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21 きっと解ってたこと


<21 きっと解ってたこと>


「思い当たるのね」

「・・・・あの時の・・・・」

「そう、私が泣き叫んでた女の子」


また悲しそうな目になってしまった。いや、この自分がそうさせたのだろうと思う。

話を聞きたい・・・などと言わなければ、こんなにも辛そうな会長にはならなかったはず。


「ちゃんと逃げれた?それだけがずっと心配だったの」

「・・・はい。全力で・・・。」

「・・・・良かった。」


その後の数日は街中あるくのもビクビクだったのです・・・とは言えなかった。

会長は僕に渡した雑誌にゆっくりと目を下げていった。


「この本には、それ以外にも助けられたのよ」

「え?・・・」


ただの趣味誌の本が、会長のためになった?


「いろいろなことを思い出させてくれたの。それがあったから今の私になれた」

「・・・思い出したこと?」

「・・そうね、残念だけれども、今となっては言えない最後の秘密ね。それくらいは良いでしょ?」


「でもね、そう・・・私が2年のブランクの後、高校に行くことにしたのは、たしかにこの本のおかげ」

「全然関係なさそうですけど」


未だ整理できてない頭とは関係なく、自然にでた疑問の言葉です。


「あなたに・・・、ちゃんとした普通の高校生として会いたかったの」

「・・・・僕ですか?・・・・。だって、あの事件の時に遠くから本を投げただけなのに?」

「そうね。ちょっとだけしか顔見れてないし、記憶だって曖昧だしね」


なぜ?ほんとうにそれだけのために??


「じつはね、その言えない秘密も関係しているのだけれども・・。だからそこは聞かないでね」


うなづきます。そんな・・・辛い告白までした会長に、それ以上のことなど・・・。


「ん~・・・、こっちは良いかな!?、一条君だし。」


一条君・・・・。久しぶりに会長らしく呼んでもらいました。


「あのね、事件の後でいろいろと助けてくれたのが蘭なの」

「蘭さん?幼なじみだったのですか?」

「え~・・・と、・・おんなじ仲間だったの」

「・・・・?、仲間って・・・・、あのヤンキー仲間!?」

「仲の良い後輩で女友だち」


ひゃ~~~!!!?思いもしないことであります!蘭さんも全然解らない!!


会長、自分のスカートの裾をたくしあげます。

な・・・なにしてるのですか!いきなり・・・!!

見えます。もう見えちゃいます。


あ・・・・・・。混乱で静止した思考に蜂・・・。いや、蜂の絵。

会長の左内ももに蜂がとまっているような・・・・。


「虫よ。・・・蜂。前に蘭の絆創膏の話し、覚えているかしら」


そうだ・・・・、競技会の時の写真。

蘭さんの内ももに絆創膏が貼ってあって、それを画像処理しようかと話そうとした。

会長は虫に刺された跡と言ってた。プールでもサポーターしてたのは・・・・

その虫を隠すため・・・。


「春香と夏美は部外者よ。プールではそろえてもらっただけ。喋ったことはナイショね!」

「も、もちろんです!」

「でも顔に出そうね・・・。また怒られちゃう」


なんか少し嬉しそうなのは・・・何故?


「で、蘭に相談と言うか、どうして良いか解らないと話したらね、「なら女子高生になろ!」だって。

彼女、当時中学三年生になったばかりだったの。この事件は彼女にもかなりショックだったみたいで、

できれば普通に高校生になろうかと考え始めてたのね」


「さぼってたけれど、私も一応中学卒業してたし、その気になればまだまだ高校生の年だし。

それから二人で一生懸命に勉強したわ!。うちの高校ってそこそこ良いランクでしょ。

それくらいの所にいかなければ、本当に高校生になった私ではない・・。そして、あなたと会うことにも

自信が持てない・・・。」

「そんな・・・・僕に会うこと・・なんかもその理由に入るのですか?」

「もちろんよ!。だってあなた、ヤンキーが会いたいっていっても怖いだけでしょ」

「・・・・・はい」

「今の私だから安心して会えたと思うの。だから・・・、私の作戦は大成功なの」


また・・・自分の知らないことが・・・。もういっぱいすぎて熱がでそうです。

あ、なんか恥ずかしくてすでに発熱中です。


「でもあなたも同じ高校にくるなんて、大成功どころではなかったかもね」

「・・・なぜ、僕が入るのを知ったのですか?」

「入学式の日に、もしかしたら・・・と思って見てたのよ!。そうしたら・・・見覚えの有るあなたを見つけたわ」

「・・・・・僕は今、夢をみているのかもしれませんね。あまりにも僕にとって都合の良い話しです・・・」

「私も夢みたいで飛び上がりそうだった」


やっぱり夢なんですね。今のこの状況は・・・。


「そこからまた蘭と相談したの。なんとかあなと自然に遊び合える関係がはじまるように。

そうしたら、またうまくまとまったわ」

「・・・・、それって・・・・鉄、TMSのことでしょうか・・・?」

「嬉しかったわ!窓から覗いてくれたあなたをみた時」


ワナ・・・・だったのですね・・・・。鉄道の文字って。


「そうね、なんせあんな本を持ち歩いているのだから、きっと釣れると確信はしてたわ」


ああ、みごとなり鈴会長!あらゆることで完敗です。

そして・・・・・とても・・・・尊敬です。





話も長くなってだいぶ時間が遅いです。このまままた変なトラブルにまきこまれないように今日は帰ることにしました。

いろいろと会長を知りました。ほんとすごいです。悲しいことを話してくれました。ますます好意を大きくしてしまいます。

でも、もうひとつだけ・・・・・・最後に残った僕の疑問。

たしかめるのは今日が良い・・・とあらためて思ってます。


「じゃあ、また学校でね。こんな私でも・・・、今まで通りに接してもらえる?」

「もちろんです!いえ、それ以上に僕は会長が大好きになりました!」

「・・・、嬉しいわ。とっても・・・。ではまた明日ね、一条君」


「またあしたね!ムツねえ!」


歩き出そうとした会長は、ふっと足を止めて不思議そうな目を向けてます。


「あの・・なんか言ったかしら?」


少し動揺してます。いえ、なにか怖いものを見つけたような顔をしてます。


「あしたも遊ぼうね!・・・ムツねえ」


「・・ムツ・・ね・・え・・・」


涙が、目から沢山の涙が一気にあふれ出して・・・あっという間に顔中泣き顔・・・。

そう、この顔が「ムツ姉」の泣き顔です。

最初に見たリン会長。今日見たスッチ。事件の時の泣き叫ぶ女の子の声。

そう、だから、きっと解ってたんだ。あの日とつぜん居なくなったムツねえだと。

いつも引き止める心の声は・・・・・・・ムツねえ大好き!。




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