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ショッピング

 夏休み二日目。気温がより一層高くなった今日は、嫌というほどに夏を感じさせた。一昔前までは扇風機で凌いでいた人々も、今はクーラーが吹かす冷えた風でなければ耐えられない暑さになっていた。それでも熱中症になる人が続出するのは、人という種が弱体化している証なのだろうか。




 しかし、どれだけ種族が弱体化しようとも例外は存在する。そして厄介な事に、そういった例外には格差を利用する知恵があった。




「咲さん! プールに行きましょう! 水着ですよ!」




「……下心が透けてるよ、剛美」 




「なんでコイツは、こんなに元気なんだ……?」




「今日の最高気温三十度以上らしいよ。これからもっと暑くなるみたい。アーシはプール行きに賛成かな」




「胡桃も平気そうだね。やっぱギャルだから? 夏になると肌を焼いて黒焦げにするもんね」




「いや、アーシはしないよ。日焼けすると痛いしさ」




「はいはい! ゴチャゴチャ言い合ってる間も気温は高くなる一方です! 今すぐにでもプールに行きましょう!」




 こうして四人は近くのプール施設へと向かった。暑い日、そして夏休み期間というだけあって、プールには人が殺到していた。中には、施設内の混雑を見て引き返す者もいた。




「これ、入れないんじゃないの?」




「元々夏になると結構人が入る場所だもんね。ウヒャ~、入り口の時点で混み合ってんじゃん!」




「これじゃあ、プールは無理だな」




「そ、そんな……咲さんの、あられもない姿が……」




「ただでさえ暑くて気分悪いんだから、気持ちの悪い事を言わないでよ……残念だけど、プールは諦めよ」




 四人は近くにあった大型雑貨店に駆け込んだ。中はクーラーがよく効いていて、暑い外の世界とは別世界のようであった。ただ涼むだけなのは面白くないので、四人は雑貨店を見て回る事にした。五階建ての建物には様々な雑貨店が各フロアに存在し、一階にはスーパーと変わらない食料品店まであった。四人は集合時間を決め、それまで各々別行動で回る事にした。




 電化製品が注力された二階に来た恋は、替えのマウスやキーボードを見て回っていく。その道中で巨大なテレビが並ぶ場所で足が止まる。同じ映像が流れるテレビ群は恋にとっては良い気味の悪さであった。




「まるでパラレルワールドを見ているようだな」




 そう呟きながら眺めていると、テレビの画面に可愛らしい子猫の映像が流れた。大迫力と臨場感が売りのテレビ群から繰り出された子猫の無邪気で可愛い暴力に、恋は悶えながら逃げるようにその場を後にした。




 一方、胡桃は一階の食料品店で食材を選んでいた。雑貨を主流にした建物の一部にある為、種類は豊富ではなかったが、普通のスーパーでは置いてない海外の食品があるのは見ているだけで楽しめるものだった。  




「ついでで何か買っちゃおうかな」




 何処の言語かも分からない文字で書かれたお菓子をいくつかカゴの中に入れていくと、携帯に一件のメッセージが届いた。見ると、それは胡桃の母親からであった。




【実家に帰省中! 私達は私達で楽しむから、アナタもお友達と楽しみなさい!】




「フフ……言われなくたって楽しいって」    




 胡桃はただ一言【ありがとう】と返信し、買い物を再開した。




 四階では、咲と剛美がいつものようにああだこうだと言い合っていた。今回は家の庭で使うビニールプールを購入しようと奮闘していた。




「プール! これも立派なプールですよ!」




「買わないわよ!」




「お金は私が出しますから! これで私を水責めしてください!」




「その一回の為にこんなデカいの買う訳ないじゃんか!」




「買いましょうよ~! これでイチャイチャしましょうよ~!」




「聞き分けの無い奴! 言う事聞けないなら、そこで一生過ごしなさいな!」




「今日の咲さん、なんだかお母さんみたいで良いですね。でもそんなヒステリックでは、可愛い我が子がいつかグレちゃいますよ?」




「アンタの血縁関係者じゃない事がこんなに嬉しいなんてね。買う物が無いなら一階に下りるよ」




「ですからプールを―――」




「買わない!!!」




 結局何も買わずに一階に下りた二人。一階には既に買い物を終えた胡桃が両手に買い物袋をぶら下げており、袋の膨れ具合からかなりの量を買った事がうかがえた。




「お、来た来た。エスカレーターから降りてきた人達が二人の噂してたよ。チワワと巨人が戯れてたって」




「戯れだなんて、そんな……!」




「喜ぶな巨人。それにしても胡桃。随分と買ったね。全部でいくら?」




「いいよいいよ! アーシが好きで買った物だし! でも、ご飯の材料費は出してくれると助かるかな?」




「もちろん出すよ。あぁ、今日もまた胡桃のご飯が食べられるんだね。お母さんのご飯とか、お店の人が作ってくれたご飯とは違って、胡桃のご飯には愛が込められてるんだよね~」




「もちろん! 大事な友達に出す料理なんだから、愛情沢山込めなきゃね!」




「こらこらこらこら。私の許可なくイチャつくんじゃありません。年甲斐もなく泣きますよ?」




「今日は異様に子供気分だねアンタ。それよりさ、恋はどうしたの? まだ買い物してんのかな?」




 噂をすればというタイミングで、恋がエスカレーターで降りてきたのを目にした三人。恋は賞状を持つかの如く、購入したカキ氷機を両手に持っていた。高身長イケメン女子がカキ氷機を大事そうに持ってエスカレーターから降りてくる様は、カッコイイとも可愛いとも違う、妙な違和感があった。 

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