09 おぬし、百姓の出じゃな
<09 おぬし、百姓の出じゃな>
「菊千代、そこの本を取っていただけます?」
「・・・・、僕ですか?」
「そうです。菊千代」
・・・・・あ〜・・・、解りました。これ、日本を代表する名作映画の本ですね。
ええ、あのハリウッド映画では場所設定が「荒野」になった。
はいはい!、わかりますとも。あなたはあの「いぶし銀」な俳優さんで、
自分は「世界の」な俳優ですね。たしかにはまります。僕も何度見たことか。
ほんとうにスゴイ迫力で、特に後半の雨の中の戦いなんて・・・・、もう自分まで
その中に入ってしまう心境になってしまいます。そうですか、今週はその映画ですか・・・。
あ、蘭さん着メロもソレでしたので、先週にはすでに・・・・。
おや?春・夏さんはお二人とも見てません?な反応ですね。
それはいけません。そこだけは僕も会長と同意見です。
「しっかし、自分で見てもなんか恥ずかしいくらいだよ、この写真」
ここはTMS基地である蘭さんの部屋。
先日の競技会の雄姿であります。皆さんの画像をプリントして持ってまいりました。
大量でした。
ちなみに、あの、名実ともにハズカシイ蘭さんの写真・・・は入れてません。
まちがっても表に出ないように処分・・・厳重に格納いたしました。
「僕も見取れてしまいました。足の動きが伝わるような筋肉だし、しかも伸びた時には
すごく長いです。普段制服の蘭さんでは解らない力強さです」
「ほ〜ほっほ!それが本当のセクシーと言うのだよ!瑞樹君」
「そんなに蘭をほめると、なんだけ妬けちゃいますわ」
ちょっと声のトーンが落ちてますが、なにか裏ありませんか?会長。
ジッと蘭さんの服を見てますし。
「どうせ・・・蘭ほど有りません」
なんだか聞こえたのですが、意味解らないので聞き流します。
「そういえば蘭さん。この写真でここ・・・なんですが」
足を指さしながらちょっと疑問を聞いてみた。
「あの、この、足のここ・・」
「あら、内股ね」
「あ、はい・・・」
「それも悩ましい部分だわね」
「・・・・ええと・・」
「リン、なんだろうねえ、何を強調したいのだろうねえ・・・」
「まあ、いやだわ。私何もふくんでなどおりませんわ」
「うそつけ!エロエロじゃねえか!」
「まあ、とんでもありませんですわ」
「いえ!あの、ここにテーピングされていたので・・・。ケガしたのかな・・・と」
少し大きめの絆創膏みたいなのが貼って有ります。
そのことだけを言いたかったのですが・・・・・、なんでだろか?いろいろと危険な方向に持っていかれるのは・・。
「ああ、まあそれは・・・」
「それはきっと、大きな虫にでもさされたのですわ」
「・・・あん?何?虫って?」
「ほら、蘭ったら虫にさされたりするのが多いでしょ」
「・・・?」
「まあ、蘭もまんざらじゃないみたいですし。自ら好んでの時も多いみたいですし」
「リンちゃん〜?・・・なんだろ?この言い回し・・・」
「まあ、私ったら。ごめんなさいね。あまりその・・、いろいろなことを隠しながら説明するのは慣れてないので」
「ほお〜、隠す?隠しているの!?」
「あら、恥ずかしいわ」
あ〜、虫の話になったみたいですが、自分にとっては
この脱線状況から早く復帰したいだけで・・・。
鈴会長、なんだか今日の攻撃しつこいです。どうやって戻せば良いのか・・・
「「すいぶんと虫さんも欲情されていたのですね」」
「・・・、何言っている〜!!!春・夏!!!」
「いえ、このような場所ですと」
「それなりに・・と思いまして」
「こ、こ、・・・」
「ほんとに、その通りですわ」
あ〜・・・、静寂な時間です。空気は・・・とても張りつめております。
「・・・・へ〜・・・・、そうなんだ〜!リンちゃあん。そうよねえ、その通りかもねえ〜」
「ええと、僕の言いたいことは虫の話ではなくて、この絆創膏をですね・・」
「あーっ。そうだぁ〜。今度プールに行こうかぁ〜」
「・・・は?」
蘭さん、なんで今、プールの話が?
