第29話
(目を細め空を眺めていたみきおの上に黒い影が覗き込んできた)
『みきおくん・・・』
(それはさっきまでゴール争いをしていたあの先輩ランナーだった)
先輩ランナー
『中学最後のマラソン大会をまた君と走れて嬉しかったよ・・ありがとう』
(先輩は腕を掴み、みきおの身体を起こしながら話しかけてきた)
みきお
「あ、いや、こちらこそ・・・ありがとうございました」
(突然のことに動揺するみきお)
先輩ランナー
『結局、また君に負けちゃったなぁ~
悔しいけど、でも本気で走った結果だから仕方ないとするか・・・』
みきお
「先輩、ボクも先輩が先頭を走っていなかったらとっくに諦めていたと思います」
先輩ランナー
『ボクは陸上の強い高校へ行ってこれからもっともっと頑張るつもりだから、
今度君と勝負するときは絶対負けないからね!』
みきお
「はい、ボクもゼッタイに負けません!」
先輩ランナー
『楽しみにしてるよ、じゃあそろそろ表彰台へ行こうか!みんながお待ちかねだよ』
みきお
「え?表彰台??」
(みきおはこの日、初めて表彰台へ昇った・・・
表彰台の一番高い所は見晴らしも気分もとてもいい場所だった
みきおの名前が呼ばれると会場中の歓声が一気にみきおに浴びせられ、
みきおはそれに照れながら小さく右手を上げて応えた)
先輩ランナー
『みきおくん、表彰台の一番高い所に立つ人はね
もっと胸を張ってしっかりと声援に応えるべきだよ!』
みきお
「ボク、なんだか緊張しちゃうな・・・ でも・・・でも・・・
なんだか凄く気持ちよくて嬉しい気分になる場所だなぁ・・ここは」
(みきおは胸を張り、両手を大きく振ってもう一度声援に応えなおした)
先輩ランナー
『みきおくん、君が3年間この表彰台の一番高い所を守り続けてね!』
みきお
「はい!3年間ボクがこの場所を守り続けてみせます!!」
(その後、みきおはしっかり3年間表彰台の一番高い所を守り続け
中学校創立以来初の、三連覇という快挙を達成したのでした・・・)
(みきおが中学校でマラソン大会を3連覇した翌日、
いつものように学校から帰ると玄関に見知らぬ靴が・・・来客?)
みきお
「ただいまぁ」
母さん
『あらみきお、おかえりなさいあなた丁度いいところに帰ってきたわね、あなたにお客さんよ』
みきお
「え?オレに?」
(みきおは囲炉裏の方を覗いてみた)
『みきおくん、おかえり!お久しぶりだねぇ』
みきお
「あ・・・あの時の高校の先生! 今日は・・・どうしたんですか?」
高校の先生
『いつも突然で申し訳ないが、君に用事があって来たんだよ』
みきお
「オレに? なんの用ですか?」
高校の先生
『ズバリ言わせて貰うよ、先ほどお母さんにはお話ししたんだけど
みきおくんに我が校へ入学して頂きたい!
そして是非私の陸上部へ入部して貰いたい!
・・・それを君にお願いする為に今日は伺ったんだよ』
みきお
「高校?・・・の陸上部?」
高校の先生
『そうだよ、高校で陸上を本格的にやってみる気はないかい?』
みきお
「・・・でも先生、オレ頭悪いから高校へなんて入れないよ」
高校の先生
『勉強は・・・今から頑張ればいいんだよ、
陸上部の特待生として入学するわけだから試験は無いけど
でもだからといって勉強しなくてもいいという訳ではないからね』
みきお
「特待生?ボクが?・・・・・・・・・・・・・・・すいません、特待生って何ですか?」
高校の先生
『特待生とはね、
我が校は勉強やスポーツに優れた子を優先的に生徒として受け入れる
特待生枠というのが設けられていてね、今度のその特待生枠の一人として
みきおくんが選ばれたという訳なんだよ。もちろん、特待生は学費の必要もないんだよ!
これはね将来有望な生徒に安心して確実に成長してもらう為のとても有り難い制度なんだよ』
みきお
「高校・・・陸上部・・・ 特待生・・・
なんだか急に言われてもピンとこないけど、とにかく
先生の高校で陸上をやらないか?とボクを誘いに来たんですね」
高校の先生
『誘いに来た・・・というより、お願いに来たという方が正しいかな』
みきお
「う~ん・・・」
高校の先生
『これは我が校からのお願いでもあるけど、
私個人のお願いでもあるんだよ!是非みきおくんに来て欲しい!』
みきお
「そういえば、ボクの先輩もまだ陸上部に居るんですよね?」
高校の先生
『もちろん!彼は先日、高校の県大会で見事優勝したんだよ!』
みきお
「本当ですか?? 凄いなぁ・・・」
高校の先生
『みきおくん、彼は今でも君ともう一度勝負したがっているよ』