Try n Dead 狂気系不条理ホラーゲームに転生させられたオレはゆるく死に急ぐ #98
セント・ミカエル・ラザフォード病院からの逃亡 #98
「そうか? 簡単な確認作業だ。できないことはない」
「素晴らしい偉業! 祝福を!」
男性の脳は、同時進行の複数行動処理が苦手だ よくいうだろう…電話しながら足の爪を切ってくれ あれはできない 逆に女性からしたらなんでできないのかわからない…のだそうだ
脳内に大賢者でも飼っていろ そうすればなんでもできる
あったのは…デッキブラシ、二本目 ホース、下のと同じ長さ…付け足せってことか 洗い桶には水も何もなくて、きれいなまま 手洗い場にはやはり鏡がない 水も出ない ただ……
真ん中の手洗い場の中 排水溝の穴に嵌って 硝子の玉が一つ やや…取りずらい ポケットに…ああ硝子同士が当たる 逆のポケットに入れて…ここの生地が伸びてきている だらしない この辺りも改善が必要だ
「おめでとう!」
用具入れ横の個室 死体袋を確認 触った感触が…柔らかい イモータルではない? いや、いまキムが頭をぶつけた時の衝撃と音 そっちは違うのか?
反対側 穴の上…お前邪魔 こっちは固い イモータル属性 つまり、二種類いる? それ以上か?
「何してんだ? お前?」
奥の方のは…確かめるのは後 先に…? ホースを引っ張るオレの行動を不思議に問うキム
「慣れてきたか? ホースがもう一組あったからな。付け足しておこうと思ったんだが……」
ホースが引っ張れない 戻ってこない まるで先で固定されたかのような重さ
「下でホースを固定したか?」
「いや、そのままだぜ」
「天才だ!」
ふむ…そうか……
「起き上がって引っ張ってみろ」
そういうとキムはやっとトイレから起きた 立ち上がらずに…ホースに手を伸ばす
「なんだこれ? まったく動かないぞ?」
「ああ…こういった境界を超えたものはその場で固定される。たぶんそんなとこだろう」
「なんて素晴らしいんだ!」
「そんなことがあるのか?」
「わからん、ここしかサンプルがないからな…ほかの所がそうなのかどうか…確かめて…!」
やはり出るか……?
トイレの奥 右に…違う 下に男子トイレへと抜けれる穴があると思われる最奥
黒いざわざわした微粒子 それが影となっている周りから滲み出て 集まっていく
「お? やっとお出ましか……? ……なあ、マイケル、アイツは何だ? いままでのと毛色が違うようだが……」
キムが片膝を突いた状態で…まだ立てねえのかよ 格好づける ああ……
周囲から集まってきたノイズ 人の形…修道女のような服を着た人物と成った 下へと手を伸ばす
空中に浮いたゴースト 修道女 何を誰に祈る ここに神なんていないだろうに
浮いたまま…動かないゴシック・メイデン 右の個室を下にして 奥へと行け そう指差す 重力はそうなっていそうだな そして、そこに抜けれる穴がある…と
「早くこっちへ来いってことか」
「天才だ!」
いや そんなの誰でも思いつくだろうが
「お前もそう思うか? 敵…じゃあねえようだけど…なんでだ?」
キムが奥を見ながらそういう 眩暈は直ったらしい 敵か? 味方か? エンディミオン仮面か…あれも名作だった
「こんなところでぐずぐずするな…ってやりたいらしいな」
「まさか…そんなことあるのか? ゲームだぞ?」
時間フラグもあることだしな
「業を煮やしたんだろう」
「祝福を!」
「? なんだ? その業って奴は? 意味がわからんぞ」
こんなところで翻訳の齟齬 そっちにはそっちのそんないい方があるだろうに
「時間がかかり過ぎて待ちきれなくなった、それで女が怒り出した。そんなとこだ」
「ああ…デートで5分待たせただけで怒るような女みたいなもんか…そりゃあ仕方ねえな」
怒るのなら脈ありだ 無い場合…帰るからな
「並び立つ者もいないほどの偉業!」
「そうでもないぞ、相手が自分をそんな風に扱うとは思ってなかった。だから怒った。そこをわかってやればいいだけだ。そんなに難しいもんじゃない」
こいつも帰ってくれていいだがな…そういうわけにもいかないんだろう
「知らねーよ…なにが気に入らないのか…わからんのに機嫌を取るなんてできるかよ。それにそれならこっちのことを先に分かれってんだよ。そのほうが先だろうが」
それはムリだな どっちも自分のこともわかってないんだから、相手のことをわかることもできない
恋愛は自己投影の先にある そこを乗り越えないと先へは進まない ナニをしたとしても…そういうもんだ
「そうか…じゃあ、周りを確認しつつ誘いに乗ってみる。お前はここで用心しててくれ」
「最高だ!」
「は? おれが先に行けばいいだけじぇねえか…違うか?」
「違うな」
この無双脳が
「お前は突っ込み過ぎる。周囲の状況の確認が疎かになる。これは…何かがおかしい。通常ならこちらを見つけたら問答無用で襲ってくる、ここのバケモノどもはな。それなのに待っている。それを確かめてからでも遅くはない」
「いや、だからってよ……」
「個室内を全部、見回ってない。それを見つつ、あっちへ行く。お前はオレがどうなるか見ていろ。途中で床が変わって…右の個室が下になるのか、移らないといけないのか…それともそのまま進んだのか、どっちかは見ている方がいい。安全のためにもな。違うか?」
捻じ曲がった空間 途中で重力が右へと移行するのか…それとも、オレが左へと、横になったまま歩いていけるのか…こんな楽しそうなこと、こいつに先にやらせるわけにはいかない
悪いな いろんな言い回しをして煙に巻いているが…誰よりも先に奇妙なことを体験しておかないと、気が済まないんだ ゲーマーの性だ 許してくれ
さっきの人形の死に方 あれはたぶんレアだ あんな死に方現実にはできない それの仕返し…安全すぎるがな
そういうと、キムは渋々
「わかったよ」
それだけいった
「神に祝福されしものよ! 栄光あれ! 栄光あれ! 栄光あれ!」




