呟き
「…………くっ」
「ふふっ、頑張って三好くん」
それから、二週間ほど経て。
そう、呻き声が洩れる。そして、そんな僕に楽しそうにエールをくれる藤原さん。もちろん、例のUFOキャッチャーにて可愛いトイプードルのぬいぐるみを取るのに挑戦していて。
さて、初めてここに来たあの日以降、放課後の度に一緒にここに来てはチケットをもらい挑戦しているわけだけれど……うん、まるで成果がなく。つまりは、彼女のチケットと彼女の時間がただただ無駄になっているだけで……うん、ほんとに申し訳ない。
……だけど、だからこそ僕がすべきは何としてもこのぬいぐるみを取り彼女に渡すこと。言葉以外に謝罪と感謝を示す方法なんて、この他にはきっとないから。
……とは言え、気持ちだけでどうにかなるなら苦労はなく――とうとう、次が最後のチケットに。いや、まあ今日の分はという意味だけど……でも、僕がそこに甘えちゃいけない。なので、これが正真正銘の最後だと自身に強く言い聞かせ、いっそうの集中を注ぎ慎重にクレーンを……くっ、やっぱり無――
……あれ? 今、ちょっと良い感じに……ひょっとして、これなら――
「…………あ」
「……ありゃ、ちょっと惜しかった気もするけど……残念だったね、三好くん」
「……ぐっ……ごめん、藤原さん」
再度、呻きが洩れる。恐らくは、今までで最も悔しい呻きが。……うん、今日も駄目だった。ほんと、申し訳ないことこの上なくて顔も見れない。
……だけど……同時に、かつてないほど気持ちが昂ってもいて。……だって、これなら――
「……ふふっ」
爽やかな風が頬を撫でる、ある月曜日の朝のこと。
二年D組の教室から、校庭をじっと見つめる私。ううん、正確には……長方形のコートの中心で太陽のような笑顔を見せる、トイプードルみたいに可愛い一人の男の子を。……ふふっ、今日もすっごく楽しそう。
『――ほら、見て見て藤原さん! 今日ようやく取ったんだ、これ!』
二日前の夕方頃。
自宅の玄関にて扉を開くと、満面の笑顔でそう口にするクラスメイトの男の子。これ、とはもちろんぬいぐるみ――私が取ってとお願いした、可愛いトイプードルのぬいぐるみで。
……そっか、取りにいってくれてたんだ。昨日、なにかコツを掴んでたっぽいし。……でも、一人で行かなくていいのに。私がいなきゃ、チケットも無いからお金もかかっちゃうんだし。
……ただ、それはともあれ……まさか、ほんとに取っちゃうなんて。結構、難しくしたつもりだったんだけどなぁ。それこそ、昔からずっとあのゲームを嗜んできた私でも取れない程度には。……まあ、最初の操作を見た時からセンスがあるとは思ったけど、それでも驚きは隠せなくて。
……まあ、もちろん嬉しくないわけじゃないんだけどね。だって、彼が他でもない私のために取ってくれたんだし。……でも、それはそれとして――
「…………今度は、もっと難しくしなきゃね」




