第21話
(みきおが再び保健室で目を覚ましたのは、窓から暖かい夕日が差し込む夕方だった)
みきお
「母さん、ごめんねボク寝すぎちゃったみたい・・・」
(母さんはみきおのベッドにうずくまるようにしてうたた寝していた)
母さん
『あ、寝ちゃってたのね私・・・ みきお体調はどう?』
みきお
「うん、たくさん寝たら元気になった」
母さん
『そう、それはよかったわ じゃあそろそろ家に帰りましょうか』
みきお
「うん、・・・母さん遅くまでボクのためにごめんね」
母さん
『何言ってるのよ、みきおの身体が心配だったから母さんはついていたのよ』
みきお
「・・・ありがとう、母さん」
(二人は夕日を背中に浴びながらゆっくりと歩いて家へ帰った)
みきお
「ただいま~」
(みきおが囲炉裏へ入ると、酔っ払った父さんが酒を飲んでいた)
父さん
『ひっく・・・ひっく・・・ おいみきお、そこに座れ・・・ひっく・・・』
(かなり酔っ払った様子で、みきおを呼んでいる)
みきお
「父さん、ただいま」
(みきおは囲炉裏を挟んだ父さんの向かい側に座った)
父さん
『ひっく・・・みきおお前、今日の駆けっこ何番だったんだ・・・ひっく・・』
みきお
「駆けっこは・・・3番だったよ」
父さん
『3番?・・・ひっく・・・なんでお前が3番だったんだ!』
母さん
『それは、みきおの上に・・・』
父さん
『うるさい、お前は黙ってろ!なんでみきおが3番になんてなってたんだ!ひっく・・・
オレは今日見てたんだぞ!速くもない奴の後ろからみきおがゴールするところを!
ひっく・・どうせ、真面目に走っていなかったんだろ!
少し脚が速いからって調子に乗って手を抜いて走ったんだろ!!』
(父さんはそう怒鳴ると、目の前の囲炉裏にあった焼けた薪をつかみみきおに投げつけた!)
みきお
「うわっ!」
(その薪はみきおの頭に命中し、みきおの頭からは血が垂れていた)
母さん
『父さん、やめて!みきおにそんなことしないで!』
父さん
『うるさい!お前は黙ってろと言ってるだろう!』
(そう言うと父さんは止めに入った母さんを突き飛ばした)
みきお
「母さんになにするんだよ!やめろ!」
(突き飛ばされた母さんのところに駆け寄ろうとしたみきおに
父さんが今度は焼けた薪を持って殴りかかろうとしてきた)
母さん
『みきお、逃げて!!』
みきお
「でも・・・」
母さん
『いいから、早く逃げて!!』
(みきおは、玄関を飛び出しとにかく急いで逃げた・・・
そして父さんが追って来ないのを確認してから近くにあった高い木に登り、
そのまま夕日が沈むまで自分の家をずっと眺めていた・・・)
(日が暮れて少し経った頃、家から母さんが出てくるのが見えた)
母さん
『みきおーーー!みきおーーー!』
(母さんの呼ぶ声にみきおは木を下りて家に向った)
みきお
「母さん、父さんは?」
母さん
『さっき寝たところよ、それよりみきお頭のキズを見せてごらんなさい』
みきお
「こんなの平気だよ、ちょっと切れただけだから」
母さん
『ちゃんと消毒しておかないとダメよ、こっちにいらっしゃい!』
みきお
「うん・・・」
(母さんは濡れたタオルでみきおの傷口を丁寧に拭いてあげた)
母さん
『キズがたいしたことなくてよかったわ』
みきお
「うん、なんともないよ」
母さん
『みきお、お腹すいたでしょう』
みきお
「うん、ボク腹ペコだよ・・・」
母さん
『おにぎり握っておいたから、たくさんお食べ』
みきお
「ありがとう母さん!」
(みきおはおにぎりをむさぼるように口いっぱいにして食べていた)
母さん
『みきお、、ごめんね・・・』
みきお
「ん? はには?」
母さん
『母さん、みきおをちゃんと守ってあげられなくてごめんね・・・』
みきお
「はぁはん、ほんなお ひにひなふへいいお」
母さん
『みきお、今日はほんとに頑張ったのにね・・・』
(みきおは口の中のごはんを飲み込み空にした)
みきお
「母さん、ボクは全然平気だから心配しないでいいよ!
それよりボク父さんが心配だよ、最近父さんがどんどん壊れていくようで、見てて辛いんだ」
母さん
『みきおにまでそんな心配かけて本当にごめんね・・・』
みきお
「母さん、もう謝らないで ボクもっともっと大きくなって
母さんを守れるくらい強くなるから!強くなって母さんを守るから!」
母さん
『みきお・・・ありがとう』
みきお
「ボク、母さんに謝られるより ありがとう!って言われた方が嬉しいよ」
母さん
『そうね、 みきお・・・ありがとう』