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バンコク!

 無事ホテルに到着。五つ星ホテルほどではないが綺麗なホテルだった。チェックインする時にジャスさんから携帯電話を渡され、使い方を懇切丁寧に教えてもらった。ノキア製だったと思う、液晶表記などがすべて英語だったのでほっとした。これでタイ語だったら使い方を覚えるのも難渋しそうだから。

「今宵はゆっくり寝てください。目が覚めたら電話で呼び出してください。ルームサービスは有料ですが安いです、よかったらどうぞ。外に出かけるのはお控えください。目が覚めたら一報ください」

とジャスに言われてたので、部屋に入ったらすぐにルームサービスでパッタイとビールを頼むことにした。もちろんパッタイとは何か知らない、けったいな名前だなぁと思って頼んだのだ。出てきたのは焼うどんのような焼きそばのようなものだった。めちゃくちゃおいしかった。おかげで僕はタイにいる間しょっちゅうパッタイを食べてた、これならスベらんやろと思ったから。食べて飲んで寝た、よく寝れそうなぐらい疲れてた。



 バンコクのホテルで清々しい朝を迎えた。今までのドタバタは何だったのか、カーテンを開けると大雨、そして道路は冠水していた。川なのか道路なのかわからないところを車がバイクがトゥクトゥクが走っていく。人も膝下程度まで水に浸かって歩いている。バンコクは大都市なはずだが。

「おはようございます、尾島さん。よく眠れましたか?」

 ジャスさんに連絡すると、一時間も立たぬうちにやってきた。

「おかげさまで。二つばかり聞きたいんですが良いですか?」

「えぇ、一つ目はあのあの二人の事ですね。いま警察が探してますのでもうしばらくお待ちください。あと一つは?」

「えっと、道路、水で溢れてません?」

「ん? 道路が水浸し? 雨季はこんなもんですよ」

 雨季になると道路は冠水するのはタイクオリティだそうだ、なお、今でもそうらしい。その時期に訪れるならある程度覚悟していてほしい。その水、決してきれいじゃないから。もし足とかに傷があると破傷風の恐れがあるので要注意だ。


「あぁ、あともう一つあった。国際電話かけるときは?」

「その携帯電話やホテルの部屋からもかけられますがすごく高いのでおすすめしません。レセプションの近くに公衆電話あるからそれを使うと安いですよ」

 ジャスのところにも大阪本社から問い合わせの電話が来ているが、600万都市でポンコツ二人を探すのもそうそう簡単じゃないだろう。きっとどっかで身ぐるみはがされてゴミ捨て場に放り出されてるかもしれないし。また警察署回ってきますとジャスは出ていった。


 レセプション横の公衆電話で会社に連絡を入れる。能天気な部長が出た。

「よお尾島君、大阪本社のボンクラどものために大変な目にあってるみたいだな」

「えぇ本当に。なかなか着任できず申し訳ありません」

「大丈夫大丈夫、とりあえずボンクラ見つかるまで待機で。下手に遊びに行ったりすんなよ」

「ちょっぴりバンコクが恐ろしく見えてきましたので、おとなしくしてたいと思います」

 電話を切る。僕も学生時代にあっちこっちの国を渡り歩いてたらそうは思わなかったかもしれない。人を見れば泥棒と思え、ではないがこの時バンコクがおっかなく見えた。ヒッチハイクで世界中を旅してたお笑い芸人さんたちに敬意を払えそうだ。それと松村邦洋さん。


 レセプションの横にパソコンが置いてあった、インターネットが使えるらしい。言語は英語設定になっていたが、OSはWindowsXPなのでなんとなく操作は出来る。あきちゃんにメールをすることに。こういう時にブラウザ型のヤフーメールが便利だなと思った。なお2000年ぐらいの頃に取得したドメインは今も大事に使っている。

『バンコク着いた、早々にトラブル発生でホテルかんずめ』

『おだいじに』

 返事は早かったがもっと心配してくれ。あまりこんなとこのパソコンを独り占領しているのも嫌なので部屋に戻る。そしてすることが無いので旅行雑誌見ながら惰眠をむさぼることに。


 結局その日一日では見つからなかったみたいで、ホテルで寝て過ごす。その翌日ジャスさんから捕獲したと報告を受けた。警察署に着の身着のまま駆け込んできたらしい、身ぐるみ剝がされてゴミ捨て場ポイではなかったらしい。詳しい話は本人からは聞いてないがやはり見事にボッタクリに遭い、現金からパスポートから荷物からとすべてスッテンテンになるまで奪われたそうだ。でも連れてかれた売春宿でヤることはヤッたのなら文句は言うなと思うんだがな……。

