表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/39

35 宿


<35 宿>


何を美香さんは言っているのだろう?


「やっぱり冷えちゃったし」


・・・ああ、そうか、寒くなってるんだ。なら早く交代を


「薪、入れるね」


「あ、それじゃあ、僕はすぐ・・」

「ダメ、まだ入ったばかりです」


あ、ジャージを脱ぎ出した。下も・・!!

ちょっと・・・、下着に手を・・

ヤバい、どうしよう!とにかく目をそむけて。

今回は「ダメ?」とは聞いてこないのですか!


「み・・、美香さん!。ちょっと」


わわわ、入ってくる!後にぴったりと・・・たぶん背中。





「ゴメンね!かけ湯・・・しないで入っちゃった」

「・・・・かけ湯」


思考が停止です。なにが・・、なんで・・・。


「温かい。」


・・・・少し・・・、落ち着いてきました。いろいろと数値を頭で考えました。


「・・・あの、すごく大胆ですよね」

「・・・はい」


さすがにこれは自覚している!


「水着とかだったらまだ・・」

「計画してなかったので、持ってきてないです」


まあそうでしょう。こんなことまで計画してたら・・・。


「それでしたら・・、タオルとか」

「ぬれてしまうと使えなくなりますので」



お風呂は二人ぐらいは入れる大きさです。

ですが、今の僕にはとてつもなく狭い。身動きがとれません。



「少し、落ち着きましたか?」

「・・・かろうじて」

「ほんとうは・・・、私もすごく恥ずかしいんです」

「・・・・」

「でも、恥ずかしいことを頑張っても、夢になっちゃうんだったら・・・

いっそのこと思い切った恥ずかしいことをしちゃおうかなと」

「・・・夢?・・・これも夢?」


「瑞樹さんにはそうかもですね」

「・・・・」

「私は・・・現実ですよ」


美香さん、少し動いて・・・、肩?・・頭を僕の背中に?


「暖かい。」


・・・手を僕の胸に回しこんで・・・ちょ・・・ちょっと・・・

後に抱きついてます。柔らかい・・・・


・・・まずい・・・、今、すごくマズイ・・・!



「安心してください。これ以上は私からちょっかいだしません」


・・・・充分すぎです。僕はまったく免疫、経験無しなんです!


「私からは・・・です。」


あ、さっき飲みかけのサワーを僕の手から取って、美香さんの口へ・・。飲んでます。


「美味しい・・・。いろいろと熱いからしみ込みます」




どれくらいでしょう。息も極力おさえてとてつもない時間が経っている気がします。

目をつぶると身体の感覚がさえてきます。なので正面を見続けて。


ふと目線を感じました。からだを傾けて下からジッと美香さんが見てます。

腕に・・・・当たっている。・・あ、自分の手は・・・??美香さんのヒザ!


「ほんとうは、一人で入るのも怖かったの。真っ暗ですし。そう伝えたら

落ち着かれるかしら?」

「はい・・少し。・・・ですがその、くっつくのは・・」


「ごめんなさい。私の望むことばかりしちゃって・・・。辛い?」

「・・正直」


「もう、のぼせそうかしら?出ます?」

「はい」

「瑞樹君から?それとも私?」

「・・・・・・いろいろと悩みます」


なんともなければ僕からですが・・・・、手ぬぐいではちょっと手遅れに・・。


「じゃあ、私からね」


ザアッと音がして美香さんが立ち上がったようです。

僕は再び目を瞑って・・・



「きゃ!」

「え?滑った?」


思わず目を開けたら・・

!!!



「少しは・・・見て欲しいものです」


・・・・・やられました。しっかりと目に。






小屋に戻るときちんとジャージを着た美香さんが。

なんとなく恥ずかしくて少し遠くへ離れてと思ったのですが、

今まで通り、まったく普通の会話をしてくるので、ついついいつもの感じに戻ってました。


「では寝ましょう。明日早いのですよね?」

「あ、はい。6時の電車を一回撮りに行こうと思ってます」

「でしたら、またその時にご飯作りますね」

「あ、ありがとうございます」


「ここ、ちゃんとベットもあるんですね」

「ええ、2台だけですがセミダブルになってます」





お風呂の片づけは明日にして、まだ早いのですが寝ることに。

テレビが無いと、ほんとに早寝になります。家でもそうしようか・・・。


・・・美香さんと同じ部屋?

さっきのことが気になります。前の蘭さんとのこと思い出してしまいます。

リビングで寝ようか・・・


「男の人って、大変なんですよね。ゴメンナサイ。

もう ”私から” いたずらはしませんので安心してくださね。

ただ瑞樹さんがでしたら・・・、私・・」


ダメです。それ以上は・・・抑えられなくなりますから。




「しばらくお話してもいいかしら」

「あ・・・助かります」


「瑞樹さんは私と初めて会ったのはいつだか覚えてます?」

「・・・・正確には会長の部屋でだったと」


「では不正確には?」

「・・・・それは、・・スミマセン、僕の変な妄想でしたので」


「公園で?私に呼び出された?」

「・・・はい」


「それまでは私のこと知らなかったのですね」

「・・・はい。うわさにはなってたかと思いますが、僕は知らなくて・・」



しばらく美香さんは何か考えてたようですが・・



「瑞樹さん、昔から電車を好きだったのですよね。」

「あ、はい。物心ついた時には好きでした」


「それは、小学校の頃もですよね」

「はい。まだカメラも持ってませんでしたので、ただ見て絵を描いてとか」


「良く見にいってたのでしょうか?」

「ええ、近くに電車の車庫がありまして、よく見に行ってました」


「車庫を見てたのですか?」

「車庫・・と言いますか、車庫に出入りするのを眺めてたです」


「お気に入りの場所から?」

「あ、ええ。よく脇にある土手から見てました」


「朝早くに?」

「ええ、ラッシュアワー前の早朝が出入り多いですので・・。」


・・・あれ?なんで朝のことしってるのだろう?