「ちょ〜うどねぇ、友達からさぁ、プゥ〜ルのタダ券もらってあったんだよねぇ〜。リンちゃぁん。」
「・・・・・・・・」
・・・なんか、会長、フリーズしてますが・・・
「ほらぁ、きっと楽しいと思うよぉ〜!いつにしようかな?、あ、今週末が良いかも〜。
そうねぇ、なるべく早くいきましょう〜。だって期限あるだろうしぃ〜」
「・・・あ、そうでしたわ。今週末は・・・」
「玲子さんがいつでも遊びに連れ出してあげて!と言ってたの思い出した。
そう、リンちゃんが居なくても一日二日ぐらいは大丈夫だからって」
・・・玲子さんって、たしかリンさんのお母さん?
ちらっとだけしか見たことないのですが、すごく綺麗な大人の女性って感じです。
さすがに鈴さんと親子。あの二人が居れば周りの目はくぎづけですね。
お店の、あ、鈴さんの実家の鈴八のことですが、いつもお客さんでいっぱいなのは
そのこともあると確信してます。
ところで会長、プールだめなのでしょうか?泳げないとか?
でも会長の水着って・・・・見てみたい。
「鼻」
「伸びてる」
春・夏!観察するな〜!!!
「そうか〜!、瑞樹ちゃんも行きたいよね!そして見たいよね!!そりゃリンちゃんの水着ったら、
超超セクシー!!大人の色香ぷんぷんだよ〜!!」
「あ、・・・・・見る・・、見る・・・・見たい」
しまったー!無意識に考えが声に!!!反撃される!!幻滅される・・・・
「私の・・・水着」
会長?
「そう、それも大人っちいやつね!ああ、別にスク水でもいいけど、周りにひかれちゃうよ!。
そういうのはこちらの春・夏さん方、エキスパートにお任せした方が良いから〜!」
「「まかされました」」
・・・・おい!
「冗談ですよ」
「気になります?」
・・・・・。カメラもっていこう。
会議終了。
会長、なんか先ほどのアレから悩んでいるようです。チラチラたまにこちらを見られてますが・・・。
「土曜日はプールに集合ですね」
「10時ですね」
春・夏・姉妹はそう言うと電車に乗り込んだ。
会長は一度こちらを見て手で合図してから同じ電車に。
僕は反対方向なのでホームから見送りです。
走り去って静かになったホームで、一人考える。
「絆創膏を画像処理で目立たなくしようか聞こうと思っただけだったんですが・・・」
なぜかプールに行くことになりました。
もちろん僕にとっては願ったりかなったり!ですが、会長の顔がどこか気になって
素直にはしゃげない状況です。
「泳げないとか、水着を見られるのがハズカシイとか・・・なのかな・・・。
聞くのも少し躊躇してしまうし・・・。蘭さんは「さあ〜?」とか行ってるし。
でもあの攻撃はなにか怪しい・・・」
まあ、その時になったら解るか・・・と自分に納得。
そうなると次の妄想が沸き起こってきてしまいます。
「ああ、蘭さんってすごく悩殺ボディーっぽいから少し無表情になる練習しておかなければ・・・、
きっと心よまれそうだ。春・夏も有る意味際どいコースだし。ほんとにスク水じゃないだろうな・・・。
そして会長の水着・・・は・・・、マズイなあ・・・・。俺、若干「姉ちゃん」好きだし。
ほんと、今日も周りのアレコレにびくびくしている。
天気になれば日照りがコワイ、雨になれば凶作がコワイ・・・。映画の中で言ってた百姓の言葉そのままだ」
遠くに近づく電車のライトが見え始めた。
そこで僕の思案も終わって、明日の宿題、提出物の事に考えを切り替えていた。