Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #120
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #120
廊下の左右 鈍く光る何か…糸? それが見えた 近づいて…目を凝らす これは……
「待て! キム!」
黒く塗りつぶされている わからないように 背景に紛れるように 垂れ下がっていた
咄嗟に そう指示したが…遅かった
「ああ? ぐわっ、痛ってっ…なんだ? また右手が……」
キムの右手が、手のひらを広げるように…上へと伸びた 前後左右にぶれ動き 蠢き 前と同じに 割れた直前の挙動をしはじめた
「痛ってええっ、なんだこれ? 何かが…体に……」
「しゃがめ、キム…周りに……!」
ダメか…それがいきなり 方向を変えて顔に飛来する 避けた…が遅かった 左瞼を切られる 眼球は…大丈夫 いまはそれよりもキムだ
苦痛に呻くキム 腕を戻そうと…もがく だが、もがけばもがくほど 体が硬直したように ぎこちなく固まっていく
キムの身体 その周囲に それが集まっていっている
「Help me……」
うるせえよ
「あがががががががが……」
これがプレイヤーだったら 翻訳される それではない つまり…これはゲーム的演出
目を凝らして見た先 天井から垂れ下がる糸 雨に隠れるように 隠すように 紛れるように 真っ黒い 見えないように加工された 下降が設置されていた
鉄条網
それが天上から垂れ下がっていた 周りに 周囲に 張り巡らされていた
「ちっ!」
肩に激痛 見えない側面から また引っかかれる まるで生きているかのように 死角から到来する棘 動き巻き付こうとする 渦を巻くように それはキムへと集っていく 巻き付いていく
咄嗟に…しゃがむ 危うく、巻き込まれそうになって 頭のすぐ上を、すり抜けていく風圧
キムを中心に つむじ風のような渦 血の雨がその風圧に吹き飛ばされて渦を巻く キムの身体に纏わりついて、突き刺さり、さらに血をにじませる
「うわあああっ、くそっ、離せっ…ぐあああっ、痛ってぇー…」
体 脚 腕 まるで意志があるように 先端から体へと 棘が巻き付いて行く
「あーっ、痛ってえー、ぐあああああああっ」
お前…だからあれほど 周囲には気を配れと…ああ、くそっ 今さらいっても遅い
「痛ってー、なんだこれ? なんだってんだ…助けてくれ! マイケル! 動けねえー、助kっ」
助けてくれ…そういわれても 今のオレが持つ武器はモップ 巻き付いた鉄条網をなんとかできるとは思えない
それに…その死に方 ある意味 人類の夢だ また先を越された そんな口惜しささえある そう思いつつ、手がない 出せない
キムの頭に鉄条網が絡みついて、口を塞ぐ 棘が筋肉を切り裂いて、生肉の断面を見せる 瞼に食い込んだ鉄条網が眼球を潰し、耳を切り裂いた 溢れ出した血液に全身が覆われていく…棘が食い込む それを嫌がり、体を捩じるキム だが、捩じれば捻じるほど…食い込み 傷つけていく鉄の網
どうする? どう助ける? ナイフ? はエマリアに渡してしまった ニッパー? そんなのあったか? ペンチ そう思った瞬間……
「ひゅあっ……」
キムが連れ去られた 空へと まるで…食いついた魚が釣り上げられるように 暗い虚空へと 暗闇の中へと 姿が消えた
雨が降る
暗い、何もない天上 一切の静寂 今まで聞こえてた
「助けて」
の声も キムの声さえもない
雨が降る ただ しとしとと……
!
廊下の奥 金属が擦れて引き上げられるような音 Y字に作られたそれが解かれて、解れて、空へと戻っていく 定置網を引き揚げるように 空へと還る
?
そこに何かが残った 引き上げた偽物のジーザスクライストの下 そこに…壺? 顔のある大きな…古代エジプトで用いられたカノポスのような壺が ただ……
※コイツの正体は如何に?
書かれてます




