Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #40
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #40
屈んで穴を通る 子供が通るぐらいしか開いていない、でこぼこした彫りぬいたような歪な穴 なぜこんなところを?
そんな疑問を無視して…黒い縁を通る
黒?
ここもまた、向こう側は見えない 境目で黒く鈍る
こんな色だったか?
漆黒 黒一色 墨を立ち入れたような…それは見たことがあった
確かにそう思った 感じたがそのまま向こう側へ抜ける
なんの疑問も持たずに ここを抜ける そんな安易な考え
一番奥の部屋へ抜ける 入る
人形が立っていた
目の前 小首をかしげる
可愛らしい、さっきのに……
「返してぇ」
ドスッ
背中に激痛が走る なにかが落下して来て刺した そんな感触 しがみつかれる
「返してぇ」
目の前の人形が、自身とほぼ同じ長さのナイフをオレの顔面に突き立てる
避ける 頬を切り裂かれて、鋭い痛みが走る
「返してぇ」
腕を振って、弾き飛ばす 背中にしがみついているものを振り払う
「ぐあっ」
足首に…アキレス腱に鋭い痛み これは…
「はあい、アイムチャッキー」
脹脛に痛み 次々、刺される 右足を封じられた 来る、と思った直前、転がってそこを背に預ける
「返してぇ」
豪華な部屋 天井のいたるところから薄手のレースが引かれ、備え付けられた家具や壁に繋がっている
背中、中央にはベッド 天蓋付きのそこからもレースが下がる 赤い小さいバラの壁紙 ロココ調の柱や家具 窓の薄いレースのカーテンが室内を薄暗くし、足の長いふわふわの絨毯が敷かれている
そこを背に周りを見る
すべての壁に棚が備え付けられていた 前にこんなのはなかった 縦に間を開けて数段、並ぶ
「返してぇ」
そこにすべて人形が座っている 人形が口を開いて声を上げる 鳴く 泣く 啼く
「返してぇ」
何をだ? 思い当たる節がない
「返してぇ」
ぼとり
人形が、端から飛び降りる人間のように、頭から落ちる
ぼと ぼと ぼと
何体も 何体もの 人形が飛び降りる
「はあい、アイムチャッピー」
アンティーク セルロイド 骨董 お前は来るな 種類を問わない人形が床に落ちる 立ち上がる こちらを見る
泣きながら 歩いてくる
「返してぇ」
そういいながら 小さな 人形が とことことことこ 歩いてくる
心が震える
手に 刃物 小さなナイフ 鋏 針 そんなものを持って
「返してぇ」
人形に集られて殺される それはホラーゲームとしての永遠のファンタジー
永遠の夢
いや
人類の夢だ
「返してぇ」
ガッ
いつのまにかベッドの端まで来ていた人形に頭を殴られる 残念ながら刃物じゃない 似合わないトンカチ
「あはは」
スパッ
ベッドの下から隠れて来た人形に剃刀で左手首を切り裂かれる 鮮血があふれ出す
「ははははは」
ジョキン
首の後ろを鋏で切られる 小さい針を持った人形が飛びついてきて目を狙われる ぷすぷすぷす いつの間にか脇にいた人形に何度も刺される
「ははははははははは」
周りに可愛らしい人形が集まる それに刺される 殴られる 切られる
「はあい、アイムチャッパー」
それは
夢にまで見た死に方だ
お前はうるさいけどな




