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第十四話

沈黙が落ちる。

宮坂の迷いが、肌を刺すように伝わってくる。

おそらく、アメリカ側からはこう言われているのだろう。

「指示に従っていれば、お前も、脅しに使った周囲の人間も助けてやる」と。

だが、そんな都合のいい話、信じるに値しない。

それでも、追い詰められていた宮坂には効果抜群だった。

今もまだ、どこかでその保証を信じているはずだ。

俺は、そのことをあえて言わない。

これは、宮坂がどちらを信じるかアメリカか、俺たちか。

その答えを、彼自身に選ばせなければならない。

本心から、覚悟をもって俺の手を取らなければ、この先の地獄には到底耐えられない。

沈黙のまま、数秒が過ぎる。

その数秒は永遠の様に長かった。

そして・・・。

宮坂が、震える手をゆっくりと伸ばし、俺の手を握った。

その手は、ひどく冷たく、少しだけ強かった。


「・・・信じます。暁先輩を」


小さな声だったが、そこに迷いはなかった。

俺は宮坂の手を握り返す。



その瞬間————何処からか爆発音が響いた。

その爆発音はこのイノベーションフェスタ会場内。

音の方向から推測するに今、学会が開かれているホール付近。

そこには冬川や朝霧、真田、矢野教授がいる。

俺の心臓の鼓動が2倍、3倍になるのが分かる。

もしかしたら爆発で建物の一部が欠損し、それが冬川に当たったかもしれない。

もしかしたら爆発の衝撃で朝霧が吹き飛ばされたかもしれない。

そんな最悪の事態が俺の思考を埋め尽くす。


「暁先輩!!」


俺の意識を覚醒させたのは宮坂の叫びだった。


「大丈夫です。恐らく誰も死んでいません」


俺は一度目を閉じ冷静さを取り戻す。


「悪い。それで、誰も死んでないってなぜわかる?」


俺の問いに宮坂が答えようとした瞬間、スマホが勝手に起動し画面にリリスが映し出された。


「マスター、報告します。現在、国際科学技術センター一階・第1ホール入り口付近で爆発が発生。その影響で第1ホールは半監禁状態に移行しています」


第一ホールと言うと学会が行われている場所あり、さっきまで俺と宮坂が居た場所だ。勿論、今も冬川や朝霧は第一ホールに居る。


「中の人間は無事か?」


「はい。ただいま監視カメラの映像を映し出します」


俺が命令を出す前に、すでに望んだ行動を実行してくれる。

流石は人間の脳とAIの融合で生み出された存在だ。

映し出された映像で分かるように第一ホールに居る人間は全員無事だ。

ただ、不審なことがある。

皆が怯えている中、複数人の男が聴講席から立ちあがり発表ステージへと向かった。

その男たちは周囲を確認しアサルトライフルを構える。

映像の中で男たちは何かを叫んでいる。だが、ホール内に設置されている機材では音声を拾うことが出来ない。


「宮坂、お前は何が起こってるのか分かるか?」


俺の問いに宮坂は頷く。


「はい。恐らくアメリカ軍です。目的は、永久機関」


「まあ、そうだろうな」


「ただ、USBを狙っていることはアメリカ側も明らかに出来ません。永久機関の存在が他国にバレる。これだけは避けたいはずです」


やはり、そうか。俺たち(暁、冬川、真田)の予想通りアメリカが最も懸念しているのは、永久機関の存在が他国に露見すること。

永久機関の情報を手に入れ、それを完成させ、最強の国家として世界に君臨する、それが彼らの理想だろう。

だが、情報を入手した直後に他国にバレてしまえば、アメリカといえど総攻撃を防ぐのは困難だ。

完全な力を得る前に敵を増やす愚は、彼らも避けたいはずだ。

つまり、何らかの建前で真の目的を隠す。それがアメリカの策だ。


「マスター、真田様より通話が入りました」


リリスが落ち着いた声色で告げた。

真田から?音声が無いからあまり状況が分からないが、どう見ても通話出来る様な状態ではない。


「すぐに繋いでくれ。ただし、こちらからの音声は最小で頼む」


状況から察するに真田は俺に第一ホールの状況を伝えるために通話を掛けてきた。

こちらが音声を拾えていないことを予想して。

僅かなノイズの後、男の声が聞こえた。


『聞けぇ!神へ反逆する愚か者どもよ!』


ステージ上にいたアサルトライフルを構えたうちの一人だろう。

会場に響き渡るその声は、明らかに群衆を威圧するためのもので、よく通る。


『貴様らが、どれほどの罪を重ねてきたか自覚しているのか! 科学の名のもとに、何人の命が奪われてきた!? 何度、世界が滅びかけた!』


『我々は、「アンチ科学団体」人類の本来あるべき姿を取り戻すため、ここに立つ!』


『さもなくばここにいる全員を、神の裁きの名のもとに粛清する!』


俺と共に映像と音声を見ている宮坂が口を開いた。


「分かってると思いますが、表向きの理由です」


宮坂が言うまでもない。そんなことは分かっている。

そもそも、アメリカが本気を出せばこんな回りくどい手段を取る必要などない。

USBを回収したいだけなら、俺が一人になったタイミングを狙って強奪すればいい話だ。それをしないのは捜査を避けたいから。

派手な暴動の裏に真の目的を隠し、すべてを「テロ事件」として処理する。そうすれば、永久機関の存在は他国にバレずに済む。

すべては「無かったこと」にするための、巧妙な舞台装置だ。


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