始まりの朝
新作始めました。
ある日、極道界に激震が走った。また、格闘界、不良界にも同時に激震が走った。
新たな最強が誕生した。
そう誰かが言った。
ある人は、そのものは単騎で複数の大手マフィアを潰したと言った。
ある人は、そいつはボクシング世界ランカーを赤子のようにひねったと言った。
さらにある人は、3000人の大群にも億さず立ち向かい、返り討ちにしたという。
しかし、人間というのは噂が大好きである。これもまたいわゆるデマというやつだろう。誰もがそう思った。誰もがそう願った。
ところが現実はそう甘くなく、某動画投稿サイトや、某匿名掲示板で、様々な裏付けとなる動画や写真の載ったスレッドが立てられた。
いずれのメディアにも共通点があった。
1つ目は片方は身長が145cmくらいの少年で、もう片方がガタイのいい大人ということ。
2つ目が少年は全部同じ顔をしていること。
人々は確信した。この少年が新時代の主だと。
厳刃 幻、小学4年生の頃の話である。
そしてこれから始まる物語はそれから5年の年月が経った頃からはじまる。
************
ピピピピピ······
「ん···」
よし、2週間連続早起きできた。何事も目標達成するのは心地よいものである。朝は空気も澄んでいて気持ちがいい。今日はランニングの距離を少し伸ばすことにしよう。
僕、厳刃 幻。明日に清鸞高校への入学式を控えている新高校一年生。元々、地方の中学でずっと成績TOPを維持し続け、私立清鸞高校に受験、合格した。比較的都会に近く、駅も近いので立地的にも言うことは無い。強いてデメリットを言うなら家が遠いので1人暮らしをしなければいけない事だ。別に、料理など家事は一通りできるし、なんなら得意まであるので心配はないのだが、いかんせん親の過保護っぷりが色々と酷い。小学生の頃はそれが気恥ずかしくて反抗したこともある。懐かしい。
同じ大人と言うだけの理由で八つ当たりしていたこともあった。申し訳ないが、今となってはいい思い出である。
両親は重度の親バカであり、それは最早、病的なまでである。父親も母親も息子の俺とその妹、唯希を溺愛しており、反抗期が終わったら数ヶ月間、毎晩抱き枕の刑に処されていた。
プライドはないのかって?あるさ。だから一時期から僕でなく俺と一人称を変えたところ、母親に
「まほろちゃんがグレちゃったぁぁぁ〜!」
と泣かれてしまったのでずっと一人称は僕である。大概僕も甘いようだ。
***************
ジャージに着替え、タオルを首にかけてマンションから出ていく。3ヶ月前から住んでいる。両親、特に母親には猛反対されたが·····。
いつもはランニングはだいたい40kmくらいなので今日は75kmくらいが目安だろう。春とはいえまだ4時30分過ぎたくらいだ。暗いし肌寒くもある。
しかし、走るのが習慣化してからはこの寒さも心地よくある。最初は20km走るのも辛かったのにな。人というのは本当にすごいものである。だいたいいつものルートが1周13kmくらいなので今日は6周しよう。いつもより時間がかかりそうだからすこしペースを上げていこう。
3時間後───
「はぁー。キッついな、75km。お腹減ったぁ〜!何作ろうか。」
朝ごはんはうちは和食派なのでご飯に味噌汁、鮭などの焼き魚といった一般的なものが主流だ。そこにおひたしとかひじきとかを加え、朝ごはんができる。一汁三菜は必須である。
しかし今日は久々に疲れたのでガッツリ系が食べたい···けど材料あるかな···?幸い、一昨日つくったカレーをパックで保存していたので久々の朝カレーにしよう。
冷凍を解いてご飯にかけ、再び温める。そこに赤唐辛子、ハバネロ、をトッピング。福神漬けを端っこに添えて、ほうじ茶を準備。ご飯が無くなっていたので研いで炊飯器にセット。今日の6時に炊けるように設定する。
「いただきます···」
ピリッと感じる辛さに香ばしいバーナーで表面炙ったポークがよく合っていて美味しい。福神漬けもいいアクセントになっている。自分で食べる分には満足である。
しかし、人に食べてもらうにはまだ早い。もっと上手く作れないだろうか。日々探求しているがなかなかに難しい。入学したら家庭科の先生に教えてもらうことにしよう。
今日は1日暇だし、筋トレに追加でもう少し走ってもいいかもしれない。身長が未だ157cmと中一レベルなのでもっと体をつくって大きくなりたいと思っている。はやく170cmを超えて人権をゲットせねば····。
冗談だけど。