 パスポート再発行のために二人は大使館へ、そして被害報告らしい。これまた興味が無いのでどのような報告をし、その後どういった扱いになったかは分からない。しかしポンコツたちのパスポート再発行のため、このホテルでの缶詰が1週間となった。他人のポンコツな行動原則のせいで缶詰にされるのだ。謝罪は受け入れたのだが、できる限りこの二人とは顔を合せなかった。


 持ち込んだノートパソコンと、ホテルにあるLANポートをつなぐと、わざわざレセプションまで出向かずともパソコンが使えると知ってLANケーブルを借りた。ネットワーク設定をホテルから貰ったのに変更したら、『Hello,World』だった。使い慣れた自分のパソコンでできる幸せ。あきちゃんとICQで連絡が取れるので暇ではなかった。のちのちあきちゃんから『よほど暇だったんだろうけど、時差考えて』と言われた。

※ICQ:現存するインスタントメッセージソフト。懐かしいと思ったらおっさんだぞ ( ´艸`)


 ポンコツが返却されてから二日後、後藤が高熱で入院とジャスさんから連絡が来る。その翌日は安原も。検査の結果は不明、ジャスさんはたぶん赤痢じゃないかと言う。着任前にトラブルばかり起こしてどうなってるんだと思う、呆れて何も言えない。

 結局、ジャスさんと工場と東京本社、大阪本社と折り合いが付いたようで僕だけ工場派遣が決定、あの二人は完治後に強制帰国となった。あとあの二人には別のコーディネータが付くことに。



「まさか一番若い子が一番大人だと思わなかったよ」

とジャスはしみじみと吐き出した。

「まさかこんな結末になるとは。一人で派遣されるってどうなることやら」

 僕がそう漏らすと大丈夫よと笑顔で言われた。

 ジャスさんが運転するおんぼろ車は高速道路を走る。タイの高速道路と言えどもものすごくハイクオリティだ、日本の高速道路ぐらい綺麗と思った。それでアユタヤ県まで行く。大体1時間半ぐらいかかったかな。バンコク脱出がすごく時間が掛かった。なおジャスさんの車は本当におんぼろでトヨタのパブリカ(二代目)っぽい車だった。なおどこのメーカーなのかは全く分からない。ガムテープ止めの助手席ドアが飛んでいかないかが気がかりだった。


 この移動中にジャスさんの人となりを聞くとものすごい苦労人だ。努力系チートと言うべきだろうか、寝ずに勉強して奨学金を得て進学し、卒業後は日本へ行き、吉祥寺で住んでたという。日本滞在時はいくつも仕事を掛け持ちして日本語を磨いたという。なおジャスさんの本名はめちゃくちゃ長い。たぶん何度聞いても覚えられる自信は無い。もちろんタイの人もそうなのかもしれないが。だからタイでは『あだ名』があり、それで呼び合うのだ。あだ名を自分で決めてそう呼んでもらう。なお女性に多いのはキティ、あのサンリオキャラクターのアレだ。で、ジャスさんは今は無き日本の航空会社からつけたらしい。不思議な日本愛を持つジャスさんだった。なおこの頃からジャスさんとの会話はずいぶんと砕けたものになっていた。


「ところで、アユタヤって知ってるか?」

とジャスさんに聞かれる。アユタヤと言えば日本史でちらりと出てきたアユタヤ王朝と日本人街と山田長政ぐらいだ。日本史Bでは中華朝鮮以外の海外王朝としてアユタヤ王朝が教科書に出てくる、今も出てるのかな。そこで活躍した山田長政が政権に組入ってくが結局憤死するのだ。詳しくはぐーぐる先生かwiki先生に聞いてくれ。

「ほう、尾島さんは相当勉強してる人ですな」

とジャスさんに言われた。ジャスさん曰く、そこまでアユタヤ王朝と山田長政でペラペラしゃべる日本人は初めてと言った。そりゃテキストに()()長政、近江の戦国大名浅井長政との誤植なのかと思ったから調べた訳だ。そしたら完全の別人だし。しかもそこまで名字が似てるわけでもないし。しかも日本人でもそこまで認知度高い人じゃないし。なおタイでは有名な日本人の一人だそうだ。


 このように日本ではほぼ無名だが、ひとたびその国に行けば教科書にも載ってる日本人ってのが居る。例えば八田與一、台湾では烏山頭ダム建設の立役者として有名だ。しかし日本人で彼を知ってる人なんて余程の台湾好きか北國新聞愛読者(※)、ダム関係者だろう。逆はどんな人が居るんだろう、本国では無名かもしれないが日本で有名な人……、ケント・デリカットさん?



※八田與一と北國新聞愛読者:八田與一が金沢市出身だったため、一時期熱く記事にしてたそうです。『石川県民の回覧板』とも呼ばれるらしい北國新聞ですよ、きっと石川県民なら、皆知ってるはずです。




 なお、バンコクは略称だそうだが、未だにバンコクの正式名称は覚えられそうにありません。

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