7.憎しみが生まれる時
あたしたちが、戦場へ行ったときには、もうすでに、ウサギたちはいなくなっていた。
そのかわりに、どこか、寂しそうな背中・・・、無造作に生えたヒゲ、優しそうなその瞳・・・。
お父さん?
お父さんがいた。
お父さんは跡形も無く、消えた町をあの優しそうな瞳で見つめる。
ねぇ?
あなたは一体、何なの?
いつになったら、辿り着けるの・・・?
「お父さん?お父さんだよね?ゆい。」
「そうだね・・・。お父さんだよ・・・。」
「行こうっ。」
まいの横顔は、希望で満ち溢れていた。
幼い頃、死んでしまったお父さんと、やっと会えたのだから、うれしいに決まってるよね?
彼女は、泣いていた。
その涙は、いままで堪えてきた悲しみを連想させた。
辛かったね。
そう言って、あなたはあたしを励ましてくれたよね?
本当は・・・。
あなたも辛かったんでしょ?
あたしは、あなたがいたから、悲しみから、少しだけ、楽になることができた。
だから、今度はあたしが、あなたを悲しみの中から、救うから。
待っていて。
「おとーさーん!」
「まい・・・。ゆいも・・・。」
まいはお父さんに抱きついていた。
でも、お父さんは・・・。
お父さんの瞳は、あたしたちを映しては、いなかった。
ただ、ただ・・・。
瓦礫を見つめていた。
まいはというと・・・、寝てしまった。
お父さんの腕の中で・・・。
昨日、あまり寝ていなかったのだろう・・・。
まいが寝ている間に、今度はあたしが、勇気を出すから・・・。
だから、見守っていてね。
まい。
「お、父さん?」
「どうした・・・。」
「お父さんは、何か関わっているの?答えてよ・・・。」
「ゆい・・・。知っているか?ウサギはなぁ。とっても優しい生き物なんだよ。
だが、1つ裏返せば、残酷な生き物なんだ。」
やっぱり。
やっぱりお父さんが。
お父さんが赤い瞳のウサギを作り出したんだね?
「この世界は、もう終わっている・・・。」
あなたが終わらせたんでしょ?
「人間は、自分の事だけを考え、自分の利益しか、考えなくなってしまった。」
ちがう。
それはちがうよ?
人間はみんな、助け合って生きているよ?
挫折しても、手を差し伸べて、待ってくれている人が、必ずいるよ?
「なぁ。ゆい・・・。お父さん達の、仲間にならないか?」
「お父さん、あなたは間違ってる。あたしはあなたの仲間になんて、ならない。」
「たしかに、俺たちのしている事は、お前たちにとっては間違っているのかもしれない。
だがな。
必要なのだよ。
この世界には・・・。」
必要?
なにが必要なのよ。
大切な物を、奪ったくせに。
その時、あたしの中に、憎しみが生まれたんだ。




