Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #54
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #54
まあ、いくつかのゲームのヒロインというのはトラブルメーカーだ そうでないとゲームに華が咲かない そして現実的な女性のうち、幾人かもこれだ
ジュディはたぶん、こっちに入る なんだってこんなのの心理的メンテナ…カウンセリングを行わなければならないのか……
思ったより時間をかけてしまった、という焦り 死に戻りの時間がこの時間に加わっていないのだけが幸いか
「あんまりひっつくな」
なぜか腰に引っ付いて背中に頭を当てるジュディ 動きづらい
「いいじゃない」
あまり楽しいものじゃないんだけどな
一方的にこちらから攻撃する 殴る 子供部屋と一緒だ
だが…
こういったときにはたいてい現れない これも平常 時間だけが過ぎる
「そうだ、これ…」
「こうすればいいんじゃない?」
え?
バンバンバン
「おいっ」
いきなり、手を出してドアを叩いた マジか…途端に耳ザルがドアのところに現れた
「ほらね」
ほらね、じゃねえ さっきといい、いまといい、なんでこんなことを思いつく? 訳がわからん
顔になる部分にペンが刺さった耳サルは明らかにイラついている だが…? 威嚇、しているような体の動き 顔が引っ込んでいるから歯をむき出して、なんて見えない 視覚に頼らないで探している ドアはなにもしない 不思議そうに首を巡ら…ここだ
瓶で殴る 手の先だけが境界を出て、頭の部分を殴りつける
ガッ
少し外れた 鈍い感触
「うっ」
いきなりの出来事にサルとジュディがふらつく 頭を抱えてサルが苦しみだす
ジュディがオレの服を強く握る いつのまにか服の血液の痕も、切れたところも全部、消えている 直っている
もう一度殴る 角を当てるように…
ガツッ
ちょうどいい角度、スピードで当たる サルは仰向けに倒れて、手足をバタつかせた 激しく体を捩る
顔、目掛けて追撃を…とした時、真横に鼻ザルがいることに気づいた ゲラゲラ、指差して笑う仕草
邪魔だ 体を半分だけ出してそいつも殴る こっちも帽子で感触が鈍い 上手い具合に角が当たる 脳天を手で押さえて、転げまわった
まったくこっちに気がつかなかった ここでなにかが切り替わっている だが、入って来れないのかどうかは別
耳ザルにはペンが刺さったままだ 目ザルに行えば視覚を奪えたかもしれないが、ここで一番厄介なのはこいつだ こいつだけは抑えておかないといけない
もういいだろう
「ギャギャギャギャギャギャ…ギャッ!」
ドアから出て耳ザルのそのペンめがけて、瓶を振り下ろす 奥で、のた打ち回るサルたちを笑って、目ザルがゲラゲラ、笑い、頭の上で手を合わせて拍手をしていた たぶん、笑っていたんだろう 耳障りなだけだ
グシャアッ
「ギャーアッ」
そんな声で耳ザルは動かなくなった
「ジャアーアッ」
目ザルの威嚇音 ここでバケモノの発する音が切れている そんなのは後でいい
瓶の保ちがいい 厚いだけのことはある すぐ横で手を乱暴に振り回す鼻ザルの腹に一発、入れる サルは身を捩って逃れようとする
追撃しよう…とした時、足を誰かが握った まだ生きてやがる そいつの顔に一発入れる 耳ザルはぐったりと床に張り付いた ピクピクと足が痙攣している
「ギャーギャーギャー」
脇で鼻ザルと目ザルが騒ぎ立ている なぜか近寄ってこない 鼻ザルは怯えたように角へと移動し、丸くなった
こいつらも…ああ、そういうことか
サルには明確な上下関係がある ここのαマールどもに適用されるかどうかはわからないが、その力関係はあるらしい
こいつらの中で一番上が耳ザルだった 目ザルじゃねえのか…それがやられた ならどうする?
アルファマールの足りない脳みそでどう考える? そんなのは知らん
「行け」
そう促して…声が聞こえないか、と気づく ただ目を外すとたぶん、襲われる 体を大きく見せて威嚇する
ジュディがオレの後ろを走り抜けた 目ザルの身体が一瞬だけ、そっちへ体を向けた
ドアが開く
「キシャアアアアアアゥッ」
威嚇音 いくんじゃねえよ
瓶を投げつける こんな時に限って直撃しない…が、床で割れて弾け跳んだ 目ザルの動きが止まる
それでいい
軽快に走り抜ける音 向こうのドアが開いて、その向こうへ消える、音
そう、それでいい あとはオレがどうなるかだけ…おいっ
どうしてこう…女性っていうのはドアを開けたままにしていくんだろうな?




