24 鶴の恩返し
<24 鶴の恩返し>
秋です。学園祭です。
ちらっとは思ったんです。あの方々が静かにしていられるのか・・・・と。
ああ、うかつでした。もっと前もって阻止の手はずを考えておくべきでした。
我がTMSも参加することに。
学校関係のクラブでは無いのになぜ?なのですが・・・・
どうやら会長をはじめとした女性陣が生徒会とかけあったとか・・・。
噂では、その後しばらく生徒会長の早退が続いたとか・・・。
半月前のことです。
「劇をしようと思いますの。解りやすく、人数も可能な演目ですわ」
「それが[鶴の恩返し]ですか・・・」
たしかに、その条件には一致してます。しかし、練習時間的に難しいのでは・・・。
「みなさんも物語は理解されているはずですので、あとは各自衣装を用意するだけですわ」
「え?、練習・・・、稽古はしないのですか?」
「いえ、一度いたしますわ。」
・・・・一度・・・ですか。
当日、休んでも良いでしょうか・・。いや、その後が想像できない恐ろしさですので・・・
転校とかでなければ・・・・。
「ここからが本題なのですが、これから役を決めようかと思いますの」
・・・・、皆、止まりました。・・・空気が・・張りつめています。
<お見苦しい場面のため、早送り>
熾烈な争いの後、一通り決定しました。僕はおじいさんです。まあ、そんなところです。
学園祭当日です。一度だけ・・・の通し稽古が終わりました。
今9時です。ええ、泊まりましたよ。
だって・・・、舞台セット作り始めたのが昨日なんです!
「あの・・・、この台本なのですが・・・」
「「なにかしら?」」
「・・・・。4ページしか無いのですが・・・・。
あの、5分もかからないで終わってしまうのですが・・・」
「ここは役者さんをたてたのですわ」
「みなさん天性の表現力に期待してますわ」
「・・・・・その場でなんとかしりろ・・ですか。」
春・夏・姉妹は脚本と演出です。
「・・・、ご機嫌がよろしくない?」
「いえ、すこぶる良いですわ。主役では無いですが。」
「まったく問題ないですわ。鶴になれませんが。」
「・・・・・。それで、台本なのですが__」
「「なにかしら?」」
・・・自称、機嫌のよろしいらしい春・夏・さんです。
・・・ミニ会長です。
「じゃあ、私たち着替えてくるからね〜!」
女子4人はそう言って別室に・・・。
・・・脚本、演出も着替えるの?
まあいいや、僕もここで着替えて・・・。
あれ、こんなだっけ?え?なんでラメ入ってるの?
この前作ったのと違う!!
このデカイ蝶ネクタイ、おじいさんにいらないでしょ!
そう言えば、先日会長に預けたのだけれど・・・・。まさか・・・
「刺激って大事ですわ」
・・・まだ居ましたか、会長。
「ここは衣装の内側に、この養成ギブスを」
魔球を投げる場面教えてください。蘭さん。
開演10時。学園祭と同時スタートって・・・、少しは時間ずらすでしょうって・・
「とっとと終わらせて遊ぶためだな・・」
外は・・・!
スゴイ!なんで?・・・宣伝もしてないのに、もう並んでる人がいます。
「撮影は禁止ですわよ」
「踊り子さんへのおさわりも禁止〜」
春・夏・・・。あんたら、舞台で何させるん?
会長、蘭さん。
その着てるガウンは?・・・アントニオ猪オ木?
「脱ぐのはステージまでお預け!」
「刺激って大事ですわ」
ほんとに「鶴の恩返し」ですよね。間違いないですよね。
・・・春香、なぜ照明をピンクにしてる?
「雰囲気作りですわ」
夏美、何並べてるの・・?
海の時とかの写真・・・。
・・・ブロマイドにして売るな!うわ!!先生のも有るよ!!
「以外と好評よ」
・・・こいつら・・・・、何の演出してんだ。
「あなたはこちらをお願い」
・・・・・・握手券。一回¥500・・・って・・・。
後で呼び出しくらうぞ!
