13 太陽がいっぱい
<13 太陽がいっぱい>
「ん~!、はい!お待たせ~!」
「あ、ありがとうございます」
「な~にかしこまっているの~!、おかわりも有るからね~」
「あの、会長・・・」
「なにかしら?」
「・・・・・蘭さん、なにか変なのですが」
「あら、おきづきになってしまったのね」
「・・・・僕はどれだけニブい設定になってるんでしょう・・・」
「1キロ太ったわ」
「・・・知りません。」
「いただきましょう」
あ~、お好み焼きですね。蘭さんが作ってるんですね。
今日の集会は、なぜか上機嫌でのフルサポート。
とっても怖いのは気のせいでしょうか・・・。
「○△ね、とっても□◇△○×なことが有ったみたいですの」
「会長、食べるかしゃべるかどちらかでお願いいたします。なにか大事なものを
失っているような気がいたしますので」
「これもあなたのおかげですわ」
「え、僕が何か?」
「ええ。正確にはあなたの写真」
「・・・?、あの競技場とかコスプレとか、プールとか?のでしょうか」
「正解だわ。あら、こちらにはエビがはいってないのね」
「・・・・僕のをどうぞ」
「まあ、いただくわ」
食べながら話す会長を待ってますと、複合された言葉の選別がたいへんそうですので、
ざっと取りまとめました。
以前撮影した蘭さんの写真は、プリントを渡しつつ、お気に入りを携帯へとばしておきました。
それをサッカー部のイケメン君に「使ってね」と渡したら、みごと釣り上げてしまったとか・・・。
なので本日は超ご機嫌さんなのです。
いったい何に使ってねなのだか・・。そもそも、どの写真を渡したのやら・・・。
イケメン君は、かなり深く針を飲み込んだようで、もう逃げることが出来ない魚状態。
蘭さんにとってはまな板の上の鯉?
なんだか・・・・、恐ろしい魔女?
「ほんとに・・・、蘭ったら恋多き女よね。どれだけモテれば気が済むのでしょう」
・・・・・会長。泣いてる男の数では負けてないとの噂有りますが・・・。
「あら、私は一途よ」
・・・・何に?
証人Aの証言
「なんでも、会長の下駄箱にはポストが併設されているとか。毎日届けられるラブレターで靴が取り出せなくならないためだそうです。
あ、私は謎の一年生です。春香とか、下賤な名前ではありません」
証人Bの証言
「そのラブレターは、会長自ら採点した後、執筆者に返されるとか。半期に一度、
順位発表され、赤点の場合は名前を公表されるとか。
いえ、私は夏美なんて下等な名前ではありません。闇の魔道士・・としか答えられないのです」
一途ですか。そうですね。ラブレター書く方も命がけです。
一度試しに僕も出してみようかな?なんて少しでも思ったこと後悔してます。
きかなかったことにしてください。もう二度とそのようなこと考えません。
「残念だわ。特別に耳元で朗読の後、じっくりと採点してあげたのに」
口のハシが少し上がってます。あ、舌なめずり・・・。
数日後、会長がなにかのリストを僕に。
「あのね、どうしてもって言われて。お願いできます?」
「は?」
リストは何人か女子生徒の名前が。
学年もクラスもさまざまのようです。
「この娘たちの写真を撮ってあげてくれません」
「なんですか?それ。」
「ほら、蘭の恋路のお話。あれ結構有名になっちゃったのね。で、
恋する乙女がワラをもつかむ思いで自分も撮影してほしいって。」
「・・・・?は?。それって僕ですか?」
「もちろんよ。あなた以外に不思議な力をだせるカメラマン居ませんわよ」
「・・・・・・会長、・・・嬉しそうですが」
「私は天空から蜘蛛の糸をたらしているの。無償の奉仕ね」
・・・・・会長は無償でしょうが、こちらは肉体労働ですよね。
そして、蜘蛛の糸って・・・・、その娘たちは血の池や針の山をさまよっているのか?
会うの怖い・・・。
数日後。
「はい、では好きな服を着てください。見せたい姿とか」
少女A「私は私よ関係ないわよ!特別じゃないわよ。どこにだって居るから!」
え〜、意味わかりません。でも、その着ぐるみは違うかも・・・
少女B「では、さっそく・・・」
「・・・!ちょ、ちょっと!!」
なんですかー!!ほとんど透け透けじゃないですかー!
