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06 すべてはゼーレのために

<06 すべてはゼーレのために>


ここは渡り廊下です。食後です。


背中をフェンスに預け、この季節独特の心地よい風と日差しにまったりとしてます。

昨日発売された月刊誌を読みながら、新商品紹介での提示金額と懐とのすりあわせに

残りの思考を総動員させていますので、癒し(五感)と癒し(物欲)に包まれた

幸せなひとときです。



「やはり、今回のターゲットはこの旧型国電に絞るべきかな・・。

生産数を考えると後々手に入れるのが極めて困難になりそうだ。

・・・・しかし・・・・、実体採取に使う遠征装備も」


頭の中の計算機がフル稼働中。


「もうひとつ長ダマが欲しい。あのレンズさえ手に入れれば

長射程から新たな捕獲に開眼できそうだし・・・・」



「長たま」

「レンズ」

「・・・!うわぁあぁ!!!」



突然耳元での声に、ほんと口から心臓が出るマンガで通路反対側フェンス

まで飛び出す自分。


・・・・・


2人の女生徒が後ろに立っているのを30分ほど黙って見続けました。

(実際は5秒ほどです。思考が混乱すると時間の感覚も消えてしまいます)




「・・春夏姉妹・・」

ようやっとでとりもどしつつある自分が出した声


「「はるなつしまい?」」

「・・・!?あ、いえ!、春香さん夏美さん!」


「春香さん、どうやら私たち二人を合わせた略称のようです」

「日曜お昼のテレビに出てきそうなのを俳名されたようですね、夏美さん」

「私、却下したいかと思いました」

「同感ですね。少しイラッとした何かも浮上してきました」

「「蹴り入れますか!」」


「ちょっ、ちょっ!、スミマセン!ご免なさい!!春香さん、夏美さん!です!」



「まあ、今回は」

「聞かなかったことにしましょう」


・・・・、は・・・は・・・、疲れるーーーー。




「「はるなっつ」と読んでいただきましょう」



あ~~、えっと・・・、そちらも赤いカーペットのテレビに出てきそうですが・・・

ツッコミは死を呼び込みそうなので無しの方向で・・。




「りょ、了解しました。・・・あの、たびたび恐れ入りますが、もう少し

前もって気配いただけますと助かりますのですが・・。

そして、突然両耳からささやき攻撃は日本の平均寿命にも影響でますので・・・

無い方向にしていただけましたら・・。」



「そうね、「なっつはる」だと、まるでピーナッツを額に貼るみたいでしょうし」


「聞いてます?」



「でも、春香さんが姉さん・・・なのは、たかだかお母様のアレから出たのが

ちょっと先だったからなのよね。」


「でも、まぎれもなく事実だわ、妹の夏美さん」


「とりあげた看護師さんが順序間違えているかもしれないわよ」


「それはどうかしら?私はそのような不手際があったなどの仮説、信じないわ」


「そもそも、アレの中でのポジション争いでの行いは

少々スポーツマンシップに反するのでは無いかしら?」


「勝負は勝負。いち早くアレの出口につっこむことが勝利への近道よ」


「だいたい、時間をさかのぼれば父様のソレが母様の卵にたどりついた順序こそ

反映されるべきだわ」


「それは私のソレが遅れたと言われるのかしら?セイコーのストップタイマー

には記録されてないですわ」


「アゴの差ですわ」




ソレのどこにアゴが有るのかは解らないですし、あなた方の記憶って、

いつから有るのでしょう・・?


ああ、たしかに胎教とかで音楽や本を読んで聞かせることも有るようですから、

まったく無しとも言えないのでしょうか・・・。


そもそも、アレとかソレとか・・・、その出口って・・・、自分のように

免疫の無い奥手には妄想世界ネタとしてヘビーな部類に属しております。


フェチではなく。




「あの・・・、ほのぼのとした会話はそのあたりで終了したら・・」


「「近年まれにみる大げんかです」」


ああ、ステレオで言われました。大げんかだったんですか・・・・。

そこまでとは・・・思いも出来ませんでした・・、てか見えないです。


「・・・でも、僕に声をかけたのは何かあったのではかと・・?」


「・・・・ああ!」

「そうでした」




言いながら春夏姉妹・・・もとい、はるなっつが自分の両となりへ。

・・・出来ればこっち向いて立たないで欲しいのですが・・・。

左右から同じ容姿二人に挟まれて落ち着きません。

とりあえず自分としては廊下側に向いておきます。



「瑞樹さんは写真をされるのでしょうか?」

左からの声で顔は左向け左。


「先ほどレンズがとの声が耳に入りまして」

右からの声で、今度は右向け右。


「撮影に慣れていらっしゃるのでしたらお願いしたいことが有りまして」

左向け左!


