他の誰の事も、碧のことも分からないに違いなかった。 それとも、信じられないと言い換えるべきだろうか。



終業の鐘と共に帰宅する。 この学校は進学に有利の名目で部活への参加を半強制している。 伊織も地学部の幽霊部員だが、最初の歓迎会以降、実際に部活に参加したことは一度も無かった。


校門に人だかりが出来ていた。 門の直ぐ外に女性が立っている。 中背だが遠目にもグラマラスで、眼鏡をかけたショートカットの優しそうな年上の女性。 眼鏡を無しにすればどこかのアイドルか、女優並みのルックスとスタイルである。 遠巻きに生徒達が噂話をしている。「誰を待ってるんだ?」「誰かの父兄か?」「凄い美人!」「声かけてこよっか」「ドラマか何かの撮影?」


その美女が、何故だか伊織に近づいてきた。


瑠奈:「加地君! だよね。」


周囲の視線が一斉に伊織に集中する。 勿論、身に覚えなど無い。

彼女は慣れた手つきで警察手帳を見せた。 いや、多分 身に覚えがあるかも。。


瑠奈:「この後少し時間いいかな、この前の事件の事、もう少し詳しく聞かせて欲しいんだけど」

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