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ラムネの味がした

「カキ氷のシロップはどれも同じ味なんですよ」




 恋が買ったカキ氷機で作ったカキ氷を食べながら、剛美は咲に小ネタを披露した。ありきたりなネタに咲と恋の反応はほぼ無反応であったが、気を効かせた胡桃がワザとらしく驚いてみせた。その優しさを無下にするかのように、剛美はため息を吐いた。




 カキ氷を食べ終えた四人はリビングのソファに集い、それぞれの定位置で時間を潰していた。四人も集まっていれば誰かが話し始めるだろうという考えが四人にはあり、既に聞き役に徹している。   




 結局、話のキッカケを作ったのは恋が見ていた動画に割り込んだ広告動画。花が咲き開くような花火が上がる映像が流れると、開催日を記した文字がデカデカと浮かび上がった。その花火大会は今週の日曜日に開催されるようだ。




「花火大会だってさ」




「え、いいじゃん! アーシらも行こうよ!」




「場所は何処ですか?」




「少し遠いな。遠足の距離だぞ。こういう祭りの時は交通状況が混雑するし、面倒だな」




「ちょっと見せて……ここなら、あそこから見えるんじゃない? 河川敷」 




「そっか。飲み物とか持参して、そこで見ればいいのか。咲ちゃん頭良い!」




「オレも賛成だ。どうせ会場まで行ったって、人混みで花火どころじゃなさそうだしな。おいデカブツ。お前はどうする?」




「もちろん同行いたしますよ。私はアナタのように除け者にされる程、咲さんと浅い関係ではありませんので」




「あ? 喧嘩売ってんのか?」




「事実を述べたまでですよ」




「よし喧嘩だ! 表に出ろよデカブツ!」




「望むところです」




 剛美と恋は小突き合いながら、家の外へ出ていった。リビングに残された二人は特に気にする様子は無く、脱衣所に向かう。




「花火、楽しみだね。咲ちゃん」 




「そうだね。あの二人が今日の内に白黒つけてほしいところだけど」




「あそこまで喧嘩出来るのは、ある意味仲が良い証拠……だよね?」




「ただ馬鹿なだけでしょ」




 二人は服を脱ぐと、タオルで体を隠さずに風呂場へと入っていった。




 それから日は流れ、花火大会当日の日曜日。四人で見に来る予定だった河川敷には、咲と胡桃しかいなかった。剛美と恋は喧嘩で負った怪我が酷く、同じ病室で入院していた。午前中に咲と胡桃がお見舞いに行った時も、まだ二人の喧嘩は決着がついておらず、ベッドで横になりながら口論していた。




 二人だけとなった花火鑑賞。問題児がいない今、咲は久しぶりにリラックスしていた。




「剛美さんと恋さんは残念だったね」




「まぁ、おかげでゆっくりと花火を見れそうだし。結果オーライってやつじゃないかな?」




「いつも二人から取り合いにされてたもんね……」




「ホントだよ。上手く手綱を握ってるつもりだけど、いつ制御不能になるか分からないし。これでも結構ビビってるんだよ」




「それでも、二人は友達のままだもんね」




「うるさい所ばかり目立ってるけど、良い所もあるしね。さぁさぁ! いない二人の話はここまでにしよ! そろそろ花火が始まるよ!」




 二人は河川敷の斜面に座ると、持ち寄ったラムネの蓋を押し込んだ。炭酸が溢れ出ると、二人は慌てて飲み口を口で塞ぎ、苦笑を浮かべ合った。




 ヒュ~……ドッカーン!




 花火大会の開催を報せるかのように、一発の花火が夜空に飛び、花の形をして弾けた。しばらく間が空いた後、次々と花火が打ち上げられていく。形や色が違うものから、弾けた花火の広がり方が違うものまで。黒いブルーの空が、打ち上げられた花火の色に染まっていく。




 派手で美しい光景を眺めていた胡桃。ふと隣にいる咲に顔が向いた。花火を眺めている咲は、花火の光に照らされ、煌めていた。それは紛れもなく、夏の季節であった。




「……ありがとね」




「え? 何が?」




「咲ちゃんがいなかったら、アーシは今年も花火なんか見なかった。暑いだけの嫌な季節のままだった」 




「変な事言ってさ。アタシこそ、胡桃がいなかったら一人で眺めてたよ。それか夏休みの間、ストレスで胃痛になって入院してたかも。胡桃がいたからやってこれたもんだよ」




「……友達、なのかな?」




「もちろん! アタシ達は友―――」




 その一瞬だけ、花火の音よりも、ラムネ瓶のビー玉の音が鮮明に響いた。あるいは、変化の音だったのだろうか。




 再び花火の音が鮮明に変わる頃、二人が重ねていた唇は離れていた。たった数秒の間の出来事。その間に何があったのか、咲は理解出来ずにいた。




 頬を赤く染めた胡桃が、咲を見つめながら呟いた。




「ごめん咲ちゃん。アーシ、咲ちゃんの事……もう友達として見れないかも……」




 時が止まったかのように見つめ合う二人。それでも尚、花火は打ち上がり続けていた。

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