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「対処って……何さ対処って!」




「まさかお前、胡桃を殺したのか!?」  




「ちょ、ちょっと待ってください! 流石に重く捉え過ぎです!」




「じゃあ対処って何をしたのさ!」




「さっきも言ったように、胡桃さんは性懲りもなく咲さんに会おうとしていました。だから少し、多分少しだけ痛い思いをしてもらって、釘を刺したんです!」




「釘を? 釘を刺したのか!?」 




「それはボケで言ってるんですか? それとも本気で? いずれにせよ、私は胡桃さんを殺してなんていません。関節技を掛けながら警告したんです。少しは咲さんの気持ちも考えなさいって。去り際の胡桃さんは納得いってない様子でしたが、最近は咲さんの近くに現れていないので改心したのでしょう」




 剛美は、何が何でも咲に会おうとしていた胡桃に暴力と説教をした事を説明した。そこに申し訳なさなどなく、むしろ正しい行動をしたと誇らしげになっている。




 剛美の発言に呆れながらも、二人は剛美の発言は信じた。それでも、まだ疑問は残っている。何故、剛美が学校に来なくなったのか。何故、剛美は二人から逃げ出したのか。




「……とりあえず、アンタを信じるよ。信じた上で、納得いっていない事があるわ。どうして私達から隠れたり、逃げたりするのさ? アンタのやるべき事って?」




「それは……咲さんの為です」




「アタシの為?」




「だって咲さん。胡桃さんから告白されて、凄く落ち込んでいたでしょう? そこで私は自分なりに考え、答えを見つけました。咲さんは築いた関係を壊されたくないんだと。だから私は、咲さんと交流のある人物に変化の兆しがあれば、咲さんに悟られないようにその変化が明確化される前に揉み消していました。多少暴力をチラつかせた時もありましたが、怪我を負わせた事はありません!」




「……え、なんで?」




「なんで、とは?」




「いや、だってさ! そんなの別にアタシ達に隠れずにやればいいじゃん! なんで暗躍してんのさ!?」




「だって! やったらやったで怒るでしょう!?」




「もちろん! あ、一肌脱ぐってそういう事!? そんな使命みたいな感じで重く捉えてたとは思わなかったよ!」




「私の天秤はいつだって咲さん重視です!」




 咲は手で顔を覆いながら呆れ果てた。こんな事だろうと知ってはいたものの、心の何処かでは剛美が間違った道に進むのを心配していた。だから咲は安心して呆れる事が出来た。 




 久しぶりに言い争う二人の姿を傍観していた恋は、とりあえず剛美を縛っている縄を解こうとする。中々解けない縄の頑丈さに、どうしてもっと解けやすくしなかったのかと自分を責め、素手で解くのを諦めた。




「とりあえず、解決したよな? そんじゃオレは近くの店からカッター買ってくる。解いたら飯でも行こうぜ」




 そう言って恋は部屋から出ていった。




「……あんな方でしたっけ? 私の知ってる恋さんとは、まるで別人のようにフレンドリーなのですが」 




「アンタらがいない間、恋はクラスの人と仲良くやってんのよ。人気なのよ、恋は」




「アンタら? 私だけじゃなく、胡桃さんも?」




「知ってるでしょ。胡桃もずっと学校来てないのよ。てっきりアンタが胡桃を殺したのかと思ってたけど、そうじゃなくて安心したよ……あれ? じゃあ、胡桃は何で学校に来ないんだろう?」




 咲は改めて疑問に思った。胡桃が行方不明になったのは、咲の家を訪ねた後。それから二ヵ月もの間、何の情報も無い。




 胡桃は剛美とは違い、分かり易い人間ではない。良い人な胡桃は関係の浅い人間でも知り得る顔だ。しかし、その内面に秘められた欲望は巧妙に隠されている。剛美へ放った暴言と暴力は、その欲望のほんの一部に過ぎない。




 誰も胡桃という人間を知らない。どんな人物で、何が好きで、何が嫌いか。知ろうとしなかったのは、彼女が常に心掛けている良い人の印象の良さ。関わった誰もが内心では失望を恐れていた。だからこそ、良い人である彼女に深入りしなかった。




 雨が降ってきた。酷い雨だ。それに風も強い。レインコートの人物が現れた時の天気と同じだ。




 だからか、咲の背後にレインコートの人物が現れた。当然のように立っているレインコートの人物が、いつ、何処から現れたのかは、誰にも分からない。唯一視界に捉えていた剛美も分からず、まばたきをした瞬間に現れたとしか思えなかった。




 剛美は咲を守ろうとしたが、自分を縛る縄が邪魔をして体を動かせない。そうしている間に、レインコートの人物は咲を眠らせ、軽々と持ち上げて部屋から出ていった。




 その瞬間、雨が止んだ。まるで夢を見ていたかのように、外は綺麗な夕焼け空をしていた。




「あれ? 咲はどうした?」




 恋はカッターを片手に戻ってきた。不思議な事に、道中でレインコートの人物と出会わなかったようだ。




「恋さん! 咲さんが連れ去られました!」




「はぁ!? 誰にだよ!」




「説明は後でしますから、早くこれを解いて! まだ近くにいるはず!」




 恋は急いで剛美を縛っていた縄を切ると、一緒に廃墟から出た。周辺を手分けして捜してみたものの、結局咲を見つける事は出来なかった。

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