第25話
(いくつもの悲しくも大切な別れを経験したみきおも、もう6年生になり
最高学年として最後の運動会を迎えようとしていた)
母さん
『みきお、明日は母さん朝から応援に行くからね!』
みきお
「え?畑仕事は平気なの?」
母さん
『一日くらい畑に出なくても平気平気!そんなことより、みきおの小学校
最後の運動会だもの!母さん最初から最後までみきおのこと応援してるからね!!』
みきお
「ありがとう、母さん じゃあボク学校行ってくるね!
あ・・それと鳥小屋の掃除ももう終わらせておいたからね!」
(この頃になるとみきおは家の仕事にも慣れ、少し余裕も出てきた)
母さん
『みきお、いつもありがとう! 行ってらっしゃい!給食の脱脂粉乳もちゃんと飲むのよ!』
みきお
「・・・・・・・・・・・・・・行ってくるね」
(相変らず脱脂粉乳が苦手なみきおであった)
同級生
『みきお、おはよう!』
みきお
「あ、おはよう!」
同級生
『そうだ、みきお 今日の放課後、山へカジカを捕りに行くんだけどみきおも一緒に行かない?』
みきお
「カジカ捕りかぁ・・・川の水も多くないし天気もよくて最高だろうなぁ・・・」
同級生
『な!みきおも一緒に行こうよ!』
みきお
「・・・うん、山なら牛に草食べさせついでにカジカ捕り出来るからいいよ!」
同級生
『よーし、じゃあ放課後みきおの家にモリとバケツ持って行くからね!』
みきお
「うんわかった、ボクも兄さんのモリを借りておくよ」
同級生
『ああ~早く放課後にならないかなぁ~・・・』
みきお
「そんなこと言って、今日は運動会前日なんだから
駆けっこの練習もリレーの練習も両方あるし頑張らないと!」
同級生
『頑張るは頑張るけど・・・どうせみきおが一番だし、
リレーも2周走るみきおの居るチームの勝ちで決まりなんだもん』
みきお
「そんなことやってみなくちゃわからないよ」
同級生
『わかるよ、みきおは自分で気がついてないかもしれないけど、うちの学校で
みきおとまともに駆けっこ勝負出来る奴なんて居ないよ!去年の運動会でだって、
駆けっこ自慢の先生まで抜いちゃって・・・あの時の先生ちょっと可哀想だったよ・・・』
みきお
「・・・ごめん、でもボク駆けっこは本気で走りたいんだ!
手を抜かず思いっきり走りたいんだ!」
同級生
『みきおは思いっきり走ればいいんだよ、みきおの走りを楽しみ
見に来る人たちがたくさん居るんだから!』
みきお
「・・・ボクの走りを見に来る人たちが?居るの?」
同級生
『居るの?じゃなくて、ほとんどの人がみきお目当てなの!!』
みきお
「そんなの大げさ過ぎるよ、ボクはただ普通に走ってるだけだもん」
同級生
『・・・そのとおり、みきおはいつも通り普通に走ってるだけでも
周りのみんなはそうじゃない!4年生のときのリレー以来みきおは有名人なんだから!』
みきお
「そうなの? よくわからないな・・・そんなことより、
ボクとの勝負のためにいつも練習してるんじゃなかったの?」
同級生
『あ、それ?みきおが速すぎてとっくの昔に諦めたよ』
みきお
「え?そうなの?! どうして・・・」
(みきお自身はあまり気がついていないようだったが、6年生になったころの
みきおの走るスピードは同じ小学生の中では次元の違うレベルにまで成長していた・・・)
(運動会当日、
みきおは駆けっこを一番で終え、いよいよ最後のリレーを迎えようとしていた)
みきお
「ボクが最後2周走るね! みんなで頑張って走ろうね!」
同級生
『いいか、みんな!みきおが最後に居るからって安心するなよ!
何が起きるか解らないから、一人一人が全力で走るんだぞ!
例え転んでしまっても、決して諦めることなく次の人まで繋ぐんだ!』
みきお
「なんだか気合い入ってるね!」
同級生
『当たり前じゃないか!最後の運動会の最後のリレーなんだから!』
みきお
「そうだね、みんなで頑張って勝とうね!」
全員
『オーーー!』
(そしていよいよリレーが始まった!みきおのチームは前半は調子よかったが、
後半抜かれてからは差を広げられるばかりでなかなか調子が上がらないでいた・・・)
みきお
「がんばれーーーーー!!」
(最後2周をみきおと走るのは、なんと昨日カジカ捕りに一緒に行った友達だった)
友達
『昨日のカジカ捕りではみきおに勝てたからな、
こんだけ差が開いていれば今日は勝てるような気がするよ!』
みきお
「言ったな~駆けっこはカジカ捕りとは違うからね!ボク絶対負けないよ!」
(友達が先にスタートし、みきおはその20m以上後からスタートした)
友達
『ぬおおおおおおお!!!』
(みきおは声を上げながら激走する友達を静かに追走し2周目に入ったところで捕えると
そのまま抜き去った・・・友達は1周目で体力を使い果たしたらしく、抜かれてから失速・・・
みきおはいつものようにどんどん加速していき胸からゴールした!)
みきお
「やったーーー!」
(チームのみんなも駆け寄ってきてみきおを祝福した)
友達
『・・・やっぱりみきおには敵わなかったよ』
みきお
「ううん、そんなことないよ!また一緒に走ろうね!」
(会場からは惜しみない拍手が選手全員へおくられ運動会は幕を閉じた)
母さん
『みきお、すごく速かったね!最近また速くなったんじゃない?母さんびっくりしちゃった』
みきお
「そう?母さんが応援にきてくれてたからボク張り切っちゃった!」
母さん
『みきお、すごく楽しそうに走っていたわね!母さんそれが一番嬉しかったわよ』
みきお
「ありがとう!ボクすごく走っていて楽しかったよ!
もっともっと走り続けていたかったなぁ~・・・」
母さん
『みきおは、もっともっと速くなるわね・・・』
(母さんと学校を出ると、校門の前に立っていた見知らぬおじさんがみきおに突然話しかけてきた)
見知らぬおじさん
『こんにちは、君が みきおくん?』