表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/35

不明な着信

 時刻は午後二十一時。咲は暇を持て余していた。晩ご飯は済み、入浴も済み、今日の授業の復習も済んでいる。やるべき事は済み、自由時間であるが、やる事が無い。漫画は読み慣れた物しかなく、見たい配信は後日に変更されてしまった。




 ベッドで横になりながら、真っ白な天井を見つめる。そうしていずれ訪れる夢を待つ。贅沢で無意味な時間の使い方だ。




 すると、咲の携帯に着信が入った。画面を見ると、着信主は不明となっていた。通話を切って携帯を枕元に戻すと、すぐにまた着信が入った。画面を見ると、またもや着信主は不明。




「イタズラ電話にしては根性があるわね」




 そう呟いたものの、出るつもりなど甚だなく、咲はまた通話を切った。




 すると、また着信が入った。そしてまた、着信主は不明であった。ここまで連続で不明な着信主から通話がきたのは初めての経験で、咲は少しだけ怖くなっていた。通話を切っても、また同じ相手だ掛けてくるという謎の信頼があり、咲は思い切って通話に出てみた。




「……もしもし」




『あ、咲さんですか? 良かった。ようやく繋がりました』




「え? もしかして、剛美さん?」




 着信主の正体が剛美だと知ると、咲の緊張が一気に解けた。咲は面倒くさそうに頭を掻きながらも、その表情はどこか嬉しそうであった。向こう側の剛美は、当然浮かれていた。




「何度も知らない人から電話が掛かってきて、ちょっと怖かったよ」




『いやですね咲さん! 私と咲さんの仲じゃありませんか!』




「その台詞は仲の良い友人同士でしか成り立たないから」




『違うのですか?』




「う~ん……違うね」




『じゃあ早く仲の良い友人になれるように頑張ります!』




「ポジティブ~。とりあえず番号登録しとくね。また不明の状態で掛けられても、次も出るとは限らないし」




『えっと、それはどうすればいいのでしょう? 私、携帯電話は慣れていなくて』




「こっちでやっとくから大丈夫。えっとね―――ん?」




 剛美の番号を登録しかけた所で、咲は疑問に思った。咲と剛美が通話をしたのは今回が初めて。だから剛美からの着信は不明の着信主として画面に表示される。




 おかしいのは、どうして剛美は咲の番号をしっていたか。剛美の番号を登録するのを一時中断し、咲は剛美に問いかけた。




「ねぇ、剛美さん。アタシの番号、どうやって分かったの?」




『え?』




「番号知らなきゃ掛けてこれないでしょ。当てずっぽうって訳じゃないだろうし。ねぇ、剛美さん。アタシの携帯勝手に触った?」




『触ってはいません』




「触っては?」




『……若菜先生がまとめてたノートから、ちょっと』




「……ストーカー」




『咲さん! 下心は一切ございません!』




「下心があろうがなかろうが、個人情報を本人の許可なく調べるのはアウトなんだよ! 大体ね、アンタの行動一つ一つがストーカーっぽいのよ!」




『咲さん! 咲さん!! 聞いてください』




「なにさ」




『咲さんが私の友達になってくれれば無問題です』




 咲は耳に当てていた携帯をソッと枕の上に置くと、壁に正面から張り付いて呻き声を漏らした。話が全く通じず、それでいて咲に対する剛美の好意は明確で色濃い。強く拒絶すれば解決するが、橋の下で見た剛美の泣き顔が脳裏をよぎり、拒絶出来ない。 




 遠くにいてほしい気持ちと、近くにいてほしい気持ち。その両方を兼ね備えた矛盾が咲を苦しめる。今の咲にとって、剛美との交流はストレスが溜まる一方であった。




 気持ちを落ち着かせた咲はベッドに戻り。再び電話を耳に当てた。




「剛美さん」




『呼び捨てで構いませんよ』




「剛美さん」




『呼び捨てで構いませんよ』




「剛美さん!」




『呼び捨てで構いません!』




「あー、もう! 剛美! これで満足!?」




『はい! 大満足です! 咲!』




「用事が無い時は通話してこないで! また明日!」




 これ以上長引く前に、咲は強引に話を終わらせて通話を切った。三分間、剛美からの連絡を待ち構えていたが、掛かってくる気配は無かった。咲は安堵のため息を吐き、携帯のアラームをセットして枕元に置いた。




 時刻を見ると、剛美と通話し始めてから一時間が経過していた。




「一時間も経ってたんだ……なんか、あっという間」




 部屋の電気を消し、ベッドで横になった咲は、携帯の連絡先から剛美の名前を見た。




 暗闇の中で、携帯電話の明かりが照らし出す咲の表情は、やはり嬉しそうであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