「あまり知らない方にはちょっと話すのも難しい内容ですの」

右向け右!


「いかがでしょうか」

左向け左!


「無理にお願いではないので」

右!


「少しだけ」

左!

「考えて」

右!

「いただけまし」

左!

「たら」




「!!!、わざとでしょう!確信犯ですよね!!楽しまれてますですよね!!!」

再び通路反対側まで飛んで姉妹の正面からの自分。


「「少々」」



ええ、ええ、同級生でもいじられる自分であります。

嬉しいと感じるまではいま少し経験値が欲しいところであります。


あ~・・・、首寝違えたような気持ち悪いような・・・・酔ったような・・・。


「あ~、なにか撮りたいものがあるのでしたらお手伝いします。

会員仲間なので気兼ねなく言ってください」



いつも電車ばっかりしか撮ってないのであんまり自身無いのですが・・・。

コンデジや携帯などよりは画質良いでしょうし、問題なさそうです。


「で、何を撮れば良いのでしょう?」




「・・・私たちの」

「・・・恥ずかしい」

「・・・姿」

「・・・です」




・・・・・え~~~・・・・、あ、月刊誌買ってました。新刊です。

予定きめなきゃ・・・・。パラパラっと・・・目には入りますが脳まで届きません。

何?何?・・・恥ずかしい?って何だっけ?タイのカレーにはナンだっけ?






「・・ですよね!」

「だからぜひお願いします!」

「その時はじゃんじゃんお手伝いです!」


あ~、右側、廊下の先の校舎内から賑やかな声が聞こえている。

死んだ思考を通り抜けて頭の中で響き渡ってます。




「だからちょっとだけでも」

「そうそう、もりあがります!」

「まさに無敵です!」


今度はぁ~、左側の校舎からの声が。

無になるって心境が周りの音を増幅しているのだろうか?

でも普通逆に何も聞こえないとかだと思うのだけれども・・・。





その声の基が両目の端に確認できました。

右から白い大きなかたまり。

左から黒い大きなかたまり。


自分の立っている渡り廊下の中心部分に近づいてきます。

ああ、かたまりと見えたのは集団だったんだ・・・。


しかし、どちらもスゴイ人数。ざっと十人ぐらいは居そうだ。

自分は・・・ただボ~ッと見ている。なんだったっけ?


ああ、春夏姉妹の写真を撮るんだ。恥ずかしいな・・・ではなく、恥ずかしい写真?

今一度恥ずかしいってナンだっけ・・・?


あ、白と黒の集団がぶつかる、合わさる、混ざるとグレーになるのかな?




などと無意識にかんがえていた自分の前で、

その集団が合わさったと同時にピタっと静止した。


あ、割れた。それぞれの集団の真ん中が開くように割れた。


あ、なにか出てきた。UFOから宇宙人が出てくるのを何かの映画で見たけど、

そんな感じか?それとも十戒のモーゼか?


ああ、宇宙人が僕の目の前に。二体。




「なにかトリップしてるのかしら?」

「拾って食ったか?」


「丁度よかったわ。今週は会合無しです」

「わたしが練習でいっぱいなんでね。私を見ての妄想セクハラも禁止だぞ。だが、

なにやら妄想もできないくらい空になってそうだから・・今は許そう」


「また連絡するわ」

「聞こえた〜?」



「「了解です」」


これは大きな集団で見えなくなっている後ろからの春夏姉妹。





ふたたびそれぞれの集団の中心に収まった女子たちが、

賑やかな声とともに校舎の中へ消えていった。


正面には先ほどと同じ位置に立つ春夏姉妹。まったく変わってない。



「あら、気付かないのね」

「以外と弱いわね」

「「私たち、位置が逆さになったの」」


・・・・わかりませんです。同じです。



「では」

「私たちも」

「連絡」

「しますね」


「はい・・・。」


去る姉妹。・・猿芝居・・・は語呂が似てます。思い浮かんだだけです。




突然人垣に取り囲まれ、有る意味死ぬかと思いました。


黒い集団→どうやら陸上部男子

白い集団→おそらく家庭科を終えた2年同級生女子。


お二人の超越した人気ぶりをあらためて実感いたしました。




プルル・・。メール着信です。

[男の子にも人気よ。by RIN ガール]



ああ、昼休みも終わりですね。あなた純粋に日本人ですよね・・・。


今日のツッコミ終わり。





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