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第23話

(病院に着いたみきおは土砂降りの雨の中、なかなか病院に入れずにいた・・・

 いざ病院へ着てみると、心の底から怯えてしまい足がすくんで全く病院に入れなく

                                なってしまった・・・)



たかこ姉さん

『みきお! どうしたの?そんなにずぶ濡れで!!』


(病院の玄関からたかこ姉さんが出てきた)


たかこ姉さん

『もしかして・・・走ってきたの?』


みきお

「・・・うん」


たかこ姉さん

『かずお兄さんから、よしおの事聞いたのね』


みきお

「・・・・・うん」


たかこ姉さん

『とにかく病院へ入りましょ』


みきお

「よしお兄・・・・・・・・」


たかこ姉さん

『ん?何?』


(雨の音でかき消されてしまうほどの小さな声でみきおは聞いた)


みきお

「よしお兄さんは・・・死んだり・・・・してないよね?」


たかこ姉さん

『・・・・・・・・・・・』


みきお

「ねぇ、よしお兄さんが死んだなんて・・・うそだよね?」


たかこ姉さん

『・・・・・・・・・・・』


みきお

「ねぇ、たかこ姉さん よしお兄さんは死んだりしてないよね?」



たかこ姉さん

『・・・・・みきお、とても悲しいけど・・・よしおは死んでしまったの・・・』


みきお

「うそだ!

 たかこ姉さんまでそんなうそつくなんてひどいよ!

 よしお兄さんは死んだりなんかしないよ!

 ただ寝てるだけなんだよ!

 ボクが起こしてくるよ!  ボクが絶対に起こしてみせるよ!!」


たかこ姉さん

『・・・・みきお、    お願い・・・よしおを起こしてあげて・・・・・』


(たかこ姉さんはその場にしゃがみ込み、両手で顔を覆いながら声を押し殺して泣いていた)


みきお

「待ってて、ボクが必ずよしお兄さんを起こしてきてあげるから!

                  たかこ姉さん、よしお兄さんの病室はどこ?」


(たかこ姉さんから奥の病室によしお兄さんと母さんがいることを教えてもらい、

                  みきおは奥の病室へ急いで向いそのドアを開けた)


みきお

「よしお兄さん!」


(よしお兄さんは椅子に座る母さんの前でベッドに横になってその顔には白い布がかけられていた)


みきお

「母さん・・・・」


母さん

『・・・・・みきお、・・・・・よしおが ・・・・・死んじゃったの』

(母さんはすごく泣き疲れた表情でみきおにそう告げた)


みきお

「よしお兄さん! なにやってるんだよ! 早く起きてよ!

 母さんが心配してるよ! よしお兄さんがいつまでも寝てるから・・・

 母さんが心配してるじゃないか! 早く起きてよ・・・

 お願いだから起きてよ・・・お願いだから起きてよ・・・  よしお兄さん・・・」


(みきおは冷たくなったよしお兄さんの手を握り何度も何度も声をかけ、そして何度も何度も泣いた)





(よしお兄さんの葬儀が終わって半年が過ぎようとしていた・・・

 家族も深い悲しみから少しずつ立ち直りつつあったが母さんはまだ、

 毎晩のようによしお兄さんの遺影を前に泣いている・・・父さんはあんなことがあっても、

 相変らず家の仕事はせず博打に明け暮れ、酒に溺れている毎日・・・

 よしお兄さんの死因は毒キノコによる中毒死と聞かされていたが本当のところは

 未だみきおにとっては謎のまま。

 ただ一つハッキリ解っていることは、よしお兄さんが死んだこと・・・

 みきおが生まれた時からずっとそばに居たよしお兄さんはもう死んで居ないということ。

 そして、よしお兄さんが死んでしまったことによってみきおの家での仕事は急激に増え、

 遊びにいく暇もないほど毎日忙しい日々をおくっていた。

 一緒にしていた豚の世話も一人でやることになり、他によしお兄さんがやっていた

 牛の世話、馬の世話までも・・・でも、畑仕事に追われている母さんにこれ以上

 大変な思いはさせられないと、必死に家の仕事をこなし続けるみきお・・・

                        そんなみきおも、もう5年生になっていた)



みきお

「なぁチビ、わかってくれよ・・家の仕事が忙しくてお前を山へ連れていってあげられないんだよ」


チビ

『ワン!!ワン!!ワン!!』


みきお

「だめだって!いつもの田んぼのあぜ道でカンベンしてくれよ!」


チビ

『クゥ~・・・・・・ン』


みきお

「ごめんよチビ、  そうだ!そのかわり・・・今日は走って池まで行こうか!」


チビ

『ワン ワン!』


みきお

「よーし、そうと決まったら池まで競争だ! よーいドン!!」


チビ

『ワン ワン ワン!』


(みきおは毎朝チビを散歩へ連れて行った後、豚、牛、馬の世話をしてから

                     朝ごはんを食べ、学校へ行っていた)




同級生

『なぁ、みきお! 久しぶりに今日の放課後 ほら穴に行こうと思ってるんだけど、

                             みきおも一緒に行くだろ?』


みきお

「・・・ごめん、ボクは家の仕事が忙しくて行けそうにないや」


同級生

『・・・そうか、仕方ないな じゃあまた今度一緒に行こうな!』


みきお

「ありがとう、ごめんね」


同級生

『みきお、毎日大変そうだけど平気?』


みきお

「うん、ボクは平気だよ!今家が大変な時期だからボクが頑張らなくちゃ!」


同級生

『・・・なにか手伝えることがあったら言ってくれよな』


みきお

「ありがとう、でもほんとに平気だから心配しないで!ボク勉強は苦手だけど、

                         体力にはすごく自信あるんだ!」



(みきおはこの日も学校から急いで帰り、家の仕事を黙々とこなし日暮れまで

 少しでも多くチビとの散歩の時間が出来るよう頑張っていた・・・

        この頃のみきおは、チビとの散歩の時間が唯一の楽しみだった)



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