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【連載版】「もう会うこともあるまい」と手紙で私を捨てた元婚約者様へ。あなたが食べたそのお菓子、毒よりおそろしい「真実」が入っていました  作者: 佐倉美羽
CASE2:或る魔女の最期〈愚者の毒事件〉

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拝啓 7月12日 エーリカ・R・ワトスン 様へ 3/3

 ダラダラと語ってきましたが、そもそも此度の犯行はエーリカさんにしかできなかったと私は思っているんです。


 簡単に今までの情報から推測できる犯人像をおさらいしましょう。

 ・被害者が体調を崩した時から亡くなるまでのおよそ6年間、毒を与え続けられた。

 ・サルバルサンを簡単に入手でき、且つ保持していてもおかしくない。

 ・サルバルサンからヒ素を抽出し、被害者の健康に留意しながら適切な分量を与え続けられる。

 ・被害者の飲食、もしくは薬に簡単にアクセスできる。

 ・犯行を継続的に続けられる忍耐力と計画性がある。


 エーリカさんしかいません。住み込み看護師である、あなたです。


 それに、証言記録でも不審な動きがありますよね。執事さんの話では、エーリカさんはワインを取りに地下に行っているのに、フレッドさんの話では看護師待機室から出て来たと証言がある。看護師待機室でいったい何をされていたんです?綿密に量った“愚者の毒”ヒ素入りのワインを、取りに行っていたんじゃないんですか?


 ヘレンさんには確かにヒ素を入れるタイミングがありました。しかし、エーリカさんにもヒ素を混入するタイミングはいくらでもあったんです。なぜなら、ご自身の動きをほぼ書いていないから。書いていない場所、時間。すべてが犯行可能なタイミングです。


 おそらく、私に送ってくれた報告に嘘は書いていませんよね。証言集という最も重要な記録でさえ、包み隠さず、赤裸々に記した。本当に、見て、聞いたことをそのまま書いてくれたんですよね。ヘレンさんの部屋にサルバルサンがあったというのも、物理的には事実だったんでしょう?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で。


 すべては、私から信頼を得るために。ヘレンさんが犯人であるという誘導に、乗らせるために。その一点にすべてを費やした、徹底した。それが、エーリカ・ローズ・ワトスンの誠実さ、精密さ――そして、最後まで妥協しない執念。それこそが、ジェイムズ・アームストロングを殺し得た”魔術”。


 エーリカさん。

 ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。

 私は初めてエーリカさんに送った手紙でこう申し上げましたよね。


「物証がなければ法王庁も審問できません」


 私の手元には、ヒ素の検査報告書があります。エーリカさんが送ってくれたものです。これを証拠に法王庁へ申し立てをすれば、アームストロング家への家宅捜索が行われます。


 エーリカさん。聞いてください。

 もしあなたが、ついうっかり自分のことを書き忘れただけだった。私の考えは的外れだとおっしゃるのであれば、私はこの報告書を法王庁に提出します。私では手に負えない事件ですので。


 でも、もし。ほんの少しでも、心当たりがあれば。


 自首してください。


 あなたは私に依頼する際に、『神はお許しにならない』とおっしゃっていました。

 もし、あなたの胸に、まだ神を信じる心があるならば、どうか目を背けないでください。

 神は何人も見捨てません。罪は償えます。私も、毎日お手紙を書きます。

 どうか、お願いします。

 お返事は書かなくて構いません。

 信じています。


 敬具

 ライラより

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