27 点と線
<27 点と線>
「私たちのクラスを見に行きましょう」
「ああ、ランパブだっけ?」
・・・・あんた?ランパブ知っているのか???
鶴の恩返しかもしれない演劇を終わって自由の身になりました。
できればここらで開放されたかったのですが、どうやら会長が校内を案内したいみたいです。
「普通の高校生活してると思いません?」
「嬉しそうね〜!リン!」
春夏の二人が前。会長、僕、蘭さんが後。
歩いていく前方にいる人は自然と左右によけいきます。
まるでどこかの病院での院長回診みたい。
こうやってメンバー全員での校内闊歩は初かもしれません。
ああ、僕のクラスメートもビックリしてますね。ほとんど校内でこの会は知られてないはずですので、
「おまえ?この美人軍団に何混ざってるの?」でしょうね~。
・・・・・離脱したい。
「着きましたわ」
「少し入っていこう!」
会長と蘭さんのクラスはコスプレカフェですね。
けっしてランジェリーパブではありませんですね。
「残念かしら?」
「・・・・少々」
え~、皆でコーヒー飲んでます。メイドさんやヒツジさん、大正ハイカラさん、巫女さんなど、各種取りそろえられた感じですが、
こちらの面々が揃って座っている席の方が明らかに目立っちゃってます。
「私も衣装のままくれば良かったかも~!即手伝える」
「あら、もじもじ君では違う趣向かと思われますわ」
・・・確かに。
「私のもじもじ君、みたかったかしら?」
・・・・・・・見たら一生無駄にしません。
そんな学園祭も終わり、会長の狂態も校内中知れ渡ったかと少し心配でしたが、
まったく八神伝説は不滅で、あいもかわらずマドンナの立ち位置を続けているようです。
今日も朝から下駄箱に有った手紙について、いろいろと返事を書いてるみたい。
蘭さん情報では、一応礼儀正しく返事するのが会長のポリシーだそうです。
文面は同じだそうですが・・・。
手紙の差し出し人は、皆さんその返信を家宝にしているとか・・・。
そして僕も一時噂にはなりましたが、すぐに元の普通の男子高校生としての生活になってきました。
はずなのですが・・・・。
「これは・・・・・」
帰ろうと下駄箱を開けた所には一通の封筒が。
「・・・・なにか、恨みでもかっていまったのだろうか・・・。」
正直な第一印象です。
あて名に自分の名があります。いかにも女性っぽいカラー文字です。
そこに至っても、まだ不幸な予感しかしません。
とりあえず靴を履き替え、今日も招集がかかってますTMS基地へ向かいながら読もうと
封筒をポケットにしまいました。
この前、誤ってある女生徒のノートを持ち帰ってしまったことだろうか・・・。
いや、あれは翌日返したし、その時は何も怒った感じはしなかったはず。
それともたまたま廊下に落ちてた別の女生徒のジャージを届けたことだろうか?・・。
まさか、僕が盗んで・・・とか思われている?
でもその後何も変な目で見られている気配もなさそうだし・・・。
どれもこれも普通のことが、今の自分にはとても怖いことに思えてきました。
うん、ここは覚悟を決めて中を読んでみよう。
遊歩道の木陰になったベンチに座って、先ほどの封筒を開けてみました。
<今日の4時、栗山駅前公園の噴水まで来ていただけませんでしょうか。お待ちしてます>
呼び出しです。学校ではなく、離れた公園。いったい誰が、何のために・・・・。
栗山駅とはここから5つ目、自宅最寄り駅です。ただし自宅は少し離れてますので
いつも自転車でこの駅へ出てます。
「利用しているのを知ってるのかな・・・」
「そうと考えるのが自然ですね」
「学校では無い場所指定は、顔見知りに見られたく無いかと」
「・・・!!春夏姉妹!!」
「まだ呼び方を訂正していただけないようですわ」
「もう少し可愛らしく読んでいただきたいのですが」
「僕も同じく・・・また気配なしでビックリいただきました」
ほんとに!この二人は・・・・
「それで、どうされるのでしょうか?」
「4時と言いましたら、もうあまり余裕無いかと思いますが」
・・・・・ああ、忘れてました。・・・てか
「見てたのでしょうか・・・」
「「ええ」」
まったく・・・・、いつから居たのやら・・・。
「下駄箱でしばらく固まってた時からです」
「いろいろと自分の行いを悔やんでましたですね」
「・・・・・また、声に出てました?」
「「はい」」
ほんと、気をつけよう。
「それで、その呼び出しを受けられるのですか?」
「返事は合ってから決められるのでしょうか?」
「・・一応、理由も知りたいですし、返事もその自分がなにをしたかによってと思いますが・・」
「・・・なにかあまりかみ合ってませんね」
「ええ、自分がその場になにをしに行くかが理解できてないかもです」
「なにを・・・って、それが解れば対処したり、お詫びの言葉などを考えられますよ」
「・・・にぶいわ」
「・・・鈍感」
?いったいこの二人は何を言っているんだ?
