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第22話

(運動会が終わって数週間が過ぎたある休日、みきおが母さんに頼まれた

  おつかいを済ませ帰宅すると家の中はやけに物々しい雰囲気に包まれていた)


みきお

「ねぇ、たかこ姉さん 何かあったの?」


たかこ姉さん

『よしおが大変なの!今かずお兄さんが病院へ連れていったところなの!』


みきお

「え?よしお兄さんが? どうしたの? 病気?」


たかこ姉さん

『よくは解らないんだけど、どうやら毒キノコを食べたらしいのよ!』


みきお

「え?毒キノコを? よしお兄さんがなんで?」


たかこ姉さん

『そんなの私も解らないわよ!さっき、一緒に山に遊びに行ってたよしおの友達が

 青い顔してうちへ来て、よしおが大変だ!って言うからかずお兄さんが山へ

 行ってみたらよしおが口から泡を吹いて倒れてたらしいのよ!

     それで、かずお兄さんが言うには毒キノコを食べたんじゃないか?って』


みきお

「よしお兄さんが毒キノコなんて食べるはずないよ!きっとなにかの間違いだよ!」


たかこ姉さん

『そんなの私に言ったってしょうがないじゃない!

 とにかく私はよしおの着替えを持って病院へ向うからみきおは家で待ってなさい!』


みきお

「嫌だよ!ボクも病院に行くよ!」


たかこ姉さん

『ダメ!今日は帰れるかわからないから、母さんも一緒に病院へ行ったし、

 父さんはどこに居るかわからないし、かずえ姉さんとは連絡取れたけど、としおには

 まだ連絡が取れてないから、みきおはてるおの面倒と父さんととしおが帰ってきたら

               このことを知らせてちょうだい!いいわね、頼んだわよ!』


みきお

「うん、わかった」


たかこ姉さん

『じゃあ私は病院へ行ってくるから、あとよろしくね!』


みきお

「ねぇ、たかこ姉さん よしお兄さん大丈夫だよね?」


たかこ姉さん

『私もそう信じてるわ・・・』


(しばらくしてとしお兄さんが帰宅し、よしお兄さんのことを告げたが

                  結局その晩父さんは帰って来なかった・・・)




(翌朝)


みきお

「チビ、ボクよしお兄さんが心配で全然眠れなかったよ・・・」


チビ

『クゥ~ン・・・』


みきお

「お前もよしお兄さんのことが心配なんだな」


(みきおとチビは珍しくトコトコと歩きながら田んぼのあぜ道を散歩した)


みきお

「チビ、よしお兄さんが山で毒キノコ食べたなんて信じられる?

           いつも行っている山でよしお兄さんが毒キノコなんて・・・」


チビ

『クゥ~ン・・・・』


(みきおとチビが散歩を終えて帰宅すると、

  病院から帰ってきたかずお兄さんが玄関に一人で立っていた)



みきお

「かずお兄さん、よしお兄さんの様子はどうなの?」



かずお兄さん

『・・・みきお、今みんなにも話したところだけどよしおが今朝方、死んだんだ・・・』


みきお

「え?かずお兄さん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・変な冗談はやめてよ」


かずお兄さん

『冗談なんかじゃない、よしおは死んだんだ』


みきお

「そんなのうそだよ!よしお兄さんが死ぬはずないもん!

 昨日の朝あんなに元気だったじゃないか!よしお兄さんは絶対に死んでなんかいないよ!

              よしお兄さんが死んだなんて、そんなヒドイうそつかないでよ!」



かずお兄さん

『・・・・・みきお』


みきお

「ボク、これからよしお兄さんのところへ行ってくる!

    きっと眠ってるだけだから・・・ ボクが起こしてくるよ!」


かずお兄さん

『・・・・みきお、

 そうだな、みきお・・・お前が行ってよしおを起こしてやってくれ・・・』

(みきおは初めてかずお兄さんが泣いている姿を見た)


みきお

「かずお兄さん、泣かないで!ボクがよしお兄さんを絶対起こしてくるから!

              だから・・・かずお兄さん、泣いたりしないで・・・・・」


(みきおは病院へ向って一人走り出していた・・・

 とめどなくこぼれ落ちる涙を何度も何度も拭いながら・・・

 必死に走った・・・

 今ならまだ、よしお兄さんを助けられるような気がして・・・

 今ならまだ、よしお兄さんが起きてくれるような気がして・・・

 今ならまだ、よしお兄さんに自分の声が届くような気がして・・・

 みきおは走りながらずっと叫んでいた・・・

 よしお兄さんに届けと願いながらずっとずっとずっと叫んでいた・・・)



みきお

「よしお兄さーーーーーーーーん・・・


  よしお兄さーーーーーーーーーーーーん・・・


    よしお兄さーーーーーーーーーーーーーーーん・・・」



(雨がしとしとと降りだしていたが、みきおはそれに気がつくこともなく

 一心不乱に病院へ向っていた、そしてみきおが病院に着く頃雨は土砂降りに変っていた)



みきお

「よしお兄さーーーーーーーん・・・」



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