Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #69
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #69
ひとつ、分かったことがある 死んだ後だと外の声も聞こえる 境界は意味をなさない 画面が落ちるまで 短い、長い迷走の間
棚の中だ 斜め見る キムが立っている
やはり…立ち気絶か
キムだけ、靴に七分丈のズボンという出で立ちだ 脹脛が厚い…? これで他とは見分けがつく ただ、小学生なら許されるがさすがに大人は…まあいい
今回も目の前に立ったというのにキムの目には生気がない ふらつくだけだ
「キム、気がつけ。お前、こっちから叩けといっただろう?」
何度か揺する それでもキムは気がつかな…?
さっきの違和感 確かめる
キムの肩口 腕が切り取られ、それを無理やり縫い付けたような跡 シャツの上からだ
脹脛 噛みつかれて、それが塞がったような痕
頭の横と後ろ 大きな裂傷の痕
こんなのあったか?
男をまじまじと見る趣味はない ほどなくして、キムが目を覚ました
「ああ…マイケルか? あんた…なんだよあれ! なんだあのサルども! あんなの…インチキだろうがっ! 三匹もいるって聞いてないぞ? なんだよあれっ」
そう叫…? この問答は前にもした
「お前…何度死んだ? いま何回目だ?」
「ああ? こっちでは…まだ死んでねーよ…いや、サルに殺されて…一回目だ」
「なんだと?」
「ああ畜生ー、あと少しだってのに…どうにも横から殴られるんだよな、背後にも回り込まれねーよーにしねえといけねー…後ろや横に壁があると腕が振るえねーってのはどうなんだよ? ええ? ホントにプレイヤーに優しくねえゲームだな」
このゲームに…いやどんなゲームにでも優しさはない それをゲームに求めるようなったらゲーヲタはお終いだ 誰の足も引っ張らない、失敗もない双六でもやっているがいい
キングボンビーがいたか こいつがそうかもしれない
「そこの境界…! のことは話したよな?」
ドアが閉まっている 閉めた覚えはない
「あ? なんの話しだ?」
これは…やはりムサい男に幸運はない 死に戻っても記憶がないとは…アイテムもか? 本当になるとは
確認する ガラス片 ない それはいい ホールへのドアを無造作に開ける
「おっ、お前も殺んのか? 手伝うぜ」
「違う、確かめたいことがあるだけだ」
そこに…目ザルが飛び込んでくる だがオレはドアから先へは出ない そんなバカなことは…いや そこで気づく バカかオレは
サルが邪魔で…ガラスの破片を確認できない サルは不思議そうに…だからなんで外へ出る?
「アホウがっ」
身体ごと引っ張り戻す 殴りかかる姿勢のままキムの体勢が崩れる
重みでふたりして倒れ込む ダメージエフェクト? こいつ…敵かよ
いやジュディのときもあった 他のプレイヤーからの攻撃は効くのか
「なにすんだよ、チャンスだろうが」
なんでか? 床ドンされた姿勢のままキムが牙をむく 早く退け、このやろう
「チャンスじゃねえ、よく見ろ、そこのドアのとこからこっちへはサルは入ってこないだろうがっ」
喧嘩腰 いけない これでは建設的な論理構築ができない
「は?」
バカにはわからないか 這い出て指差す
「そこのドアのところで境界が切り取られている。アイツらはそこからこっちへはこない。こっちが見えない。見ていればわかるだろう?」
それは禁句だ 分かっている 見ていても見えていない奴にはそういってもわからない バカにされていると思われるだけだ
現に
「そんなのわかんねーよ、なんだよ? 境界って、アニメかなんかの話か?」
そうだな、そういった名作もあったな 規模と内容は違い過ぎるが
「そこの扉の位置でサルどもの行動範囲が切り取られている。だからサルはこっちへは来ない。見えていない、それを利用して倒すんだ。それ以外、今のところ手がない」
ただ普通に出ていっただけでは死ぬ それはオレもお前ももうやった
ただ…
「サルを呼び寄せる手がもうない」
ドアを開けるんじゃなかった バカなことをした ドアを開けるという行為で目ザルを呼び寄せることができた これは失態だ