・・・。まあ、そうでしょうけど。頭の回転は早くないです。
「すみません、解りませんが一応こちらを確認してきますので、会議に遅れる旨を
会長に伝えておいてください。」
「解りました」
「会長に報告しておきます」
とりあえず、指定時間に遅れそうなので駅へ向かうことにしました。
二人は・・・そのまま携帯で連絡をしているみたいです。
栗山駅は新しく開発された住宅街のために出来ました。駅回りもまだ育ってない街です。
待ち合わせをしたいと思っても、丁度よい施設も少ないですので、駅前公園の噴水前は妥当な選択ではあります。
その公園に着いたのは指定時間より15分前でした。
・・・なんだか、以前にも同じようなことがありましたが・・。
ええ、TMS入会テストで散々振り回されました。
どうも封筒での指示されることが多い気がいたします。
ざっと周りを見ましてもそれらしい人影は見えません。
とはいえ、いつ現れるか解りませんので、一応きちんとした態度でベンチに座って待つことにしました。
なにか誤ることが発生しました時に、誠意ある態度はとても重要になるはずですので。
「そういえば、雑誌の発売日、今日ぐらいだったような・・・。本屋に寄ってくるのを忘れてしまった。
田舎町だから、書店入荷する数も少ないし、逃すと遠出して買いにいかなくちゃならないけど・・・
明日まで残ってるかな・・・」
ええ、誠意ある態度なんて5分持たないんです。すぐに別の思考に走ってしまうんです。
ぼんやり座り、地面あたりを見ながらアレコレ思考が・・・。
ああ、女の人の足だ。奇麗な歩き方だな。きっと性格も上品で良いんだろうな。
あれ、なんかこっちに歩いてきているような・・・・
顔を上げて少し見てました。確実にこっちを見ながら近づいてきてます。
真剣なのか怒っているのか・・・、にこりともしませんので顔見知りでは無さそうですが、
それでもこっちを一直線に見てます。
目の前で止まりました。なんでだろ?なんか聞きたいことでも?
・・・・・・あ、
そうだ!呼び出されたんだ!!
この人?・・・この制服は同じ高校の人で・・・同学年かな・・?
この人に自分はなにかしたのだろうか??
・・・思い出せない・・・・。
でも呼び出されるくらいだから・・・・
どうしよう。。。、先に誤ろうか・・・・・・
「私、E組の四谷 美香と言います。」
「・・・はい!・・僕はC組の一条 瑞樹です」
・・・・・・自己紹介・・・。
また静かになってしまった・・・・。
四谷・・・四谷・・・・、やっぱり知らない・・・・。
とにかく、まず・・・誤ろうか・・・。
「単刀直入にお聞きします!」
「!はい!」
「好きな人・・・、居ますか!?」
「・・・???」
え、なぜ僕は初対面の人に好きな人の質問されるのだ?
これ、なにかのゲーム??それとも調査??
「曖昧ではなく、ハッキリとお願いします!」
「!!・・・」
有無いわさない勢い!!どうしよう!!好きな人?
ええ?・・・ムツねえ・・鈴会長?・・蘭さん?・・春夏姉妹??
その人たちのこと好きか?との質問でしょうか!?
ああ、周りの女性と言えば、玲子さんや二宮先生も最近よく合います。
お二人も含めて”好きか?”でしたら、皆さん”好き・・”に入りますし・・・。
「お願いします!」
「!!は・・・はい!。居ます!!」
怖い!なんだか解らないけど、解らないとか答えられないとか、拒否できない迫力が怖い!
とにかく、なんか言わなくちゃ!と、思わず「居ます」と言ってしまった。
・・・でも、自分は誰を好きと思って言ったんだろう・・・。自分でも解らない。
想いながら出た言葉でないし・・・・。
「・・・・・・解りました!ありがとうございました!」
「あ・・・、いえ」
四谷さんは、歩いて来た方向へ行ってしまいました。
・・・・・・ええと、・・・今のはなんで僕、責められてたのでしょうか・・・。
・・・解りません。
気がついたら・・・1時間ベンチに座ってほうけてました。
なんで・・・、僕は責められてたのかの原因がどうしても思いつかなくて・・・。
・・・春夏姉妹なら、なんか簡単に謎を解き明かしそうです。
明日、もう一度四谷さんに聞いてみようかな。