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【連載版】「もう会うこともあるまい」と手紙で私を捨てた元婚約者様へ。あなたが食べたそのお菓子、毒よりおそろしい「真実」が入っていました  作者: 佐倉美羽
CASE2:或る魔女の最期〈愚者の毒事件〉

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エーリカ・R・ワトスンによる聞き取り記録 1/2

 ■執事リンクス及びリヒト・トレバーの証言

 リヒト「お館様ジェイムズが亡くなった日のことですか?ええ、よく覚えておりますよ。なぁリンクス」

 リンクス「うん。ボクも覚えてるよ。リヒト。お夕食が8時きっかりだから、それに合わせて準備をしていたところだったね」

 リヒト「そうそう。取り立てておかしなことはございませんでしたが……。え?厨房のことですか?エーリカさんもいらっしゃったじゃないですか」

 ※厨房にはヘレン、エーリカ、双子の執事がいた。

 リンクス「いやいや、リヒト。エーリカさんは途中で出て行ってたじゃん。その後のことを知りたいんだよ。きっと」

 リヒト「ああ、そういうことでしたか。これは失礼を。エーリカさんが地下保管庫に向かわれた※後のことですね」

 ※お食事用のワインが切れていたため

 リンクス「ヘレン奥様はなんだかぼぉーとしてたよ。まぁ、ボクたちも調理で忙しかったから、気に留めてられなかったけど」

 リヒト「時折、深いため息をつかれておりました。心底疲れた、とでもいうような」

 リンクス「僕たちが配膳しに向かった時も、なんだか思い詰めた顔していたね」

 リヒト「やはりジョージ様との仲やお世継ぎの問題が重圧になっていたのでしょう。何よりお館様と顔を合わせたくない。お気持ちはわかりますが、こればかりは僕たちではどうしようもありません」

 ――ええ。わたしともそのことを話していましたね。よく愚痴をこぼしていました。

 リンクス「仕方ないよ。だって、お館様、奥様にひどかったじゃん。いるよね。女の人はすべからく自分より下だって思想の人。前時代的というか。そりゃ避けたくなくもなるよ」

 リヒト「こら、リンクス。故人を悪く言うのはよさないか。申し訳ございません。エーリカさん。お気を悪くされてしまいまたよね」

 ――いえ、問題ありません。

 リヒト「ありがとうございます。こんなことを申し上げるのは恐縮ですが、お館様が亡くなって僕たちもホッとしておりました。なにせ、あの方がいらっしゃると場の空気が張り詰めてしまいますから」

 リンクス「ボクらの母さんが現役だった頃はあんなんじゃなかったのにね~。ご母堂様が亡くなったくらいからおかしくなっちゃった」

 リヒト「僕たちが配膳を終わらせて、厨房に戻った時にはエーリカさんもいましたよね。たしかその時にはヘレン奥様と一緒にお料理をされておられたと存じます」

 ――ええ、私は麦とワインの準備を。ヘレン奥様はミルクを温めていました。温度が下がると風味が落ちますので、タイミングには気を遣っておりました。

 リンクス「なんかピリッとした空気だったけど、喧嘩でもした?」

 ――いえ、フレッド様がいらっしゃったんですよ。それで、ちょっと。

 リンクス「そかそか。ボクたちが知ってることはそんな感じかな」

 リヒト「ああ。そうだな。その後は控室で僕たちも食事を摂っていたら、フレッド様に何か作って欲しいと頼まれまして、簡単なものをお作りしていたら、エーリカさんの大声が聞こえてきました。僕たちはフレッド様と共にお部屋に参りますと、すでにジェイムズ様は事切れる寸前でございました。

 以上です。ご満足いただけましたか?」

 ――はい。ありがとうございました。


 ■ジョージ・アームストロングの証言

「な、何でそんなことを聞くんだ。君には関係ないだろう!」

 ――おちついて。わたしとあなた、どちらにも関係があることです。

「……っ!わ、私は、19時過ぎ頃に仕事から帰って、部屋で着替えて、ダイニングに行っただけだ。他はな、なにも知らん」

 ――そうだったんですね。では、部屋からダイニングに行くときに誰かと会いましたか?

「……フレッドと会った。遺言の話になって、その後すぐに父さんの部屋に向かっていった」

 ――遺言書の内容を知っていたんですか?

「ああ。口頭だけど。知ってたよ。ヘレンにも話していた」

 ――そうでしたか。それにしても遺言書、驚きましたよね。あなたはもとよりヘレン奥様にまで分与するなんて。それも、フレッド様よりも多いとは。

「……まぁ、父さんもヘレンにはキツく当たってたけど、結婚した当時は喜んでたからな……。だからこそ愛憎裏返ったのかもな。今となっては全部遅いが」

 ――なるほど。フレッド様と会ってからはどうされましたか。

「父さんの部屋の前でフレッドの怒鳴り声が聞こえて、それよりも大きな父さんの怒鳴り声が響いてた。『貰えるだけありがたいと思え』だとさ。それから、『くたばれクソ親父。殺してやる、殺してやる』って声が聞こえてきて、私は慌てて部屋に入って、フレッドを羽交い締めにして部屋から出したんだ」

 ――ああ、だから。

「な、なんだ?」

 ――いえ、その後フレッド様が厨房にいらっしゃって、ネズミのように保存庫を荒らして行ったんですよ。それをヘレン様がお咎めになって、返す言葉でフレッド様が『家庭も守れない女が、随分なご高説だ』と。あまりに機嫌が悪く、何かあったのだろうなと思っていました。

「あいつ……そんなことを言ったのか」

 ――ええ、まあ。お食事を召し上がられた後はどうされましたか?

「部屋で休んでいた。ヘレンも一緒だった。それから、君の声が聞こえて、父さんの部屋に行ったら、ベッドから転げ落ちていた。腹を抑えながら弱々しく遺産のことと家族のことを話してたよ……。本当にそれだけだ。

 き、君はこんなことを聞いて、いったいどういうつもりなんだ?何を考えてる?」

 ――今はわたしを信じて。ありがとうございました。

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