「私もそんな経験あるんです。」

「え?電車を見に行って?美香さんが?」


「ほんとうは、電車を見に来てた男の子に会いに言ってたのですが」

「そんな子が僕以外にも居るんですね」


「その男の子とは、いろいろとお話しました。電車の話、学校の話、家庭の話、そして異性の話。」

「仲よかったのですね」


自分とムツねえの場合は、かってに突っ走る自分でムツねえはつきあってもらってた感じでした。


「私の家って、少し資産があるの。大きな家なのね。

兄が3人いて、私は末っ子の一人娘」

「ああ、なんか幸せそうですね」


「ほんとうはそうでもないの。」

「・・・?」



「私の母は・・・、いわゆる2号さん。その母が幼い頃に死んでしまったの。

一人になった私は、父の家へ入ることになったのね。正妻の母と3人の兄ができたわ。

良く聞くいじめとか辱めみたいなことは無かった。家族として普通に生活してた」


「ただ一つ、ものすごく男尊女卑な家だった。正妻の母にもですが、それ以外の

女性は、それこそ虫けらのような扱い。あ、父は母以外でも何人か女性がいました」


「いつしか、私も男の人が怖くなってしまって、女であることが悪だと思うようになったのね。

なので、自分は男だ、女では蔑まされる汚いものだ・・・と。

だから男の格好をして、男言葉を使って、怖いと自分で思っている男になりきったわ。」



「そんなある日、朝早く起きてしまって、なんとなく庭に出てたら・・・、土手に座って

ただ電車を見ている男の子に出会ったわ。」


「まだ朝の6時よ。変でしょ。それも家の敷地堺の土手で。」


「それからたびたび見かけるようになった。私も朝早く起きて、

来ているかと見に行くようになったの。だいたい雨の日以外は来てたわ。」


「二週間ぐらいして、初めて声をかけたの。いったい何を見ているの?と。

そうしたら、「電車」だって。電車を見てるのが好きな人にあったことなかったので

とても不思議に思えたわ。」


「それ以来、見かけたら声をかけたわ。男の子も私が電車を見に来ているとは

思わないみたいだけど、なんとなく話せるのがうれしかったみたい。」


「だんだんと電車のことだけではなく、学校や家などのことも話すようになった。

ある日、私が思っていること・・・、男って怖い話をしたのね。そうしたら、

その男の子は「いや、女の方が怖い」って。」


「男は単純だからすぐ好きな娘ができちゃうけど、女は頭が良いから計算して好きな男を決めるんだって。

変でしょ?勝手な言い分だと思わない?・・・でもその子は真剣に信じてた。

その根拠を訪ねたわ。そうしたら・・・あまり言えないみたいで・・。ただ辛いことがあったとか」


「ほんとに意味のない言葉だったけど、もしも私が怖いと思っている男も、女が怖いと

思っているなら、それは怖いと思うのをやめれば良いだけのこと?

つまり、女を隠して男の真似するより、女であることに自信を持てば怖さもなくなる

かもしれない。」


「それからはあまり自分を隠すことしなくなったの。ただ、あの家はどうしても

息苦しかったので外に出てしまったけど。」


「でも、その男の子、今どうしているでしょうね。もしもまた会えたら・・・

きっと抱きついてしまうかもね。たとえば裸でお風呂に飛び込むとか」




「・・・・美香さん?・・・て、あの、かおる君?」

「美香では女だから、かおる。毎朝電車を一緒に見てた香。今気付いた?」

「・・だって、あの時は男の子だとばかり・・・・」

「男してましたし、今みたいに胸も無かったし」



「結果的に、瑞樹君のおかげで、どうしても壊せなかった恐怖を克服できたの。

だから今日は女の私を見せつけたの。私の自己満足なのだけど、あの頃は

女なんて思われてなかったからね。ちょっと後悔してたのね」



とんでもない話でした。まったく幼い僕ですので、ほんと勝手なことばかり。

しかも朝から会う男の子相手にです。そんな前から、美香さんとは会ってたんですね。

でも・・・、見せつけるってあまりにも直線的すぎです!


「あのね、そちらで添い寝させてほしいな」

「・・・スミマセン、女を充分すぎるほど解らせていただきましたので・・・無理です」

「もっと解ってほしいこともあるのだけど」

「・・・・自分の限界は解ってますので」


「ダメ?」

「・・・・・・・・ダメ」


「残念」


・・・勝った!僕は誘惑に勝った!・・・・むなしい・・・、後悔・・・・。





「だめ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダメです」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