Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #97
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #97
トイレ内 奥の方が捻じ曲がっている 右に90度 ちがう、床が回転して左の壁となり 右の個室のある方が床へと…下へと捩じれている
捩じれは途中の一回だけ 床が壁に 右の個室が床へと転じる 捻じ曲がっている 重力はどうなっている? 普通に歩けるのか?
「うぷっ」
「素晴らしい偉業!」
少し黙っててくれ…眩暈がする 目が回る 吐き気に似た何か…奥を見るのをやめる 視点を出入口に向けて 目を瞑り…少し待つ ここでバケモノが出たら…死ぬだけだな
脳へと血液を送るため OTLの姿勢 頭を下げる 徐々に落ち着く視界
顔を上げる そっちは見ない オレの周りは…変わりがない 普通に普通の状態…普通の状態? なにをもって普通とする?
「神に祝福されしものよ! 栄光あれ!」
空間が捩じれている それが普通なら それがおかしいと感じる感覚の方が間違っている
切り替えろ
立ち上がる やや…目が回るが…なんともない すぐ目の前の出入口を確認…おい
ドアノブに触れない
「おめでとう!」
ああ…煩い
正面から見ると…そこにはきちんとドアノブがある だが…何もない
平らな…壁の感触
横から見てみる…テクスチャーだ 壁にドアのテクスチャーが投影されている 正面から見ると三次元 横からでは完全な二次元 ただ、何もないわけではない? 扉の装飾 でこぼこがある 出っ張りだけがない
物理的に開けられなくなっているドア さすがにこれは…ゴンっ
「痛ってえぇぇ」
「素晴らしい偉業!」
そんな音 どうやら…上がってきたキムが上にいる死体袋に気がつかずに 立ち上がろうとして…頭をぶつけたらしい 床にOTZしている こいつら…イモータル属性?
「お前…こんなとこを歩いてきたのか? 普通に?」
「おめでとう!」
「は? なんだって? これはっ…うええっ!」
後頭部を擦りながら トイレの壁を手に 立ち上がったキムは次の瞬間 奥を一瞥したと同時に床へと倒れ込んだ そのままへたり込んでいたかと思うと 今度は寝転がった
「なんだこれは?」
「天才だ!」
トイレの床でよくそんなことできるな? お前…いや 転倒の仕方が脳内で病気が発症した時と同じ 転んで起き上がれずにDeadEnd これで呂律が回らなければ……
「最高だ!」
「お前…よく普通に立っていられるな…目が回って酷いぞ」
仰向けになって 目に手を当ててキムはいう 大丈夫だな ゲームしている最中に脳内出血とか やめてくれ それでなくても、頭が割れていた 後遺症があってもおかしくはない
「頭を低くして、目を合わせずに、静かに待て。無理に合わせようとするな。自然と慣れる」
「素晴らしい偉業!」
こっちに脳内ホルモンの動きに合わせるような、何か、があるとは思えないが スタントロピーはしておいて無駄ではない
「待ってくれ…起き上がれない。目が回る。こんなところ…行けんのか?」
「なんて素晴らしいんだ!」
「さあな…重力がそっちへと変わっていてもおかしくはない。そういうゲームもある」
「だからって…3Dゲームでこれはないわ。さすがに下はいつも下にあってくれ」
「天才だ!」
「そうか? ただ重力で地面に押し付けられているだけだぞ? オレたちは。だが、ゲームならその方向は関係がない。一部のゲームは、どれだけ空から落下しても死なないだろう? これぐらいは何ともない」
マリオのおっさんは平気だ ララは死ぬが…オレ達もだろうが それだけだ
「栄光あれ! 栄光あれ! 栄光あれ!」
「…あとこの大合唱をなんとかしてくれ…耳障りだ。眩暈と吐き気で…最悪だ。こんな3D酔いは久しぶりだ。何回か、喰らったが…ここまで酷いのはなかった」
そうか
「海外のはそのあたりが厳密に作り込み過ぎてるからな。すぐに慣れる。それまでは…そこで待て」
下とは違い…ここはあまり汚くはない 濡れてもいない 汚物もない 何もなくて異質
「ありがとう!」
「お前…よくそんな話をしながら、ほかの事、できるな?」
話している間 用具入れを開け 中を点検し 手洗い場を確認し 一番入口に近い個室内まで見て回っているオレを、キムは嫌そうな口をして、そういう…その舌を出しているのは吐き気によるものだよな?