<「ブー」まもなく「ブー」開演いたします。「ブー」ごゆっくりお楽しみ「ブー」ください>
ブーって声かよ!
。。。って、俺まだ用意してねえ〜!
あ、ちゃんと音流してる。・・・・
<寒く雪の降る峠、おじいさんが家路をいそいでおりました>
あ、出番か・・・
「さむいのお、はやく帰ってばあさんと夕げにしたいのお・・。おや?なんじゃ?
おお、可愛そうに。狸のワナにかかってしまったのじゃな・・・って・・」
何だ〜!このモジモジ君みたいな全身タイツ女!!・・・蘭さん???
なんすか、その頭についてる赤いの・・・。え?とさか?
それじゃニワトリでしょ!。あんたほんとは鶴でしょ!
それにちょっと・・・、マズイでしょう!!、ラインがバッチリです〜!!
「なんで〜!ウケてるよ!」
ウケでなく、みんな興奮してるんです!!!
「ええっと・・・ほら、助けたから。たっしゃでな〜!・・・、はやく引っ込んでください!!他のに着替えてください!!!」
<おじいさんは家に戻り、鶴を助けたことをおばあさんに話しました>
「ばあさん、かえりましたよ」
「まあまあ、寒かったですわね。暖かいミルクティーをご用意してますわよ」
「ミルクティーって・・え?・・、かいちょ・・ばあさんや、なんだか華やかな衣装なようだが」
「まあ、恥ずかしいですわ」
「・・いやいやいや、少し・・てか、すごく話に合わない激しさかと・・・」
「ここをこうしますと、ほら、光りますのよ」
「・・ねずみの遊園地ですか!パレードの上の人ですか!」
「パフェもありますわ」
「・・・あの、ばあさん・・」
「まあ、こんなに若々しい乙女にばあさんなんて。ひどいですわ。
あなたより ”1学年” 先輩。”1学年”せ・ん・ぱ・い・なだけですわ」
「・・・はい。もう言いません」
<その時、戸口を叩く音が。とんとんとん>
「・・・とんとん・・って、また声で・・・。はいはい、いま開けますよ」
ガタタっ
「こんちは〜!」
「うわーー!!!・・・・なんすか!その格好〜〜!!」
「鶴でーす!」
「・・・・蘭さん・・・、浅草のカーニバルですか!」
「だって着替えろって瑞樹ちゃんが〜」
「言いました。言いましたが・・・、このシーンは人間でしょう!鳥ではないでしょう!」
「あ〜・・・・・・、鳥人間よ!」
「・・・・どうぞ飛んでください。」
「は〜、・・芝居しよ。・・あ・・あのどちらですかの?」
「だから、鶴でーす!」
「・・・いいですから。もう、入ってください。あ、ブーツは脱いでくださいね」
「まあ、いらっしゃい〜。ほんとうは私の役だった鶴の人」
「鶴でーす」
「もういいですから・・・。で、何しに来たんでしたっけ?」
「恩返しでーす」
「あ〜、そうですね。ええ、もう進めますね。まあ、とりあえず僕の娘ってことで桶ですね」
<おじいさんから受けた恩を返すため、M78星雲からやってきた・・でなく鶴。
この日から娘としてここで暮らすことになりました>
「ねえ、ちょっち奥借りていい?」
「何ですか、鶴や。」
「ひ・み・つ・! 覗いちゃダメよ!」
「・・・・自身ありません」
バシッ!
「・・・イツツ、これ、ばあさんや。広辞苑はちょっとやりすぎじゃろう・・」
「まあ、こんな所に。危ないので片づけておきますわ。そして姉さんですわ」
「鶴・・・は障子の奥か。
・・・・・・・おい、バックライト消せ!!、音楽かけるな!!11pmか!」
「あなたも好きねぇ〜」
「かとちゃんか!」
<三日三晩の後、鶴は1反の反物を持って出てまいりました>
「おお〜、なんて綺麗な反物じゃ。ほれ、ば・・・姉さんも見てみなさい」
「まあ、私のように美しいですわ」
「・・・あたしの方が若・・」
バシッ!