少女C「あなたのことなんて、全然気にしてないんだから!たまたまこんなシャツがあっただけなんだから!」
・・・・・ええ、そうですね。たまたま露店見たら、本命の人をプリントしたシャツがあったんですね。
でも、その人って、普通の高校生ですよね。芸能人とかじゃないんですよね。
少年D「ああ、早く、早く彼に写真を送りたいわ」
・・・・・どんなの撮ってもスパムメールでしょ。しなってするな!口を半開きにするな〜!!
先生E「次で決めるの。いい!もう後が無いの!このチャンス逃したらアラフォー決定なの!完璧なの夜露死苦!」
・・・・・ゴッドファーザーのラッパが遠くで鳴ったような・・・。
ああ、なんかダメだったら僕も成績「フォォー」されそう・・・。
「一条君、お疲れさま。」
「あ、会長!一緒につきあっていただきましてありがとうございます。お疲れさまです。」
「あら、私からお願いしたのですもの。当然ですわ」
会長と一緒に駅への帰り道です。
「ねえ、もしまだ元気があったら、私の写真も撮っていただけないかしら」
「?ええ、いいですよ。むしろお願いできましたら・・・な気持ちがあります」
・・・・・、いろいろな悪夢を、最上級な被写体で消し去りたいので!
「嬉しいわ。この垣根にカメラ置いたら三脚がわりになるかしら?」
「あ〜、そうですね。もう日も暮れかかっているし、その方がブレないで良さそうです」
「後も見晴らしが良さそうで嬉しいわ」
会長の提案どおり、垣根を借りて制服姿の会長の全身を。
そういえば今まで撮った会長は、どれもすごく奇麗だったけど、女子高生らしい
姿は未だだったかも。やっぱり絵になるな〜!
「いきますよ〜!」
何枚か撮り終えた時。
「いち・・瑞樹くんも一緒にどう?」
「え・・・!いいんですか!?」
「もちろんですわ!こちらに来て」
うふょ〜!!会長と二人だけで記念撮影!!
これはすごいプレミアムプレゼントだ〜!!!お宝だ!!!
カシャ!
「もう一度。もう少し寄っていた方が自然だと思いますわ」
「あ、なんか緊張しちゃって・・・。」
カシャ!
「もう少し力をぬかれたら?」
「あ・・・、はい!」
「もう一度ね」
カシャ!
「瑞樹くん、なんだか赤いけれど恥ずかしいのかしら」
「え、・・・・なんか、ちょっと嬉しくて。」
「あら、可愛らしい。では最後にもう一度ね」
・・・・・なんか、、可愛らしいって言われて、ちょっとスネてしまった・・ら
・・chu!
・・・カシャ!
「!!・・・」
「ほんのお礼ね!これはみんなにはナイショにね。」
・・・・・・・マジッっすか!今、ほほに当たりました!?柔らかいなにかが!!!
「さあ、いそいで帰りましょう。早く画像を送らないとギリギリなお方もいらっしゃいましたし」
「・・・・・は・・・・あ!」
・・・・・先生だ。
それから帰っていろいろと手配して (特に先生へは超特急で画像送りました!)。
数日後にプリントを皆さんに届けました。
そして会長にも。
「・・・・ほんとうに、ありがとう・・・。私ね、普通の女子高生姿の写真を持ってなかったの。
でも、自分でこうして見れて。今すごく嬉しいわ」
「会長。僕も・・・、奇麗な会長との写真いただけましたし。それに・・・あの・・・・」
「フフ、ナイショよ」
あの最後の写真。少し下に見た夕焼けの街を背景に立つ二人。
男の子はちょっとスネ顔だけれど目が驚いて。
女の子は、まさにその男の子の頬に口を寄せたカット。
なんて、僕は幸せなのだろう。
会長からの贈り物をしっかりと記録、記憶。
夕焼け・・・、夕陽・・・・の、太陽がいっぱいに。
そして、ああ、最高の幸せも胸いっぱいに・・・。
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さて、これはなぜか別の視線から。
「君、あそこで座っている男子生徒を呼んできてくれるか」
「あ、はい」
「そうだな、体育館裏の焼却炉前で待っていると」
「は・・・はい」
一人の生徒が指示されたことを男子生徒に伝えた。
なにかすごく幸せそうな顔で立ち上がった男子生徒は、
自然な感じで体育館方向へ。
指示した人物は、その後ろをゆっくりとした足取りで歩いていった。
手にはバツ印を入れられたあげく、固くまかれた月刊ぜえくすぃー。
誰もいなくなった廊下には、
カード会社から律義に送られてくる誕生日お祝いカードが一枚むなしく落ちていた。