Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #34
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #34
看護婦長だったものがそこに横たわる
全体としては動かない だが末端が痙攣する
生きている死者 復活する死体 そんな予感 ゲーム的前例に従って鍵を拾う 看護婦長が終わると同時にどこからか零れ落ちて、光った
ふと
どうしてそうしようと思ったのかわからない
まだ残っていた杖をその体に付き立てた
貫かれた身体は一瞬だけ 反応して 蠢動して バタついて 静かになった
液体に融けて吸い込まれない
死んではいない だがこれで少しの間は動かないだろう
「うぐっ」
安堵した途端、左手のひらの激痛に気づく 深々とそこに刺さっている大きな杖の棘 痛みを我慢して抜き取る 滲み出る赤い鮮血
床に落ちて 血痕を残す
それは生きている証か
それともオレがここにいた証か
なんでかそんな感情がわきあがる どうもアドレナリンが切れてきたらしい 生理的にこれが切れると感情面で不安定になる
外れた頭の包帯で、左手を巻く 応急処置にもならない
左肩が痛い 痛みに体が震える 血が流れているような滑りと暖かさ 手で押さえると小さい歯がぽろぽろと零れ落ちた
ドアに向き合う ここのドアは外鍵だ 廊下側からはドアに付属している鍵を回すことで開く
では、この鍵はどこで使う?
覚束ない足取りで扉に手をかける 手が震える 呼吸を整える 左手を右手で抑える
まさかこんなに負担があるとは思わなかった
二階、西棟は全て小児病室だ すべての扉に鍵がかかっている
鍵は廊下側から開く 開くのはここと一番手前のものだけ ほかは鍵を回しても開かない
自分の体の動き無さにあざ笑う
子供が自由に出入りできないようになっているドア
これぐらいで震え 安堵する自分に嗤う
奥から二番目の扉の前で 指先が 体が 震える
「ふうぅー」
落ち着け なんども言い聞かせる 震えが止む クリアになる視界 音が聞こえだす
遠くから男性の騒ぐ声 うめき声 悲鳴…悲鳴?
他に誰がいるというのか……
鍵を開ける 静かに ロックが解除される音は響かなかった
なにもこんなとこで幸運を引き当てることもないだろうに
ここの中にいもバケモノがいる だが、ここに入るまでは考えなくていい
なんとかできた
そんなことを考えつつ
オレはドアを開けた
最初の謎解きが待っている




