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第12話

 あの後、食事を終えてすぐにミリィを取り囲んだリゼルとネールは、そのまま彼女に対して滾々と説教を始めた。

 やれ「女の子なんだから自分を大切にしなさい」だとか、「男はオオカミなんだから、不用意にあんな発言をしちゃいけません」だとか。

 一部「ハヤトさんは童貞なんですから、そんなこと言って真に受けちゃったらどうするんですか」や「この世の中で、勘違いした童貞ほど面倒で厄介な生き物は居ないんですよ」なんて失礼極まりない言動があったが、ツッコめば絶対に面倒なことになるのは目に見えていたため聞かなかったことにした。

 触らぬ神に祟りなし、というやつだ。

 知らぬ存ぜぬを決め込んで、いまだワイワイとヒートアップしている彼女たちを残したまま俺はさっさと寝床に入った。

 結局その後、説教は深夜まで続いたらしい。

 さて、そんなこんなで翌日である。

「あぁ、ハヤトさん。おはようございます、ふあぁっ……」

 昨夜は遅くまで説教をしていたからか、リゼルは俺の顔を見るなり挨拶をしながら大きなあくびをする。

「はぁ……。ハヤトさんの寝ぼけた顔を見てたら、こっちまで眠くなってきましたよ。いい加減にしてもらえませんか?」

「それはお前らが夜更かしして説教してたからだろ。俺のせいにするな」

 なんだ、こいつは。

 俺の顔を見れば悪態を吐かなければ死ぬのか?

 無性にぶん殴りたい衝動に駆られていると、キッチンからひょこっと顔を出したミリィが俺に対して満面の笑みを向けてくる。

「あっ! ご主人様、おはようございますっ! もうすぐ朝ごはんができますよ」

「うっひょー! 朝飯ですよ、朝飯! 私ってばもう、お腹ペコペコちゃんです!」

 さっきまでの眠そうな雰囲気など吹き飛んだように、歓喜の声を上げたリゼルは一目散に食卓へと飛んでいく。

 そんな彼女の姿に呆れた視線を向けながら、俺もその後を追って食卓へ向かう。

「おはよう、主様」

「ああ、おはよう。遅くまで起きていたはずなのに、朝も早いんだな」

 そこではすでに起きて席についていたネールが待っていて、彼女と挨拶を交わしながら俺たちは朝食の完成を待ちわびるのだった。


 ────

 バクバクという擬音が聞こえてきそうなほどの勢いで朝食を食べるリゼルを見ていると、なんだか食欲がなくなっていく気がする。

 それでも残すと勿体ないので無理やり食べていると、横からリゼルに奪い取られてしまった。

「そんな顔で食べるくらいなら私が食べます。食べ物だって、その方が幸せに決まってますから」

 そんなトンデモ理論を語りながら皿を傾けたリゼルは、すぐに全ての料理を食べ終えてしまった。

 いったい、あの小さな身体のどこにあれほどの食べ物が……。

 いや、止めておこう。

 世界には、知らなくていい事がたくさんあるんだ。

「知らなくていい事と言えば、今のポイントはどれくらいあるんだ?」

「いや、それは知っておいた方が良いんじゃないの?」

 ふと思い出して呟くと、呆れたようにネールに突っ込まれた。

 起きた時には避けられていたみたいだったけど、どうやら食事をしたら何かが吹っ切れたみたいで普通に戻った。

 ほんとうに、なんだったんだろう?

 気付かれないように小さく首を傾げながら、懐からスマホを取り出す。

 そしてポイント管理画面を見ると、そこには辛い現実が待っていた。

「2300ポイントか……」

「それって、少ないんですか?」

 相場が分からないミリィが首を傾げる。

 俺もそんなに詳しい訳ではないけど、それでも少し心許ない気がする。

「まぁ、強めのモンスターを召喚すれば吹き飛ぶレベルですからね。若干詰みそうです」

 だよなぁ。

 かと言って今日は侵入者も居ないし、居たとしてもゴブリン達は使えない。

 スライムは勝手に分裂して増えていくから実は大量に居るけど、アイツらは単体の戦闘力が弱すぎる。

 せめてゴブリンがもう少し欲しい。

「どうせだったら、強いモンスターを召喚しておいた方が良いんじゃない?」

 確かに、その意見も一理ある。

 ポイント全部を使ってゴブリンを大量に呼び出すよりも、一匹の強いモンスターが居た方が良い気もする。

 だけど、強いって言っても俺が召喚できるのはせいぜいオークナイトくらいだ。

 ……オークって、ちょっと苦手なんだよな。

 その意見にはみんな賛成だったみたいで、一様に顔を顰めている。

「……それじゃあ、こうしましょう」

 黙って考えていると、リゼルに何か考えがあるみたいだ。

「考えってほどじゃないんですけど、上手くいけばかなり強いモンスターを召喚できるかもしれません」

 ほう、詳しく。

「はいはい、分かってますよ。実は、モンスターガチャってのがあるんですよ」

 妖○ウォッ……。

「ヘイヘイ、ストーップ! それ以上は言っちゃ駄目ですよ」

 心の声を読まれて、先制で止められてしまった。

 だって、モンスターガチャって。

「言いたい事は分かります。だけど、これを使えば理論上どんなモンスターでも手に入れることができるんですよ」

 つまり、課金って事か?

「と言うより、宝くじですね。一律2000ポイントで、ゴブリンから魔王まで召喚できます」

 魔王が出てきても困るんだが……。

 しかしそれなら、普通に召喚するよりも安上がりになるかもしれない。

「はい。しかもハヤトさんは強運の持ち主ですから、損をすることはほぼないと思いますよ」

 そう言えば忘れてたけど、俺ってそんなスキルを持ってたっけ。

 ……それじゃあ、やってみるか。

「そんなに軽い感じで良いの?」

「もう少しちゃんと考えた方が……」

 ネールたちが言っていることも分かるけど、こういうのは悩んでも仕方がない。

 人生、なるようにしかならないんだ。


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