「まあ、こんな所に家庭の医学が。危ないので”同級生”の私が片づけておきますわ。」
「。。。、姉さんも夏休みでだいぶ成長したようじゃのう。わしも気をつけねばのう。」
「う〜、ヒロインに向かってひどい・・。」
「それよりも、鶴や、なんだか少し・・飾りが無くなって・・・てか、
だんだん露出多くなっているのじゃが、どうしたのじゃ」
「若いからしょうがないのよ」
「・・・・意味解らないのじゃが・・・。
おぅっと!!なんか客席から飛んできたぞ!?
これは・・・・月刊ぜえくしぃ・・。なにやら寒気がするのじゃが・・・」
<鶴はやさしいおじいさんと・・・おねえさんのために、また奥の部屋へ入っていった>
「ば・・・ねえさんや、わしわ心配じゃ。
鶴がまた・・・とんでもない格好で出てくるのではないかと・・」
「ほんとうに、心配ですわ。少し胸が大きいからって、いい気になるですわよ」
「・・・いや、そうでなくて・・・。ねんさんが障子の向こうを見てみてくれんかの」
「いやですわ、あんな胸」
「劇が進まんので・・お願いじゃ。・・・・・わしが見るのはちょっと怖いので・・」
「10年後はたれまくりですわ」
「・・・あまりあぶないことは言うでないぞ。どこから月刊ぜえくすぃが飛んでくるかわからんからの」
「・・・しかたがないので、わしが覗くふりで・・・」
「わ!まだはいてない!見るな〜!!!」
「・・・後が怖いの・・。履いてないって・・・なにしてるんだ?」
「見たわね〜・・・。」
「あなた、約束を破ったわね」
「・・・なんで春・夏・姉妹?」
「「私たちは暗黒の魔道士。あなたの邪悪な心に取りついたわ」」
「邪悪って・・・。あの・・・、鶴は?」
「「もうだれにも止められないのです。この世界は、私たちのもの」」
「今更くやんでも遅いわ。あの時に主役を私にすれば魔界から開放してあげたでしょう」
「さあ、思い知るがいい!オノレの愚かさを」
「待ちなさい!」
「「何者」」
「私は、月にかわっておしおきのセーラー・・」
「会長・・・・、光ってますね。LEDですね。エコですね」
「・・ムーンよ!」
「見てたんだな・・・」
「これ以上、私の邪魔はさせないわよ〜!」
「あ〜、蘭さん。鶴の衣装でないですね。今度は何?」
「600万ドルのバイオニック・・」
「あんたも年、ごまかしてるでしょ」
「・・じぇにーだ!」
「・・・・・・・・それ、ワンダーウーマンでしょ」
「さ、今ならこのお宝写真、お安くしますよ!」
「ほら、脱ぎたての全身タイツ付き」
「おお、お兄さん、粋がいいねえ、ズバッと大人買いかい!」
「おうさ!それならこのブーツも着けよう!」
「おい魔道士!客席でアヤシイもの売るな。」
「さ、皆さん、生活指導教師が来る前に逃げましょうね〜!。」
「「「また来年〜!ばいば〜いき〜ん!」」」
会長、なんか慣れてますね。逃げるタイミング。
通し稽古したのはなんだったんでしょうね〜。
なんすか?あの魔道士って・・・。
バイオニック・・・って。
え、まだスク水着てない?
ああ、そうですね〜、
おばあさんが月に帰る時に着てもらいましょう。
違う?
ああ、そうですか。先生にでしたか・・。
それはすごく重い話でしたね。
え、サンバの衣装も売る?
ああ、どうぞどうぞ。ついでに中身も。
取り扱いには注意を入れといてください。PL法にひっかかります。
あ〜、このまま帰っていいでしょうか?
ダメ?
ですよね〜。
おじいさんではなく、帰るのは鶴ですからね〜。