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第31話

(としお兄さんが居なくなったことは次の朝、家族全員に知れ渡っていた・・・

 何故なら、『家を出ます、落ち着いたら手紙をかきます・・・としお』という

                    短い書き置きが部屋に残されていたから)



母さん

『としおには本当に悪いことをしたわ・・・』

(母さんはガッカリした表情を浮かべながら独り言を言っていた)


母さん

『でも、としおの為にはこの方が良かったのかもしれないわね・・・』



(みきおは悩んでいた、

 苦しい家庭状況の中、自分だけ高校になんていけるのか・・・

 高校へ行かず働いたとしても父さんの博打代になるだけ・・・

 陸上をやらなければ高校へは行けない・・・

 家の仕事が多すぎて陸上も勉強もなんて余裕もない・・・

 どちらを選択したにしろ間違いなく辛い日々が待っている・・・

 もし家を出たら、母さんやまだ小さい弟へシワ寄せが来る・・・)




みきお

「オレは一体どうしたらいいんだろう・・・」


(そんな悩みを抱えながらみきおは進路を決めかねていた・・・しかし、

 遂に3学期になり嫌がおうでも進路を決めなければならない時期がやってきてしまった)



担任の先生

『みきお、お前は陸上で高校へ行くつもりなのか?』


みきお

「・・・先生、オレどうしたらいいかわからず悩んでるんです」


担任の先生

『高校へ行かず働くつもりがあるということか?』



みきお

「先生・・・どこか遠くの町で働かせてくれる所ないですか?」


担任の先生

『は?・・・家を出て住み込みで働きたいということか?』


みきお

「はい、どこか無いですか?」


担任の先生

『無いことはないが・・・ お袋さんには話してあるのか?

 それに・・・せっかく特待生の話があるのに陸上はやらんのか?』


みきお

「高校へ行って陸上をやっても、お腹はふくれないし

 まして家の仕事が忙し過ぎてまともに陸上出来るかわからないし

 家に居ながら働いても、父さんの博打代にかわるだけだし

 先生オレ・・・住み込みで働かせてくれるところさえあれば家を出て働きたいんです!」


担任の先生

『そうか・・・みきおの家も大変なんだな・・・

 うちの中学にも就職の募集がいくつも来ているから見てみるか?』


みきお

「本当ですか?見せて下さい!」


担任の先生

『じゃあ明日までに募集書類をまとめとくから明日の放課後もう一度職員室まで来てくれよ』


みきお

「はい! 先生、ありがとうございます!」


担任の先生

『みきお、いろいろ大変だろうけどお前の将来はお前のものなんだ、

 自分の未来はお前自信が切り開いていかなければならないものだ・・・

    でも、ちゃんとお袋さんにだけは相談しなきゃダメだぞ!いいな!』 


みきお

「はい、わかてます! オレ・・・頑張ります!」


担任の先生

『頑張るんだぞ・・・みきお』



(次の日の放課後、みきおは職員室へ向った)


担任の先生

『おお、みきお募集書類まとめておいたぞ』


みきお

「ありがとうございます! 良さそうなのありました?」


担任の先生

『そうだなぁ・・・運送会社や建築会社からの募集が一番多いけど、嫌か?』


みきお

「運送会社って車の免許必要なんじゃないですか?」


担任の先生

『免許の取れない年齢のうちは見習いや手伝いになるけど

        会社で免許を取らせてくれるという利点もあるんだぞ』


みきお

「へぇ~それは助かりますね!ちなみに他にはどんな仕事があるんですか?」


担任の先生

『そうだなぁ・・・あとは加工工場とかくらいかなぁ この辺だと』


みきお

「この辺て・・・どの辺くらいまでなんですか?」


担任の先生

『まぁ県内から・・・あとは宮城県くらいまでだな・・・あとは東京が少し有るくらいだな』


みきお

「東京? 東京って・・・あの東京ですか?」


担任の先生

『東京と言ったら、あの東京しかないだろ』


みきお

「東京からも募集なんてあるんですか?」


担任の先生

『ん?まぁ有ることは有るが、みきおの年齢で東京へ仕事で行くなんて話聞いたことないけどな』


みきお

「例えば東京にはどんな仕事があるんですか?」


担任の先生


『え~と・・・ やっぱり建築関係の仕事がほとんどだな・・・

            ん? これだけ一つちょっと違う仕事だな・・・』


みきお

「え?どれですか? なんの仕事ですか?」


担任の先生

『クリーニング屋の仕事の募集が1社だけ来てるな・・・』


みきお

「クリーニング屋? それどんな仕事なんですか?」


担任の先生

『う~ん・・・よくわからんが、クリーニングって言うくらいだから

       汚れたものをキレイにする仕事なんじゃないのかなぁ・・・』


みきお

「汚れたものをキレイにする仕事かぁ・・・

 なんだか気持ち良さそうな仕事だなぁ・・・

 よし!先生オレ クリーニング屋の仕事に決めるよ!」


担任の先生

『決めるってお前・・・ 場所は東京だぞ!』


みきお

「東京でもどこでもいいよ! オレ クリーニング屋になるよ!」


担任の先生

『おいおい、先ずは会社に連絡を取ってOKを貰わなければ

 働きたくても働けないけど、その前にお袋さんの承諾を得ないとダメだろ!』


みきお

「はい、わかりました! 

 じゃあオレは母さんの承諾を得てきますので

 先生はクリーニング屋さんに連絡して承諾を取っておいて下さいね」


(そう言うとみきおは急いで職員室を出て家に帰って行った)



担任の先生

『承諾って・・・そんなに簡単じゃ・・・   まぁいいか、

     あいつもやる気みたいだし、とりあえず連絡をとってみるか!』



(母さんは初めみきおの東京行きを強く反対したが、

 みきおの熱意に負けて渋々承諾してくれた・・・

 但し、父さんにはこの事は内緒だ念を押されみきおが東京へ行ったあとに

 父さんへは母さんから話すことに決めた、何故なら父さんに話して反対されたら

               みきおの東京行きは完全に無くなってしまうからだ)




(次の日)


みきお

「先生!クリーニング屋さんに連絡してくれた?」


担任の先生

『ああ、とりあえず連絡を入れといたよ

 社長さんは快く受け入れてくれると言ってくれていたけれど、こちらから送る書類が

     色々有るからその書類を見て最終判断をするそうだから結果はもう少し後だな』


みきお

「そうですか、先生ありがとうございます!」


担任の先生

『お袋さんの承諾は取れたのか?』


みきお

「はい取れました!父さんには後から母さんが話してくれるそうです」


担任の先生

『・・・この仕事が決まるといいな! それよりみきお、本当に陸上をやらなくていいのか?』


みきお

「・・・うん、

 陸上をやらなくたってどこでも駆けっこは出来るから!

 オレは陸上競技というより・・・ただ走るのが好きなだけだから!」


(みきおの見せた精一杯の強がりを先生は素直に受け止めた)


担任の先生

『そうか・・・ みきお、お前ならどこへ行っても達者で暮らせると先生は信じてるよ・・・』



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