Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #84
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #84
ナース・ヘッドで投げたはずの呼び鈴 なぜかある 戻っている呼び寄せるもの
それを…またも引っ掛ける 音が鳴る 軽い
チン
という音…割れてない?
時間停止が戻っていた
動き出す
呼び鈴が床へと落ちていった
慌てて、カウンターを飛び越え…ようとした矢先 落ちた呼び鈴がさらに敵を呼ぶ 鼻ザルがオレに気づいた声を上げた瞬間 さらに大きな声で叫んだ のたうち回るような背後の空気の動き
かまわず飛び越える 同時に切り替わる監視カメラの映像 上からの目線 天井からのカメラワーク
二体の戦いが…三つ巴の戦いへと変わる カウンターの下へと入り込む タイミングよく、キムの手が目ザルに当たる 鼻ザルが顔に入り込んだモップを嫌がって頭を振る 手を伸ばして呼び鈴を手に入れる 目ザルがエレベーターの壁に当たって痙攣を起こす キムが大声を上げて体を振る 鼻ザルのモップが隣人に当たり、隣人のヘイトがそちらへと向く 横になった目ザルの手足が激しくバタついて、やがてぐったりとし静かになった それに怒った隣人が鼻ザルを殴る 一撃を貰ったボクサーのように膝から崩れ落ちた鼻ザルは、モップを床に付けた姿勢のまま静かになった
透き通るように輪郭が不鮮明になったサルどもは、そのまま静かに……
「ゲェーップッ」
消滅した その音を発して 死ぬ時ぐらい静かに消えろ
………
反対か
死ぬ時 爆発やガス そんなのを周りに撒いていかないだけ…ましか ゲップの臭いは残していくがな
予定通りだ 最善はどちらもキムが倒す のだが…おっと
それを確認したキムがそこで膝をついた
「ぜああ はあ ぜはあ はあ はあはあはあ……」
荒い息…口もねえのに 荒い呼吸を繰り返して 沈黙する 生きてはいるようだ
そちらの方へと隣人のヘイトが…向かない カウンターの向こう 隠れているオレを完全にわかっているような動き
カウンターから身を乗り出して…だからそこを飛び越えられないのは分かって……?
首が伸びた いや、腹の部分と首が伸びた それにつられて…二の腕 そんなのまでもが…伸びる
異様な体型 形状 ゴムのように伸びる体躯
カウンターを超えて 頭を下げる
オレを見つける
逆さまに オレを見つける 枯れ果てた女性の貌
意外なことにその時、変化があった
嗤う
嘲るようにオレを嗤いやがった
ちっ
上手くいかねえもんだな そのまま キムが隣人を もしくは隣人がキムを倒して 満足して立ち去っていく それが最上だったんだが……
そうはいかねえか
オレを確認したからか 首が戻っていく カウンターからはこちらへと来れない…ことがわかっているかのように そちら側のドアの鍵が開いた
自動的にドアが開く
隣人がそちらへと歩き出した
だが…攻略者を舐めるなよ それも想定済みだ
即座に這い出て 反対のドアを確認する ダメだな ドアの表面に浮かんだ
X
本当にそうか 確かめている時間がない
ナースステーションの角 ドアとカウンターの間には柱がある 視界を遮る遮蔽物
サルから逃げる時に邪魔だった柱 今や隣人の視界から一瞬でも外れることができる柱
視界認知以外で 感知していそうだが…それまでの少しの間 それさえあればいい
充分だ
柱の陰 向こうへと隣人の姿が消える タイミングが重要…身体の一部が見えた いまだ
カウンターを飛び越える その反対側へ エレベーターホールへと出る
そして 呼び鈴を X と書かれているドアの方へと投げる こっちへは来るなよ…よし
律儀に
チン
となってくれる鈴
その音に釣られて…律儀にナースステーション内へと入っていく隣人
その音にそいつの挙動が変わった




