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土下座

作者: 華城渚

「本当にすみませんでした。」

歯を食いしばり、冷や汗を垂れ流し土下座をしている。


その姿を私はスマホで録画している。

全世界に拡散するために。




私はいつも通勤には電車を使っている。

その時に私に対して痴漢をしてきた。

内気な女なら抵抗なんてしなかっただろうが、あいにく私は勝気なタイプだ。

すぐ次の駅で降ろさせ言い訳を言う暇を与えず問い詰めた。


結果このざまってわけだ。

本当に不快な出来事だが、気分は悪くなかった。


だってそうでしょう?

今撮ったこの動画が拡散されればこの男の人生は終わりだ。

仕事も辞めさせられ、離婚し、最後には自殺するかもしれない。


人を見下すのは最高に気持ちいい。

仕事だって同じだ。

私よりも仕事ができる人間はいない。

だからいつも私を頼ってくる人ばかりだ。

そんな奴らを見て「ああ、バカばっかりだなぁ(笑)」って思うのは不思議じゃないでしょ?




駅員さんや警察の方とお話しし、また後日どうするか決めることになった。

このままさらに問い詰めてやろうかと思ったが私も仕事がある。

余り遅れるわけにもいかない。 私がいないと仕事が進まないだろうしね。



あぁ......本当に気分がいいな......

ルンルン気分で職場に着いたが、なんだか異様な雰囲気が漂っていた。

皆、慌ただしく動いている。


「どうしたの? 何かあった?」

私は近くにいた後輩に声をかけた。


「どうしたじゃねえぞ! 何してくれてんだ!」

声を荒げたのは社長だった。


「お前今日なんで遅れたんだ?」


「申し訳ありません。 実は今日電車で痴漢に会いまして、それで色々と対応していたら遅れてしまいました。」


「そんなことはどうでもいい! お前今日先方の会社との会議で使う資料どこにやった?」


「それなら、私の引き出しのな......かに......」


「違うよな? 間違ってシュレッダーにかけただろ?」


「......は......い。 そうです......」


そうだ......今日使う予定だった資料があったのだが、内容に納得がいかず一度シュレッダーにかけたのだった。

家で訂正したデータはあるのだが......


「申し訳ありません。訂正したものは家に置いてきてしまいました。」


「ふざけるな!お前が遅れたせいでもう会議の時間だ!どうしてくれる......」


「本当に......申し訳ありません......」


私はその場で泣き崩れてしまった。

自分が悔しくて情けなくて、この後しなければならないことが分かっているから......



私は今日のあいつと同じ人生を歩む羽目になるんだろうか......


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